エンタメ 2019/12/19

最新作は一人ひとりの物語 『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』合同記者会見レポ

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2016年11月に公開され、累計動員数210万人、興行収入27億円を超えたアニメーション映画『この世界の片隅に』の新作、『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の片渕須直監督を迎えて合同記者会見が広島で行われました。

新作は、ベースとなった『この世界の片隅に』よりも、さらに主人公・すずの個人的な人生にフォーカスし、物語が進む中での心情の変化や、遊郭で出会ったリンとの交流を通して、より一人の人間としてのすずの姿が描かれています。

私たちと同じ普通の悩みを抱えるすず

会見で、片渕須直監督はたびたび「すずさんの心の中をのぞいてみた」という言葉を使っていました。すずは大好きな絵を描くことも後回しに、一生懸命嫁ぎ先の呉で「妻としての義務」を全うしようとします。

でも、ぼーっとした性格から、なかなかうまくいかないことが続き、自分ってここにいていい存在なのだろうか、誰かが認めてくれるのだろうかと悩みます。

そんな心情を吐露するすずについて監督は、「今の時代に生きる私たちも、自分は何者なんだろうかと、頑張って生きていく意味ってなんなんだろうかって考えますよね。すずさんもそう思っていて、そういう意味でも、私たちと等しい存在なんです」と語ったように、新作では自分の存在価値という現代の私たちと何一つ変わらない、普通のことで悩む“一人の人間”として描かれています。

戦争の虚しさやはかなさの象徴としてのリン

“さらにいくつもの”片隅として、一般的は家庭で生活するすずはもちろん、遊郭という場所で働き日陰の身として生きたリンたちにもスポットライトが当てられているのも本作の見どころ。

そんなリンを監督は「すずたちに訪れる死についてイメージさせるために現れた」と語ります。それは、トレーラーの「死んだら、心の底の秘密も何も消えて、なかったことになる。それはそれでぜいたくなことなんかも知れんよ」というリンの言葉に込められた想いとは、という質問についての答えでした。

©2019こうの史代・双葉社 / 「この世界の片隅に」製作委員会

戦争の真っ只中、豊かではないけれど平凡に生活するすずたちと、対照的な場所で働き生活をするリン。「彼女は、いろんなものが満たされず、いろんな心の中にこうであったらいいなという秘密を抱えているけれど、夢や希望を叶えられない立場にいます。だからこそ、そういうものを丸ごと抱えたまま消滅してしまえるのは幸せではないかと伝えます」と語る監督の言葉からは、すずのように一般的に普通に暮らす人々はもちろんだけど、リンのように立場上願っても叶わない、欲しくても手に入れられない人がいたという戦争の虚しさやはかなさもおおいに描かれたことが伺えます。

ほかにも監督は、「二つの映画は同じ場面もかなりありますが、新作はすずをより個人として捉えて描いているので、2016年版は映画全体のニュアンスが変わって見えるのではないでしょうか。同じ材料を使いながら、まったく違ったものを求めている実験的な映画になりました」と嬉しそうに語る姿からは、改めて映画作りを楽しむ監督の姿を垣間見ることができました。

最後に監督は、「新しい作品ができたからといって前の作品『この世界の片隅に』をなかったものにするのではなく、それぞれを違う作品として存続させ、あのときのすずさんはこんな気持ちだったんだと、二本の映画を比べながら見ていただきたいです」と、これから観る方へ向けたメッセージを口にしました。

映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』は、八丁座ほか、全国で12月20日ロードショー。

<八丁座 上映スケジュール>
https://johakyu.co.jp/schedule/month.html

<『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』 公式HP>
https://ikutsumono-katasumini.jp/

文/芝紗也加

【STORY】
誰もが誰かを想い
秘密を胸に 優しく寄り添う

昭和19年。絵を描くのが好きな18歳のすずが、広島・呉に嫁いでくる。
夫・周作やその家族に囲まれ、見知らぬ土地で暮らし始めるすずに、次第に戦争が迫ってくる。それでも、食べ物や物資が少なくなるなか、工夫をかさね日々を過ごしていた。ある日、迷い込んだ遊郭で、鈴は同世代の女性リンと出会う。いつしか互いを大切な存在に思うようになる二人。だが、ふとしたことをきっかけに、鈴は夫・秀作とリンの過去に触れてしまう。大切だから、秘める思い。そして、昭和20年の夏がやってくるーー。

<監督>
片渕須直

<原作>
こうの史代

<出演>
のん 細谷佳正 稲葉菜月 尾身美詞 小野大輔 潘めぐみ 岩井七世 牛山茂 新谷真弓 花澤香菜 澁谷天外

【配給】
東京テアトル


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