【編集推し】3.11の記憶。「見た目にはそのときの傷はなくなっているが、人の心の中には残っている」映画『風の電話』フォトブックを読む
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11年という歳月。
当たり前だけど、0歳だった子が11歳に。
11歳だった子は21歳と、成人になっている。
それぐらい、見た目に変化が見られる。
2022年3月11日。
2020年1月に発刊した映画『風の電話』公式フォトブックを読み返してみた。
このフォトブック制作にあたり、約2年と半年前に聞いた諏訪敦彦監督のインタビューした際、監督の「見た目にはそのときの傷はなくなっているが、人の心の中には残っている」という言葉が、今でも強く残っている。
インタビュー後に、岩手県大槌町を訪ねた際、町は少しずつ整備されていて、大きな防波堤も建設されていた。

▲新しい住宅が立ち並んでいく大船渡の町(引用:映画『風の電話公式フォトブック』より)
そして、会う人会う人の明るい笑顔にもたくさん出会った。
ただ、3月11日のことを聞くと笑顔は消える。
涙を目に浮かべながら、言葉をつまらせながら、それでも丁寧に話してくれる。
話すではなく、伝えるように、だ。
よくよく歩けば、町には未だにあの頃の面影が残っている。
空気が抜けたボール、家の基礎。

▲水たまりになっている箇所はかつて家が建ち並んでいた(書籍制作のため現地を訪れたカメラマン)
町全体はきれいに整備されてるように見えた。
日常では、未来を見据えながらたくましく明るく生きる人たちがいた。
ただ、「見た目にはそのときの傷はなくなっているが、人の心の中には残っている」その言葉の意味が、わかった気がした。
日本が「災害の国」ということを意識せざるをえない昨今。
時間が経過することで新しく変わっていく景色は、ときに人の記憶を少しずつ薄めていく。
だからこそ人の記憶に残し、後世に伝え続けることは大事だ。
改めて、そんなことに気づかされる一冊です。

堀友良平[株式会社ザメディアジョンプレス 企画出版編集・FLAG!web編集長]
東京都出身。学研⇒ザメディアジョンプレス。企画出版、SNS、冊子などの編集担当。書籍「古民家カフェ&レストラン広島」などのグルメ観光系や、「川栄李奈、酒都・西条へ」などのエンタメ系なども制作。学研BOMB編集部時にグラビアの深さを知りカメラに夢中
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