
パン屋日記 #2 飛べないカラスのパン屋さん
- パン屋日記
町のパン屋さんで働くフワフワの日々……を想像してパン屋で働き始めた筆者が、味わい深い同僚やとんでもないお客さまとくり広げる必ずしもフワフワではない日々の記録です。
人のやさしさや仕事の本質、心に残る一言から、「かんべんしてくれよ」と思うようなできごとまで。自分や自分の身近な人のことを思い出して、ニヤッとしたりじんわりしたりしていただけたら、これ以上の幸せはありません。
#2 飛べないカラスのパン屋さん
「かいさん、かいさん、
飛べないカラスがいるんですが、どうしたらいいですか」
パン屋の前のベンチに、1匹のカラスがいました。
ベンチから飛ぼうとしては落ち、
飛ぼうとしては落ちをくり返しています。
わたしが近づくと、声を出さずにカァーと
口をめいっぱい、縦に開いて威嚇します。
かわいそうに思って、相談に来たアルバイトに
「ほうっておきなさい」とは、言えません。
カァー
コラァー
うるぁー
と、威嚇され続けながら困っていると、
自転車で通りかかったお兄さんが
「基町に保護センターがありますよ」と、
教えてくれました。
「ぼくも今日、すずめのヒナを拾ったんです」
そう言って、
パンを買って帰ってくれました。
今日は今日でパートさんが、
「かいちゃん。あのおばあちゃん、
タクシーがずっとつかまえられないの」
と、言いに来ました。
パン屋の前に、おばあちゃんが1人で
柱に寄りかかるようにして立っています。
どうやらタクシーに乗りたいようなのですが、
タクシーがなかなかつかまりません。
「どうぶつタクシーでよければ店舗から呼べますよ。
そうお声がけしてきてください」
パートさんが、おばあちゃんのところへ向かいました。
「タクシー、呼びましょうか?」
『え?』
「タ、ク、シー、呼、び、ま、しょ、う、かー!?」
『ええ?』
いつまでたっても戻ってこないので外を見に行くと、
パートさんがおばあちゃんの隣で、
腰に手を当て、道路に目を凝らしています。
「タクシー呼びましょうか、って言ったんだけど……」
パートさんは言いました。
「それは、お金がかかる? と聞かれて。
かかりませんよ、と言ったんだけどうまく伝わらなくて。
もう、一緒に待つことにした」
そうしてパートさんは、
辛抱強く道路に目を凝らし、
タクシーをつかまえておばあちゃんを乗せ、
手を振ってお見送りしたのでした。
飛べないカラスを助けること。
おばあちゃんのタクシーをつかまえること。
それはパン屋の仕事かと問われれば、
そういうことが、
町のパン屋さんの仕事なのだと思います。
今日のパン「クリームパン」
クリームパンは体力向上が叫ばれていた時代に、栄養価の高い食べ物として受け入れられ、次第に全国へ広まっていったらしい。発祥は日本。
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