青山裕企の写真集『少女礼賛』 二度と撮れない刹那が散りばめられた写真
- スタッフ推し本
- 写真集
- 少女礼賛
- 本
青山裕企さん撮影による写真集『少女礼賛』(発刊:青幻舎)で、気になったのが3850円という値段。
まるで辞書のような分厚さ(計512頁)の写真集は、あまり見かけない。
そして、モデルがたったひとりの「少女」で512頁の写真集は、見たことがない。
編集をしている立場から言えば、発刊しない。というか「できない」が正直なところだ。
紙質はすごくいい。装丁もきれいだ。本を手にした時の肌触りも良い。
いかにこの1冊が、著者にとって大事な一冊なのかが伝わってくる。
ゆえに、3850円という値段は決して高くはない。
写真集を読み終えた時には、特にそう感じた。
二度と撮れない刹那が散りばめらた写真
前職でいわゆるグラビア誌の編集をしていころ、
写真を撮影するにあたり、
商業として成り立つコンセプトを決めて、
ある意味創り上げた世界感で撮影していた。
だから、
青山裕企さんが撮影した写真集『少女礼賛』のような写真が撮れるカメラマンとモデルの関係が羨ましくも思う。誰かが同じモデルを起用したとしても、『少女礼賛』のような写真は撮れない。
写真でいわれがちな構図やアングルのセンス、ライティングがどうとか、
そういうことを黙らせてしまうほど、すべての写真に圧倒的な存在感がある。
つまり、青山さんと少女の距離感が作られたものではなく、ごくごく自然なのだ。
このことについては、本書の「あとがき」で語る「少女」の言葉がすべてを物語っている。
良い意味で二人の記録・記憶を覗いている感覚にもなるし、
僕たち読者と「少女」の世界にもなり得る写真集は、
まるで「少女」との思い出の写真アルバムのようだ。
ゆえに、圧倒的な生々しさ。
約500ページを超える本書に登場する被写体は「少女」ひとり。
青山氏が「少女」とカッコつきで指示するその被写体は、
芸能人ではなく名前や年齢さえも明かされない匿名の存在だと明かしている。
どこにでもいるような「少女」。
ページをめくるたびにハラハラさせられる「少女」の無邪気さ。
一枚一枚違う「少女」の表情。
そして、突然現れる「少女」のヌード。
傷や鳥肌を映し出す、嘘偽りないリアルな裸体。
挑発的な目線、意味ありげな口元。
そしてカメラに向かって付き出す赤い舌。
純粋無垢な存在だと思っていた読者を挑発し、
僕たちには想像できない欲望が「少女」の中に渦巻いている。
それらすべての写真が「少女」という記号性を確かなものにする。
明らかに見えてしまう写真家と「少女」の関係性の濃密さ。
写真家と「少女」が、お互いに想い合う様。
だからこそ撮れる”刹那”は、二度と撮れない。
ゆえに、この1冊は確かにそこにあった真実だけが映し出されている。
キラキラした写真だけが美しいわけじゃない。
写真のおもしろさが詰まった写真集だと思う。
■紹介した本■
ベストセラー写真集「スクールガール・コンプレックス」シリーズなどで知られる写真家 青山裕企が、素性の明かされていないひとりの“少女”を謎めいた関係性で撮影し続けている作品を、圧倒的なボリュームでまとめた集大成の写真集。
堀友良平[株式会社ザメディアジョン 出版編集・FLAG!web編集]
東京都出身。学研⇒ザメディアジョン。出版、SNS、冊子などの編集担当。書籍「古民家カフェ&レストラン広島」などのグルメ観光系や、「川栄李奈、酒都・西条へ」などエンタメ系なども制作。学研BOMB編集部時にグラビアの深さを知りカメラに夢中。
堀友良平の記事一覧関連記事
-
NEW観光・旅・グルメ コラム
取材NGの宿で誓ったこと 秘湯・中村旅館のページに込めた「私の使命」
「たとえ断られても、 ここだけは諦められない」 今回の『温鉄』において、 私たちがどうしても外せなかった場所があります。 それは、 三江線の代替……
2026.05.22
-
観光・旅・グルメ コラム
中四国地方の鉄路と湯けむりを綴る『温鉄』 鉄道旅ライターが伝えたかった旅
効率を求める日常から、 一歩外へ 新刊『温鉄』の企画が動き出したのは、誰もが「移動」を奪われたコロナ禍の真っ只中でした。 「大好きな温泉とローカル……
2026.05.15
-
コラム
【今日もえんぴつを片手に。】<第2回>2年目校閲者の10年目上司――「違和感」の先にあるものは?
社内に一人、“判断の基準”がいます 「生き字引」という言葉があります。 生き字引【いき-じびき】 ――経験を積み、よく物事を知っている人。先例や規則に……
2026.05.01
-
コラム
【今日もえんぴつを片手に。】<第1回>校閲の世界は、思った以上に複雑で、答えのないものでした。
「校閲」と聞いて、 あなたはどんなことを思い浮かべますか? 石原さとみが演じていたおしゃれで快活な女性を思い浮かべる人もいれば、松田龍平……
2026.04.03
