コラム 2020/02/14

不思議なスナックの小話 /#01 ベージュ帽の女「ぐすんっ…」

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広島で飲食店を多店舗展開する飲食店経営者コラム。

経営者と言っても、いつも誰かに「全く大人になれてないよねっ!」とよく言われる。
しかもその言葉を褒め言葉として都合よく解釈し、ポジティブに生きている。

食のお話、お酒のお話、不思議なスナックのお話など。

飲食経営者だから分かる裏話や、時代錯誤の食べ飲み歩き大好き野郎としての勝手な意見を、ぶっちゃけていきたいと思います!

#01 ベージュ帽の女「ぐすんっ…」

実際にあるスナックでのお話。

 

ここは広島にあるとあるスナック。

言い方は悪いかもしれないけど、言ったら場末のスナックだ。

 

しかもママパパなる強烈なキャラのママ?パパ?が切り盛りされている。

2人じゃないよ。1人。あとは察して下さい。

自分の敬愛する人だから、以下ママと言わせてもらいます。

 

だから、女性男性問わず人気で、大人のお酒の飲める社交場というよりは、大人のしゃべり場的な雰囲気。

たまに泣きながらカラオケを歌っている憎めない会社員の人もいて、その歌を聞いて初めて知り合った自分もついうるっときちゃうようなアットホームな場所なのだ。

 

自分は何かあったら、ふらっと行くようにしている。

何もなくても行くけどね。

 

そして、聞いていいのか悪いのか、お客さんとママの会話が否応なく耳にはいってしまう。

ちょっと片耳大きくなってるかもだけど、それはナイショ。

 

今回もふらっと寄った時のお話。

 

「ナオちゃんはいつものセットでいい?」

 

うん。ボトルまだあったっけ?ないなら入れて。

 

「はーい。もうちょっとしかないからいれるわねぇ~。」

 

いつものように、自分好みの薄めというより極薄の麦焼酎の水割りが用意された。

 

この麦焼酎と水とのバランスはなんでこんなに絶妙なんだろ?

 

たぶん、その筋のコンテストがあればここのママは広島代表でいけんじゃないかな。

そしたら、応援メンバーとかめちゃくちゃ濃いメンバーなんだろうなあ。

でも、原色のオンパレードで目がチカチカするかも。

ぐすんっ……

 

カウンターの隅から音が聞こえた。

 

……泣いてる。おぉー。泣いてるよぉ。

女性が1人カウンターで泣いている。しかもベージュのベレー帽被ってるよぉ。

 

こないだ、ママが

「ベレー帽を被った女には気をつけなさい!!」って、超偏見に満ちたこと言ってたんだよな。

 

今目の前で、ベレー帽を被ってメガネかけた帽子好きな俺を前にして、よく言えるなってその時思ったけど。

ママもベレー帽よく被ってるし。

 

しかしママ曰く、とにかくおしゃれとは別の何かがあるらしい。

自分も、たしかにそう言われれば・・・と思い当たる節がないわけじゃない。

 

その女性の服装はオールブラック。

多分、ベージュがワンポイント的な役割みたいなヤツだ。

 

他にお客さんは自分だけ。

 

そして優しいママがその女性の向かいに姿勢を正して座りだした。

 

はい、話聞く気満々。

 

ベージュ帽も話す気満々。

だって半分ボトル空いてるもん。

 

ドンッ!!

聞いてよ! ママっ!!

 

少し大きな声をベージュ帽がだした。

 

あー、だぶん怒られるよそのパターン…

 

ここのママは女性にすこぶる厳しいことが多い。

危険を察知する自分がいた。

 

今日も片方の耳が少し大きくなりそう…

 

つづく。

 

次回 スナック小話 #02「聞かないわよ!  あんたの話なんか!!」ママ、吠える。

 

※実際にあるお店であったお話です。

フィクションを入れる場合もありますが、そこはご愛嬌で。


ナオヤ

ナオヤ[広島駅を中心に飲食店を多店舗展開する飲食店経営者。 しかし、「仕事何してるの?」としょっちゅう誰かに聞かれる大人になれない30代後半。 君は『ピーターパン』みたいだねと、人に言われたことをちょっとだけ気にしている。 とにかく、呑む・食う・語るが大好き。 週5日で理由をつけて飲みに行く毎日。そこで得た知識を自分のモノのように話すのが得意技。]

飲食店経営者兼ライター

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