
【著者コラム】「やらんといけんのんじゃけどね…」の声を、今度こそ動かすために――/勝丸恭子
- 勝丸恭子
- 広島
- 防災
サバイバル術より先に、
まず「生き残る」ための約束
この本を通じて、私がみなさまにお届けしたいことは、とてもシンプルです。
それは、「明日もし大きな災害が起きても、その瞬間に、あなたとあなたの大切な家族がちゃんと生き残るための準備ができていること」です。
防災というと、ペットボトルでランタンを作ったり、缶詰を使って調理をしたりといった「体験」がフィーチャーされることも多いですよね。
でも、それは実は「何かが起きた後のサバイバル術」です。
その前に大切なのは、「何かが起きたときに、ちゃんと生き残っている」ための準備です。
この本では、その「準備」の部分に焦点を当てました。
「やらんといけんのんじゃけどね…」と言いながら、
私たちが抱えるモヤモヤ
私は気象予報士として、広島で16年間活動してきました。
天気予報だけでなく、講演などを通して地域のみなさんとお話しする機会もたくさんいただきました。
その中で何度も耳にしたのが、
「やらんといけんのんじゃけどね…」
という言葉です。
広島ではこれまで何度も大きな災害を経験してきました。
それでも、必要な防災情報が十分に浸透していなかったり、「やらなきゃ」と思いながら行動に移せない方が少なくありません。
実際に、「まだまだ防災意識が低いから啓発に来てほしい」と声をかけていただく地域もありました。
しかし、ここ数年は比較的穏やかな年が続いていることもあって、防災への意識が少しずつ薄れているのではないかという危機感も抱いています。
そして、防災に関する情報は年々増えています。
災害が迫ったときに発信される情報も多く、普段から知っておきたい知識もたくさんあります。
だからこそ、
「何が正しいのかわからない」
「どこから始めればいいのかわからない」
そんなモヤモヤとした焦りを一人で抱えている方に、この本を届けたいと思いました。
プロの私ですら苦労する情報の多さと、
徹底的にこだわった「見た目」

インターネットには防災情報がたくさんあります。
それは便利な反面、気象予報士・防災士である私ですら、必要な情報を集めるのに苦労することがあります。
だからこそ、「これさえあれば、ひと通りわかる」と思える一冊を作りたいと考えました。
目指したのは、とにかく簡単でわかりやすい本です。
「複雑な話はひとまず置いておいて、まずは基本的なことを知りたい」。
そんな方に向けた内容にしたいと思っていました。
ところが、実際に書き始めると、「命に関わることだから削れない」という内容ばかり。
情報をそぎ落とす難しさを痛感しました。
防災のハードルを高くしている理由の一つは、情報量の多さや言葉の難しさだと思っています。
やわらかく、わかりやすく、必要最小限に。
でも、命に関わることだから誤解はあってはいけない。
そのバランスを取ることが、この本づくりで一番難しかったところかもしれません。
最初は文字数を意識して書いていたのですが、編集者さんと「あれも必要ですね」「これも入れましょう」と話しているうちに、情報量はどんどん増えていきました。
その結果、ページレイアウトを整える作業も大変になりました。
それでも、「見やすさ」は絶対に妥協したくありませんでした。
見開きで理解できること、区切りがわかりやすいこと、必要な情報がすぐ目に入ること。
そうしたレイアウトにも、かなりこだわって修正を重ねました。
レイアウト面では何度も修正が入り、私自身はもちろん、編集者さんにもたくさん負担をかけてしまったと思います。
それでも最後まで妥協せず、一緒に作り上げてくださいました。
そのおかげで、ぱっと見てもすっきりと、「わからないことを調べる本」としても使いやすい一冊になったのではないかと思っています。
また、「勝丸流!」というコラムやインタビュー記事は、編集者さんからのアイデアです。
特にインタビューは、テレビでは見えにくい災害報道の裏側や現場のリアルを感じてもらえる内容になっています。
私自身、この本の中でも特に読んでいただきたいページです。
2026年5月末の刷新を前に、
令和の気候変動へ「適応」するために
なぜ”いま”この本を出すのか。
それには社会的な背景があります。
まず、2026年5月末には、防災気象情報(警報や注意報)が新しくなりました。
梅雨や台風の季節を迎える前に、多くの方へ届けたいという思いがありました。
また、昨年秋には広島県の地震被害想定も新しく公表されました。
でも、その内容がどこまで浸透しているのかというと、まだ十分とは言えず、必要なのは大雨への備えだけではありません。
だからこそ、「防災」というテーマで一冊にまとめることで、大雨にも地震にも目を向けてもらいたいと思いました。
40℃近い暑さが珍しくなくなり、雨の降り方も年々極端になっています。
気候が変わってきていることを、多くの方が実感されているのではないでしょうか。
すぐには止められない気候変動だからこそ、私たちは「適応」していく必要があります。
その適応の一つが、防災です。
行政任せではなく、一人ひとりが行動する「令和の防災」を広げ、みなさんの防災意識をアップデートしていただけたらと思っています。
私を育ててくれた、
広島のみなさまへ
15年間続けてきた気象キャスターの仕事が一区切りとなりました。
私は、広島の視聴者のみなさんに気象予報士として育てていただいたと思っています。
その恩返しとして、自分が学んできたことや経験を一冊にまとめたい。
そんな思いが、この本には込められています。
このタイミングだからこそ、出版する意味があると感じました。
本を読んだ方に、
「非常持ち出し品より先に準備することがあるんだ!」
「思ったより難しくないな!」
「たちまち一つ、やってみようかな!」
そう思っていただけたら、とてもうれしいです。
「これならできそう」と思えることが、一つでも見つかれば十分です。
本の中で紹介している内容をヒントに、「自分にはどんなことが起きるだろう」と想像しながら備えてみてください。
防災は、想像することから始まります。
そのきっかけを、この本の中にたくさん詰め込んだつもりです。
広島県のみなさま、ぜひ一家に一冊。
地域の防災活動や学校など、さまざまな場面で活用していただけたら、とてもうれしく思います。
たちまち、ひとつ。
防災でいちばん大切なのは、「想像すること」です。
そして、「これならできそう」と思えることを、一つでも始めてみること。
「やらんといけん」を、今度こそ行動に変えるために。
まずはこの本を開いて、たちまち一つ、できることから始めてみませんか。
文:勝丸恭子
著者プロフィール

勝丸恭子
かつまる・きょうこ
広島県出身。横浜国立大学を卒業後、広島の民放に就職し報道記者や中継ディレクターを務める。退職後に気象予報士の資格を取得し、2010年から15年間に渡ってNHK広島放送局気象キャスターとしてテレビ出演。カープとお好み焼きが大好き!という地元愛と、分かりやすく楽しい気象コーナーで人気を集めた。2019年には夢だったカープの始球式が実現!講演活動は広島県内をはじめ中国地方各地で多数。リピートの御依頼も多い。
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やってみようや ひろしま防災
著者: 勝丸恭子
定価: 1,650円(本体1,500円+税10%)
判型: B6
ISBN: 978-4-86250-878-2
発売日: 2026年6月30日
この記事は2026年7月15日の情報です。
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