
【編集後記】この夏、「レモンの島」の魅力を紡いだエッセイを片手に、瀬戸田へ旅したくなる!
- レモン
- 瀬戸田
書籍『レモンの島 今日もあの味と笑顔に会いに行く』は、長年、尾道市にある2つの島「生口島」と「高根島」へ通う著者だからこそ気付ける現地の魅力と、そこで育つレモンについて、丁寧に紐解いた一冊。
今回は、この本の見どころとこだわりについて、担当編集の視点からご紹介します。
ネットには転がっていない、
瀬戸田と瀬戸田レモンの魅力を伝えたい

▲瀬戸内海を背景に、レモンがたわわに実る光景はこの地ならでは
この本の著者であり、園芸家・レモン研究家である国吉純さんの本の制作をお手伝いさせていただくのは、今回で2回目です。
国吉さんは、国産レモンの生産量日本一の尾道市・瀬戸田(生口島・高根島があるエリアをこう呼びます)に魅了され、かれこれ17年間通い続けていらっしゃいます。
1作目が出版されたのは、ちょうど10年前のこと。
10年前も「瀬戸田レモン」をテーマに本をつくったのですが、この10年で瀬戸田の町は大きく変わり、「新たな町の魅力を伝えたい」と、国吉さんから出版社へご相談をいただいたのです。
私自身もその話を聞いて、「面白そう!」とワクワクしたのですが、それと同時に、少し不安も感じていました。
それは、この10年間で、出版業界を取り巻く環境もまた、大きく変わったから。
インターネットに、そしてSNSに接続すれば、観光情報なんていくらでも落ちているこの時代に、わざわざ本を買ってもらってまで、伝える価値がある情報とはどんなものだろうか。
どうしたら、読者の方々に満足してもらえるだろうか――。
そこから、私たちは本の方向性を定めました。
🍋レモン研究家の国吉さんだからこその視点で物事を伝えるため、あくまで「瀬戸田レモン」を軸に展開すること。
🍋実際に現地に行ったような気分を味わえる、読後感に浸れる内容にすること。現地で人間関係を構築した国吉さんだからこそ遭遇できた景色や経験を、読んだ人が追体験できるエッセイにすること。
🍋とはいえ、本当にこの本を持って瀬戸田を旅できるよう、ガイドブックとしての役割もしっかり果たせる本にすること。
ただ、これらを追求するという同じ目標を共有していても、時として、著者が本当に伝えたいことと、大部分の読者が知りたいであろうと編集者が考える内容は、重ならないことがあります。
そこで私たちは、そのギャップを埋めながら、2つが重なり合う地点を探っていくという作業をおこなっていくこととなりました。
長年島へと通う国吉さんと一緒だから、
気付けた瀬戸田の魅力

▲しおまち商店街を歩いて取材を進める国吉さん
その一つの方法が、国吉さんの現地取材に同行させていただくことでした。
今回の本は、基本的には著者の国吉さんが今まで瀬戸田へ通ったなかで知り得た情報や写真をまとめているのですが、一度ゲラ(文章や写真がレイアウトされた状態の誌面見本)が出たところで…
「こういうところを補足しては?」
「もう少し、こういう情報も入れたいですね」
「こんな写真があれば、もう少しわかりやすくなるかも!」
などと話し合い、急遽、一緒に現地へと向かうことを決めました(横浜在住の国吉さんが、自家用車で、京都住まいの私をピックアップして、瀬戸田へと向かってくれたんです。なんともパワフル……!)。

▲追加で撮影した、規格外の「怪獣レモン」
瀬戸田では、国吉さんのご紹介で、さまざまな方にお会いし、現地の魅力、特に国吉さんが本当に伝えたかった部分を実際に感じることができました。
島を長年支えてきた方々から、新たな挑戦をおこなう若手農家の方までお会いするなかで、
「国吉さんと一緒だから、レモン畑をこんな奥まで案内してくださるんだろうな」
「国吉さんとの信頼関係があるからこそ、ここまでお話ししてくださるんだろうな」
と感じるシーンも数多くありました。

▲島の方が、個人所有の畑の中を案内してくださいました
そうした時間を通じて、この本では何を取り扱い、何を外すのかという取捨選択を、お互いの合意のもと進めていったのです。
さらに現地では、この10年の瀬戸田の変化も肌で感じることができました。
青い海とレモン畑が織りなす美しい景色や、伝統文化など、昔ながらの島の良さももちろん残っているのですが、世界中から観光客が集まるようになった今、若い人たちにも喜んでもらえるような、おしゃれな施設やお店がたくさん立ち並んでいて、街は活性化しているようでした。
それらの施設は、一見、「ただ、表面的な流行を追っているだけで、島が他の土地と同じように画一化してしまうのでは」と懸念を抱きそうなのですが、よくよくこの島のことを学んでみると、ただ都会の真似をして、これまでの伝統を否定しているわけではなく、若い人や世界の人により多く振り向いてもらえるキャッチーなパッケージを用意したうえで、本当に伝えたい本質の部分を密かに潜ませているのだと気付けます。
手前味噌ながら、私たちは今回の本で、その両方の良さを伝えることができたのではないかな、と感じています。

▲ジャスミンに似たレモンの花の香りを楽しめるのも、現地だからこそ
また、国吉さんは、「島の人」にフォーカスすることを初めから重要視されていました。
実は私は当初、島の人をメインに取り上げるよりも、その人がつくる「商品」や「サービス」に焦点を当て、それをつくる人はどんな人なのか……という部分は、あくまでサブ的に取り上げたほうが、島を初めて知る読者の方は、興味を持たれるのではないかと考えていました。
ここは、国吉さんともたくさん話し合ってきた部分です。
なぜなら国吉さんの本をつくるモチベーションは、魅力的な島の方々の紹介にあったからです。
最終的には、商品やサービスについても深掘りできたと思いますが、国吉さんが本当に伝えたかった、「人」の部分もしっかり深めていきました。
この部分にこだわったからこそ、表面的ではない、本質的な島の魅力を本に閉じ込めることができたと、今では確信しています。
そして、このように丁寧に制作を進めていった結果、ネットでも、新聞でも、純粋なガイドブックでもなく、書籍によるエッセイという形をとったからこそ伝わるものができたのではないかな、と個人的には考えています。

▲レモン畑での搾汁体験の様子(左)と、話題の「レモンカード」(右)
この本では、若手レモン農家さんによる絶景のレモン畑での搾汁講座や、ティファニーを辞めて農家に転身した女性がつくるレモンカード、会社員から猟師になった女性がつくるイノシシ料理、規格外レモンを使った尾道新名物など、さまざまな瀬戸田の魅力を紹介しています。
ぜひ皆さんも、この本を読んで瀬戸田に思いを馳せてみたり、実際にこの本を片手に瀬戸田へと旅したりしてみてくださいね!
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