パン屋日記 #28 後輩のこうめちゃん
- パン屋日記
町のパン屋さんで働くフワフワの日々……を想像してパン屋で働き始めた筆者が、味わい深い同僚やとんでもないお客さまとくり広げる必ずしもフワフワではない日々の記録です。
人のやさしさや仕事の本質、心に残る一言から、「かんべんしてくれよ」と思うようなできごとまで。自分や自分の身近な人のことを思い出して、ニヤッとしたりじんわりしたりしていただけたら、これ以上の幸せはありません。
#28 後輩のこうめちゃん
高卒で入った、後輩の女の子がいます。
名前は「こうめちゃん」といいます。
こうめちゃんは、いちいち自虐的です。
しかしその自虐かげんが、
絶妙にソフトで、じわじわくるのです。
こうめちゃんは、
誰かのうしろを通り抜けるときに必ず
「はい、大きいのが通りま〜す!」
と言って通り抜けます。
自宅でのお母さんの口ぐせを、
まねて使っているのだそうです。
昼休憩の時間、
わたしがちょっとコンビニへ行って帰ってくると、
「えっ、早い!自転車で行かれたんですか?」
と聞いてきます。
「いや、歩きだよ。
わたし、歩くのちょっと速いんだ」
と答えると、
「なるほど、これが
脚の長さの違いですね……!」と言って
ひとりでうなずいています。
ある日こうめちゃんが、
茶こしが見つからないと言って
わたしのところへやってきました。
「なんだ、あるじゃん。
いつもの引き出しの、手前のところに」
わたしがめんどくさそうに答えると、
「あの、すみません。ちょっと目が……」
こうめちゃんは言いました。
「ふし穴だったみたいで」
そこまで、言って
ないのです。
お正月に
風邪を引いていたこうめちゃん。
「初詣には行けた?」と尋ねると、
「いえ、行けなかったんですけど、あの」
こうめちゃんは言いました。
「昨日ソレイユで、獅子舞に噛んでもらったので
大丈夫だと思います」
ソレイユでばくっと
頭を噛んでもらったとき、
獅子舞の口の中から知らないお兄さんに、
『今年も良い年になりますように』と
言っていただいたのだそうです。
やさしそうな人でした、と
こうめちゃんが申しておりました。
今日の食パンアレンジ ♯02
FLAG!vol.04「&パン」での企画で、実際に編集が30品目の食パンアレンジを試食してグラフ化した企画。意外とね、おいしいアレンジあるんです! そうでないものも、ありましたが……。興味ある方は、ぜひお試しあれ!(担当編集のぼやき)

<コラム「パン屋日記」バックナンバーは下記へ>
関連記事
-
コラム
【今日もえんぴつを片手に。】<第6回>2年目校閲者は、流行り言葉をどう扱うのか?
流行り言葉、使ってますか?前回、前々回と、ザメディアジョンの各ジャンルごとの編集者の先輩方との関わり、それぞれの校閲を通して学んだことをまとめてきました。まだ出……
2026.09.04
-
コラム
この夏、本で広島を知る。広島本大賞2冠作家・清水浩司さんが綴る「広島本大賞」歴代30冊レビュー
一冊の小説から歴史を知ることもあれば、ノンフィクションから土地の記憶に触れることもあります。コミックや絵本が、その街の空気を教えてくれることもあります。この夏、……
2026.08.11
-
コラム
【今日もえんぴつを片手に。】<第5回>校閲者と編集者 伝えるべきことは何なのか?
「観光」ジャンルの先輩「ひとの役に立ちたいですか?」打ち合わせの帰り道。唐突に投げかけられた質問に戸惑い、結局先輩の真意は確かめられませんでした。今回のコラムで……
2026.08.07
-
コラム
【著者コラム】17年通っても、まだ知らない瀬戸田がありました ― 『レモンの島 今日もあの味と笑顔に会いに行く』/国吉 純
前回のコラムでは、17年間通い続けた瀬戸田で、「もう一度この島を書こう」と思うまでのお話を書きました。今回は、その続きです。実際に本づくりが始まってみると、17……
2026.07.30