コラム
公開:2026/07/30

【著者コラム】17年通っても、まだ知らない瀬戸田がありました ― 『レモンの島 今日もあの味と笑顔に会いに行く』/国吉 純

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  • 国吉純
  • 瀬戸田レモン

前回のコラムでは、17年間通い続けた瀬戸田で、「もう一度この島を書こう」と思うまでのお話を書きました。

今回は、その続きです。

実際に本づくりが始まってみると、17年間通ってきたはずの瀬戸田に、まだまだ知らない魅力がたくさんあることに気づかされました。

人も、景色も、歴史も。

知っているつもりだった島を、もう一度旅するような時間になったのです。

取材をして、初めて聞けた話がありました

今回の本では、多くの方に取材をさせていただきました。

何度も顔を合わせ、世間話をしてきた方ばかりです。

でも、「取材」という形で改めてお話を伺うと、それまで知らなかった思いや人生が見えてきました。

「あの時は、そんな気持ちだったんですね。」

「そんな思いで続けてこられたんですね。」

17年間通ってきたからこそ聞けた話もあれば、17年間通ってきたのに、初めて知ることもたくさんありました。

取材を重ねるほど、「もっと多くの人にこの方のことを知ってほしい」「応援したい」という気持ちが自然と大きくなっていきました。

この本には、そんな思いも込めています。

「取材」よりも大切だった時間

印象に残っている出来事があります。

取材旅行の途中、「スナック純」で島の皆さんに集まっていただきました。

最初は、いろいろなお話を聞かせていただこうと思っていたのですが、気づけば島の方同士が近況を語り合い、笑い合う時間になっていました。

さらに途中から、島ごころの社長が連れて来られた広島大学の学生さんも加わり、世代を超えて自然と輪が広がっていきました。

「あれ?今日は取材にならなかったな。」

そんなふうにも思いました。

でも、その光景を見ながら、「こんな時間は島の中でも、なかなかないのかもしれない」と感じたのです。

人が自然につながり、初めて会った人もすぐに会話の輪に入っていく。

そんな空気もまた、瀬戸田らしさなのだと思いました。

本に載せられなかった場所もあります

ありがたいことに、取材させていただいた皆さんは、本当に率直にお話ししてくださいました。

「そこまで書いても大丈夫ですか?」と思うようなお話も、「ぜひ書いてください」と快く了承してくださいました。

一方で、掲載を見送った場所もあります。

私が瀬戸田へ行くと必ず立ち寄る、大好きなお店です。

「紹介していただけるのはうれしいけれど、家族だけで営んでいるので、たくさんのお客様が来られると対応しきれなくて……。」

そんな理由で掲載をご辞退されました。

少し残念でしたが、そのお気持ちもよく分かります。

だから、この本では紹介しきれなかった場所も含めて、瀬戸田を歩きながら、自分だけのお気に入りを見つけてもらえたらうれしいです。

私自身も、新しい瀬戸田に出会いました

今回の取材では、柑橘工房でのジャムづくりや、永井英夫さんによるレモンの魅力を伝える体験にも参加しました。

同じレモンをテーマにしていても、伝え方や楽しみ方は人それぞれです。

「知っている」と思っていたことも、体験してみると新しい発見がありました。

また、瀬戸田の歴史について書こうと思ったときには、資料が思っていた以上に少なく、調べることに苦労しました。

そんな時に大きな力を貸してくださったのが、藤田玲生さんです。

一つひとつ確認しながら教えていただき、本当に助けていただきました。

本を書くというより、私自身がもう一度、この島を旅しているような気持ちでした。

書けなかったこともあります

今回の本を書く前は、長畠農園の由佳さんとの思い出を、もっとたくさん書こうと思っていました。

都会で暮らす一人の女性として。

農家の嫁として。

彼女の生き方から感じたことも、たくさんありました。

でも、お別れからまだ一年。

私の中では、まだその思いを整理しきることができませんでした。

だから今回は、書かなかったのではなく、まだ書けなかったのです。

この本は、一人ではできませんでした

今回の本づくりでは、改めて多くの方に支えていただきました。

取材に協力してくださった島の皆さん。

忙しい中でも時間をつくってくださった皆さん。

そして、「ここはもっと話を聞いてきてください」「ここはもう少し掘り下げてみましょう」と背中を押してくれた編集者さん。

一人では、きっとこの本にはなっていません。

皆さんのおかげで、一冊の形にすることができました。

だから、この本は私一人が書いたというより、瀬戸田の皆さんと一緒につくった一冊なのだと思っています。

また帰ってきたくなる島へ

旅には、いろいろな楽しみ方があります。

初めての土地を巡る旅もあれば、一つの場所に何度も通う旅もあります。

私は、この17年間で後者の楽しさを教えてもらいました。

季節が変わるたびに違う表情を見せてくれる景色。

顔を合わせるたびに「おかえり」と迎えてくれる人たち。

何もしない時間が、心をゆっくり整えてくれること。

もし、この本やこのコラムを読んで、「瀬戸田へ行ってみたいな」と思っていただけたら、とてもうれしいです。

そして、一度だけではなく、「また行こうかな」と思っていただけたら、なおうれしく思います。

きっと、そのたびに違う瀬戸田に出会えるはずです。

私が17年間、そうだったように。

著者プロフィール

国吉 純(くによし・じゅん)

園芸家・レモン研究家。上智大学文学部教育学科卒業。大学卒業後大手電機メーカーにて秘書を務め、退職後出会った園芸の世界で、暮らしの中での園芸を、講演やメディア等で紹介。園芸専門学校をはじめ、住宅関連企業、集合住宅等で「楽しく簡単に華やかに育てる」をモットー に年齢や場所に関係なく植物と触れ、育て、楽しめる植物選び、メンテナンス法などの指導にあたっている。国産レモン販売拡大のためのサポートや、高齢者施設での園芸療法活動も注目されている。

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この記事は2026年7月30日の情報です。

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