コラム 2020/02/14

パン屋日記 #28 後輩のこうめちゃん

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町のパン屋さんで働くフワフワの日々……を想像してパン屋で働き始めた筆者が、味わい深い同僚やとんでもないお客さまとくり広げる必ずしもフワフワではない日々の記録です。

人のやさしさや仕事の本質、心に残る一言から、「かんべんしてくれよ」と思うようなできごとまで。自分や自分の身近な人のことを思い出して、ニヤッとしたりじんわりしたりしていただけたら、これ以上の幸せはありません。

#28 後輩のこうめちゃん

高卒で入った、後輩の女の子がいます。

名前は「こうめちゃん」といいます。

 

こうめちゃんは、いちいち自虐的です。

 

しかしその自虐かげんが、

絶妙にソフトで、じわじわくるのです。

 

こうめちゃんは、

誰かのうしろを通り抜けるときに必ず

 

「はい、大きいのが通りま〜す!」

と言って通り抜けます。

 

自宅でのお母さんの口ぐせを、

まねて使っているのだそうです。

 

昼休憩の時間、

わたしがちょっとコンビニへ行って帰ってくると、

 

「えっ、早い!自転車で行かれたんですか?」

と聞いてきます。

 

「いや、歩きだよ。

わたし、歩くのちょっと速いんだ」

と答えると、

 

「なるほど、これが

脚の長さの違いですね……!」と言って

ひとりでうなずいています。

 

 

ある日こうめちゃんが、

茶こしが見つからないと言って

わたしのところへやってきました。

 

「なんだ、あるじゃん。

いつもの引き出しの、手前のところに」

 

わたしがめんどくさそうに答えると、

 

「あの、すみません。ちょっと目が……」

 

こうめちゃんは言いました。

 

「ふし穴だったみたいで」

 

そこまで、言って

 

ないのです。

 

 

お正月に

風邪を引いていたこうめちゃん。

 

「初詣には行けた?」と尋ねると、

 

「いえ、行けなかったんですけど、あの」

 

こうめちゃんは言いました。

 

「昨日ソレイユで、獅子舞に噛んでもらったので

大丈夫だと思います」

 

ソレイユでばくっと

頭を噛んでもらったとき、

 

獅子舞の口の中から知らないお兄さんに、

『今年も良い年になりますように』と

言っていただいたのだそうです。

 

やさしそうな人でした、と

こうめちゃんが申しておりました。

 

 

今日の食パンアレンジ ♯02

FLAG!vol.04「&パン」での企画で、実際に編集が30品目の食パンアレンジを試食してグラフ化した企画。意外とね、おいしいアレンジあるんです! そうでないものも、ありましたが……。興味ある方は、ぜひお試しあれ!(担当編集のぼやき)

 

<コラム「パン屋日記」バックナンバーは下記へ>

パン屋日記 #27 新年あけまして町のパン屋さん

パン屋日記 #26 おかげさまのシェフ

パン屋日記 #25 いってらっしゃい、気をつけて

パン屋日記 #24 おばちゃんという生きもの(2)

パン屋日記 #23 おばちゃんという生きもの(1)

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パン屋日記 #1 お客様という神様


甲斐寛子

甲斐寛子[フォトライター]

愛媛県出身。大学進学を機に広島へ。卒業後いったんは地元で就職するも、あまりに広島が好きすぎて再移住。好きな食べ物は焼き立てのパン。現在はパン屋さんで働きつつ、地域情報や企業インタビューを書くフォトライターとして活動中。

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