
パン屋日記 #22 おじいちゃんのダッフィー
- パン屋日記
町のパン屋さんで働くフワフワの日々……を想像してパン屋で働き始めた筆者が、味わい深い同僚やとんでもないお客さまとくり広げる必ずしもフワフワではない日々の記録です。
人のやさしさや仕事の本質、心に残る一言から、「かんべんしてくれよ」と思うようなできごとまで。自分や自分の身近な人のことを思い出して、ニヤッとしたりじんわりしたりしていただけたら、これ以上の幸せはありません。
#22 おじいちゃんのダッフィー
パン屋のお客さまには高齢の方が多く、
お盆やお正月になると、
ここぞとばかりに
孫を引き連れてやってきます。
あるおじいちゃんは、
社会人になったばかりの
ギャルギャルしいお孫さんと一緒に
モーニングを食べにこられました。
おじいちゃんはリュックにふわっふわの
「ダッフィー」こと
ディズニーランドの熊の
キーホルダーを付けられ、
キティちゃんのポーチに
キティちゃんのサンダル
ほとんどパジャマのような服で来た
孫の職場の愚痴を、
いつまでもいつまでも聞いています。
「やけんここよ! なんで分からんのん!」
と罵られながら、
孫に、スマホで、
「ポケモンGO」のいろはを
叩き込まれています。
かわいそうだなあ、
と思っていました。
おじいちゃんの方は、
張り子の人形のように
うんうん頷くばかりなのです。
ある日おじいちゃんは、
リュックに付けていた
ダッフィーのキーホルダーを
店内に落として帰ってしまいました。
(あの孫に、ひどい目に怒られるのでは?)
パン屋に戦慄が走りました。
(次回お見えになられた時に、必ずお渡ししよう)
そして、次のご来店時に
スタッフが驚いたことは
「たしかに、
あのおじいちゃんですよね?」
「ええ、たしかに、
あのおじいちゃんで
間違いないはずなんですけど……」
お一人で来店された
ダッフィーのおじいちゃんは
あれ、あんなに、
腰が曲がっていたかしら。
あんなに、ぼんやりした
お顔だったかしら。
あんなに小さくって、
あんな服装や髪型だったかしら?
そう、
一緒にモーニングを食べながら
ギャルギャルしい孫の
愚痴を聞くことは、
そのお客さまの、
元気の源だったのです。
よくよく考えてみれば、
自分のおじいちゃんに
本気で職場の愚痴を話す孫が、
どれほどいるでしょうか?
無理やり教えてまで、
わざわざおじいちゃんと
「ポケモンGO」をする必要はありますか?
パン屋といたしましては
あの孫、よく考えてみたら
おじいちゃんのこと、
すっごい好きだよね……
という結論に達しました。
「お客さますみません、
先日、こちらのキーホルダーを
落とされませんでしたか?」
ダッフィーと再会したおじいちゃんは、
またたく間に輝く笑顔。
おそらく孫にもらったのであろう
ダッフィーのキーホルダーを、
両手で包んで持って帰られました。
ちなみにこの「ダッフィー」という熊は、
「長い航海の間、ミッキーが
ひとりぼっちで寂しくないように」
という想いを込めて
ミニーちゃんがミッキーに持たせた、
手作りのテディベアなのだそうです。
今日のパン「バターロールパン」
外がカリカリで、中はふわっふわのしっとりロールパンが好きです。そんなこだわりを同級生に言ったら「だから結婚できねーんだよ!」と言われたんですけど、関係あります!?(担当編集のぼやき)
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