コラム
更新:2026/07/30 公開:2026/07/25

【著者コラム】17年間通った瀬戸田で、私が見つけた島の魅力―― 『レモンの島 今日もあの味と笑顔に会いに行く』/国吉 純

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「どうして、そんなに何度も瀬戸田へ行くんですか?」

これまで、何度もそう聞かれてきました。

瀬戸田へ通い始めて、もう17年近くになります。年に少なくとも2〜3回、多い年にはそれ以上。気づけば、50回以上は訪れていたと思います。

新しい景色を求めて旅をするのも好きです。でも私には、何度でも帰りたくなる場所があります。

それが、瀬戸田です。

約10年前に出版した『瀬戸田レモンに恋して』では、レモンとレモン農家さんを中心に、この島の魅力を書きました。当時は、まだ「国産レモン」が今ほど知られていなかった頃。瀬戸田レモンのおいしさや、生産者の皆さんの思いを伝えたいという気持ちで、一冊を書き上げました。

それから約10年。

私は再び、この島をテーマに本を書くことにしました。

でも今回は、レモンだけを書こうと思ったわけではありません。

17年間、この島へ通い続ける中で出会った人たち。何度見ても飽きることのない風景。そして、この島に流れる穏やかな時間。そのすべてを書き残したいと思うようになったのです。

その思いの始まりには、一人の大切な人との別れがありました

 「また来たよ」と言える場所がありました

瀬戸田へ行くと、必ず立ち寄る場所があります。

長畠農園です。

私がこの島へ通うきっかけとなったレモン農家さんで、ご夫妻とは17年近くのお付き合いになります。

特に奥様とは年齢も近く、レモンの注文ではSNSを通じていつも素早く対応してくださり、本当に助けていただきました。

島へ行けば一緒に食事をし、電話やメールでは近況を話したり、女性同士ならではの何気ない愚痴をこぼし合ったり。

瀬戸田へ行く理由は、いつしかレモンだけではなくなっていました。

「あの人に会いに行こう。」

そんな気持ちで島へ向かうことが増えていたのです。

旅先に、「また来たよ」と自然に言える場所がある。

それがどれほど幸せなことなのか、当時の私は深く考えたこともありませんでした。

一年が過ぎて、ようやく見えてきた問い

その奥様が、一年前に病で突然亡くなられました。

私も大きな喪失感を味わいました。

瀬戸田へ行けば、いつものように会える。

そんな当たり前の日常が、突然なくなってしまったのです。

それから一年ほど経った頃、不思議と奥様との会話を思い返すことが増えました。

「あのとき、こんなことを話していたな。」

「あんな夢を聞かせてくれたな。」

そうして記憶をたどるうちに、一つの問いが浮かびました。

「由佳さんは、人生で本当にやりたかったことは何だったのだろう。」

その問いは、やがて自分自身にも向かいました。

「私は、この17年間で何を見てきたのだろう。」

レモンだったのか。

景色だったのか。

それとも、もっと別の何かだったのか。

答えは、まだ見つかっていませんでした。

でも、その問いは、私の中で少しずつ大きくなっていきました。

「レモンの島」から、「人の島」へ

ちょうどその頃、瀬戸田も少しずつ変わり始めていました。

コロナ禍を経て、新しく島に関わる人や店が増え、観光客や海外からの旅行者も戻ってきました。商店街には新しい風が吹き、以前とは少し違う表情も見せるようになっています。

その変化を見ながら、私は改めて考えるようになりました。

「それでも、私はなぜ瀬戸田へ帰ってくるのだろう。」

レモンがおいしいから。

景色が美しいから。

もちろん、それも理由の一つです。

でも、それだけなら17年間も通い続けることはなかったはずです。

瀬戸田へ来ると、不思議と肩の力が抜けます。

海を眺めながらぼんやり過ごす時間。

畑で季節の移ろいを感じる時間。

島の人たちと何気ない会話を交わす時間。

都会では、何かに追われるように毎日を過ごしています。でも、この島では「何もしなくてもいい」と思えるのです。

心も体も、静かに元の自分へ戻っていく。

そんな場所があることのありがたさを、17年間かけて教えてもらいました。

だから私は、何度訪れても飽きることがありません。

訪れるたびに、新しい魅力を見つけて帰ることができるのです。

「今なら書けるかもしれない」と思えた日

前作『瀬戸田レモンに恋して』は、レモンとレモン農家さんに焦点を当てた本でした。

あの頃の私には、それが伝えたい瀬戸田の姿でした。

けれど17年という時間を重ねた今、私の中で瀬戸田は「レモンの島」だけではなくなっていました。

人がいて、暮らしがあって、何度でも帰りたくなる時間がある。

その魅力を、一冊にまとめたい。

そう思い、再び筆を取ることを決めました。

とはいえ、その時点では、どんな本になるのか、自分でもまだ分かっていませんでした。

17年間通い続けた島だからこそ、書きたいことがあり過ぎたのです。

レモンだけではない。

人だけでもない。

そのすべてを、どう一冊にまとめればいいのか。

実は、そこからが本当のスタートでした。

 

文・国吉 純

<後編へ続く>

著者プロフィール

国吉 純(くによし・じゅん)

園芸家・レモン研究家。上智大学文学部教育学科卒業。大学卒業後大手電機メーカーにて秘書を務め、退職後出会った園芸の世界で、暮らしの中での園芸を、講演やメディア等で紹介。園芸専門学校をはじめ、住宅関連企業、集合住宅等で「楽しく簡単に華やかに育てる」をモットー に年齢や場所に関係なく植物と触れ、育て、楽しめる植物選び、メンテナンス法などの指導にあたっている。国産レモン販売拡大のためのサポートや、高齢者施設での園芸療法活動も注目されている。

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著者: 国吉純

定価: 1,980円(本体1,800円+税10%)

判型: B6判

ISBN: 978-4862508744

発売日: 2026年7月24日

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この記事は2026年7月30日の情報です。

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