作って魅せて食べれる芸術品 前衛弁当の魅力たっぷりのパネル展へ
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「弁当」と「アート」が、どうなれば掛け合わさるのか。
ウッドワン美術館にて、12月5日まで開催中の「前衛弁当パネル展」は、前衛弁当作家・nancyさんが手がけた弁当作品の展示が並びます。
前衛弁当?
多くの人は聞きなれない言葉、いや、造語だと思うのです。
辞書で調べれば、「前衛」とは4つの意味を持つことが分かります。
そのなかのひとつに「芸術活動で、既成の概念や形式にとらわれず、先駆的・実験的な表現を試みること。また、その集団」とある。
芸術的側面から解釈すれば、「現代アート」ということなんでしょう。
つまり、「前衛弁当」とは「既成の概念や形式にとらわない弁当」といった単語となるのです。
nancyさんは2018年ごろから、前衛弁当と名付けた弁当をインスタグラムで公開してきました。
そして、nancyさんの前衛弁当が世に広がったきっかけが下記のCMです。
最近では、青森県観光企画課「まるごと青森」から依頼されて作った弁当が、青森でざわつきました。
日本最古のキャラ(?)のキャラ弁でお祝い。#北海道・北東北の縄文遺跡群 #世界文化遺産 pic.twitter.com/LRRrGCHjMQ
— まるごと青森 (@marugotoaomori) July 28, 2021
上記の前フリを知ったうえで「前衛弁当パネル展」を鑑賞すると、より鑑賞が楽しくなります。
そこで、今回は「前衛弁当パネル展第2弾」の楽しみ方を7つ紹介していこうかと!

nancyさんの弁当は、流行の「キャラ弁」という枠にとどまらず、絵画、映画、音楽、著名人に歴史……多彩なジャンルをで表現しています。
表現できないものはないのではないだろうか。
そんなふうにさえ思えてしまうほど、その表現力の高さに驚きます。
このパネル展を企画したウッドワン美術館学芸課長は、
「ユニークな視点によるお弁当は、彼女(nancyさん)の知識と感性、そして表現力の上に成り立つ、まさに奇想の芸術です」
というように、前衛弁当はまさに現代アートなんです。
そんなわけで、特別展示会場入りますと、出迎えてくれるのが『ヴィーナスの昼食』です。

▲『ヴィーナスの昼食』
実はこれ、もちろん弁当です。
今回、書籍化にあたり書籍のカバー表紙は知らない人はほとんどいないであろう『ヴィーナスの誕生』をモチーフにしています。

僕が「カバー表紙はぜひとも表裏全面で表現したいですね!」なんてわがままを言ったもんですから、nancyさんには本当に苦労をかけた作品です。
普通サイズの弁当箱では作れずに、モロブタの中に作ったようです。

▲カバーをはずして広げると『ヴィーナスの昼食』全景となります
さて、さらに展示場の中へ進んでいきましょう。
ここから、鑑賞するにあたっての7つの楽しみ方を案内します。
【鑑賞の楽しみ方①】
細部にわたる表現と、おちゃめな表現
どの弁当も、とにかく再現度が高く、細部にわたるまでの表現力がすごいです。
何度も言いますが、すべて食材です。
なので、作品ごとに「どんな食材を使っているのか」と推理しながら鑑賞してみてください。

▲『大豆の耳飾りの少女弁当』
たとえば『大豆の耳飾りの少女弁当』では、ターバンの布のシワや質感は湯葉、茶色い服は油揚げときたもんだ。
そして、耳飾りは大豆!!
なるほど、それでタイトルは『大豆の耳飾りの少女弁当』なのか。
モチーフとなっているのは、多くの人が知っているであろうヨハネス・フェルメール作の『真珠の耳飾りの少女』です。
まさか、フェルメールもジパングの食材で絵を表現されるなんて思ってもみなかったことでしょう……。
真珠が大豆って……。
ちゃめっ気たっぷりです!
【鑑賞の楽しみ方②】
nancyさんと芸術員による解説
各作品には解説が付いています。
ひとつは、nancyさんが弁当を作った時の心情や記録が綴られています。

▲『ギックリ腰注意弁当』
『ギックリ腰注意弁当』では、nancyさんは冒頭で下記のように綴っています。
「床に落ちたレゴを拾っている時、ストッキングを履こうと屈んだ瞬間、その痛みはやってきました」
その後、延々とギックリ腰エピソードが語られています。
べ、弁当のことは……?
そう思いながら読み進めると、
「この弁当を何で作ったか分からないことを、猛烈に反省しています」
そう締めくくっています。
弁当レシピが書かれているものもあれば、こうして作品背景やnancyさんの人柄がよく分かる解説もあり、クセになってきます。
そしてご安心ください。
もうひとつの解説は、ウッドワン美術館の学芸員が書いています。
モチーフとなった絵画を学芸員がしっかりと解説しているので、芸術に詳しくない人でも十分に楽しめます。
学芸員らしい目線で弁当をまじめに解説してくださっているのも、なんだか良いものです。
【鑑賞の楽しみ方③】
弁当が動きます

解説パネルには、QRコードが記載されているものがあります。
そのQRコードを読み取ると、動く弁当を鑑賞することができます。
目の前に飾ってある弁当が、スマホ画面で動きます。
お子様はぜったいに喜ぶでしょう。
独特な世界観を堪能してください。
ようこそnancyワールドへ!
【鑑賞の楽しみ方④】
絵本弁当もパネル展示中

nancyさんは、FLAG!webにて「絵本弁当コラム」を連載中です。
nancyさんが息子さんに読み聞かせていた思い出の絵本の表紙を、弁当で再現しています。
それらの弁当とエッセイを展示中です。
「子育て奮闘記」とまではいきませんが、息子さんや家族への愛情が詰まったエッセイは、多くの方から共感できるという声をいただいています。
この「愛情」こそが、nancyさんの魅力でありnancyさん自身の行動力なんだと感じています。
「前衛弁当」は、「愛情」から生まれています。
【鑑賞の楽しみ方⑤】
豪華弁当箱に思わず息をのむ
今回の展示会のためにnancyさんとコラボした作家さんがいます。
田中さんは埼玉県所沢にラボを構える木工作家で、佐々木さんは呉市音戸で「アトリエ壱」を構える陶芸家です。
こちらも、nancyさんの弁当同様に、弁当箱という概念を超えた作品となっています。
ぜひ来館して、その目で鑑賞してください。
思わず息をのみます。
【鑑賞の楽しみ方⑥】
鑑賞後はガチャガチャしてね!
さて、鑑賞後はぜひ売り場へ足を運んでみてください。
nancyさん初の書籍『つくる みせる たべる 弁当美術館』を先行販売中です(書店は10月15日より発売開始)。

ウッドワン美術館でご購入されると、「前衛弁当カレンダー2022」が特典として付いてきます。
また、書籍購入後には謎のコインを渡されます。
販売エリアには、なんとガチャガチャが置いてあります。

受け取ったコインを使って、ぜひガチャガチャしてください!
nancyさん特製缶バッジと、おみくじがいただけますよ。

ぜひこの機会をお見逃しなく!
【鑑賞の楽しみ方⑦】
江戸の遊び絵もおもしろい!
同時開催中の『江戸の遊び絵づくし展』にもぜひお立ち寄りください。(どちらかといえばこちらがメインの展示会です)
現代に引き継がれている「遊び絵」があることに驚きますよ!
「あれって、これがルーツなの!?」といった発見がたくさんありました。
江戸庶民がどんな風に使い、面白がり、驚き、頭をひねり、そして笑っていたのか。
デジタルばかりに頼ってしまう現代において、手元にあるものを工夫して全力で遊び道具を造る先人から学ぶことが多かったです。
nancyさんの前衛弁当作りと、江戸庶民の遊び絵は、根本的に「楽しむ」という共通点があるのかもしれません。
ウッドワン美術館
| 展覧会名 | 江戸の遊び絵づくし展 同時開催 お弁当インスタグラマーnancy(ナンシー)さんの前衛弁当パネル展 第2弾 |
| 会場 | ウッドワン美術館 新館ロビー |
| 住所 | 広島県廿日市市吉和4278 |
| 期間 | 2021年10月2日(土)~12月5日(日) |
| 開催期間 | 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで) |
| 休館日 | 毎週月曜日 ※カフェ・マイセンは月・木曜日は休業 |
| 料金 | 観覧無料 |
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堀友良平[株式会社ザメディアジョン 出版編集・FLAG!web編集]
東京都出身。学研⇒ザメディアジョン。出版、SNS、冊子などの編集担当。書籍「古民家カフェ&レストラン広島」などのグルメ観光系や、「川栄李奈、酒都・西条へ」などエンタメ系なども制作。学研BOMB編集部時にグラビアの深さを知りカメラに夢中。
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