コラム 2019/07/22

パン屋日記 #3 あるパン屋での攻防

タグ:
  • パン屋日記

町のパン屋さんで働くフワフワの日々……を想像してパン屋で働き始めた筆者が、味わい深い同僚やとんでもないお客さまとくり広げる必ずしもフワフワではない日々の記録です。

人のやさしさや仕事の本質、心に残る一言から、「かんべんしてくれよ」と思うようなできごとまで。自分や自分の身近な人のことを思い出して、ニヤッとしたりじんわりしたりしていただけたら、これ以上の幸せはありません。

#3 あるパン屋での攻防

冗談というのは
理解力と創造力と、瞬発力を必要とします。

年齢差があると、
おもしろみの前提にも差ができる分、
切り返しがさらに難しくなります。

しかしながら、
冗談も通じないような若い店員は、つまらないのです。

「いらっしゃいませ」

『いらっしゃいませなんて、思ってないやろ』

「思ってますよ。何名さまですか?」

『今日は4人』

「そうですか、お席はたくさん空いておりますので、
3名さままでならお座りいただけます」

『なんでぼくをのけものにするんや!』

このお客さまは特に明るくフレンドリーな方で、
だからこそ毎日が戦いです。

『ひろこちゃ~ん! そういえば、病気はもう大丈夫なん?
なんやったっけ、あれ、美人薄命病?』

「それは……」

『うん』

「完治したとき、
いったいどのような心象で受け止めたらよいのでしょうか?」

『ぼくが悪かった』

そのお客さまは、コーヒーをお出しするときなど
目が合うたびに、
『ぼくのことハゲてると思てるやろ』
と言ってスタッフを困らせます。

『ひろこちゃんも、ぼくのことハゲてると思てるやろ』

毎度毎度のことですが
わたしはにっこりとほほえんで、

「そんなこと、心の中でしか思っていませんよ」と、
言って差し上げるのでした。

 

今日のパン「メロンパン」

日本発祥の菓子パンの一種。パン生地の上にのせた甘いビスケット生地は、分厚く広範囲を覆っており、このパンの最大の特徴であるとされる。メロンパンの名前の由来は諸説ある。

 

<コラム「パン屋日記 #1、#2は下記へ>

 

パン屋日記 #1 お客様という神様

パン屋日記 #2 飛べないカラスのパン屋さん


甲斐寛子

甲斐寛子[フォトライター]

愛媛県出身。大学進学を機に広島へ。卒業後いったんは地元で就職するも、あまりに広島が好きすぎて再移住。好きな食べ物は焼き立てのパン。現在はパン屋さんで働きつつ、地域情報や企業インタビューを書くフォトライターとして活動中。

甲斐寛子の記事一覧

関連記事

トップに戻る