パン屋日記 #23 おばちゃんという生きもの(1)
- パン屋日記
町のパン屋さんで働くフワフワの日々……を想像してパン屋で働き始めた筆者が、味わい深い同僚やとんでもないお客さまとくり広げる必ずしもフワフワではない日々の記録です。
人のやさしさや仕事の本質、心に残る一言から、「かんべんしてくれよ」と思うようなできごとまで。自分や自分の身近な人のことを思い出して、ニヤッとしたりじんわりしたりしていただけたら、これ以上の幸せはありません。
#23 おばちゃんという生きもの(1)
「おばちゃん」はワイルドです。
休憩時間には、
レンジでチンした冷凍パスタを
袋から直接、箸で食べます。
「旦那や子どもの分やったら
ちゃんとするけどね、
自分だけのことはだんだん、
どうでもよくなってくるんよ!
あははは」
わたしなんて、
まだまだ自分のことばっかりです。
素敵だな、と
ストンと思いました。
おばちゃんはやさしいです。
しょんぼりしていると、
「アメあげよ!」と言って
ポケットからアメが出てきます。
(ほんとに持ってるんだ)
と思いました。
「ほかの人に言いにくいようなことがあったら、
いつでも電話しておいで!」
と言って、
電話番号とメールアドレスを
握らせてくれます。
ドメインが、ボーダフォンでした。
おばちゃんは大人です。
うちの店にまだ店長がいた頃
「店長も若いのにようやるねえ」と
しきりに言っていたのですが、
店長は、当時38歳でした。
「うちの店長、若く見えますか?」
と尋ねると、おばちゃんはこう答えました。
「なん言よん、
30代なんてまだまだ若者、
20代なんて赤ちゃんよ!」
(赤ちゃん?)
わたしが、
あの子はひとつ年上、
あの子はふたつ年下、なんて
繊細に比べては
葛藤していた20代を、
全員まとめて、
「赤ちゃん」と言い放ったのです。
(おばちゃんって、すごい……!)
お母さんたちには、
上司よりも頭の上がらない
わたしなのでした。
今日のパン「サンドウィッチ」
料理の「サンドウィッチ」の由来とされる人物として知られる第4代サンドウィッチ伯爵ジョン・モンタギュー。日本では、明治時代には既にサンドイッチが伝わっていて、1899年(明治32年)、『大船軒』が日本で初めて、サンドイッチを駅弁として発売したとか。(担当編集のぼやき)
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甲斐寛子[フォトライター]
愛媛県出身。大学進学を機に広島へ。卒業後いったんは地元で就職するも、あまりに広島が好きすぎて再移住。好きな食べ物は焼き立てのパン。現在はパン屋さんで働きつつ、地域情報や企業インタビューを書くフォトライターとして活動中。
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