【CAFÉIZM(カフェイズム)/横川】卓上で淹れる自家焙煎コーヒーとベジメニュー 優しさに包まれる自分時間
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なんの予定もない、まっさらなウイークデイ。
仕事からも雑用からも解放される日は、自分のためだけに時間を使いたくなる。
もしも休みが取れたなら、美味しいコーヒーを飲みに行こう―
そんなことを考えながら訪れたのは、西区三篠町にある『CAFÉIZM(カフェイズム)』。
横川駅の北口側、国道54号線から一本西側に入った通り沿いにある。
この日はちょうど秋祭りの前だったのか、周囲の民家や商店にしめ縄が張られ、どことなく漂う下町情緒に心が和む。
スパイスカレー コーヒーに合わせた味わい
「CAFÉ」「ISM(主義、主張)」。
店名から察するに、結構こだわりのあるオーナーさんっぽい。
ドキドキしながら扉を開けると、「いらっしゃい」とにこやかに出迎えてくれる物腰の柔らかな男性。オーナーの泉悠壮(いずみ・ゆうそう)さんだ。
泉さん。「IZUMI」。改めて店名の由来を聞くと、泉さんが提案する「カフェイズム」という想いを合わせて『CAFÉIZM』となったよう。
アイアンがところどころに鈍く光るインダストリアル調の店内は、木をたっぷりと使っているせいか、温かみもある。しばしメニューに見入って、まずはスパイスカレー(780円)をオーダーすることにした。
運ばれてきたのは、やや黄色がかったシンプルなカレー。
メニューに書いてある「基本のソースはベジタリアン対応」の文言が何なのか気になって尋ねると、いくつかの料理はベジタリアン・フレンドリーで、肉や魚を食べないベジタリアン向けに考案しているのだとか。
カレーに関しては、タマゴ、乳製品も不使用なのでヴィーガン(完全菜食主義者)もOK。
「妻がインド好きで年に1回くらい行くんですけど、ある時1ケ月ほど滞在して戻ってきたらベジタリアンになっちゃってて。家では僕が料理担当なんで、なんとか一緒に美味しいものを食べたいなと思って、試行錯誤して納得いくベジメニューを作ったんですよ」
なるほど、隠し味は愛情ね。
なんて、どこかのCMコピーみたいなことを思いつつ、まずは一口。
トマトの酸味とココナッツミルクのまろやかさが効いた、爽やかな味わいだ。
口に含むとスパイスの香りが広がるものの、それほど刺激的ではない。
「スパイスカレーなんですけど、店のウリは自家焙煎のハンドドリップコーヒーなんで、強火でスパイスを炒るような行程は用いていないんです。店に香りが充満するのは違うかなと」
それはそうかもと納得。
ついでに食後のドリップコーヒー(480円)とベイクドチーズケーキ(480円)を注文する。
目の前でドリップ 至福の時間
注がれたコーヒーがくるのかと思いきや、用意されていたのはドリッパーがセットされたカップと挽きたての豆。ドリップコーヒーは、なんと泉さんが目の前で淹れてくれるのだそう。
テーブルの上でゆっくりと注がれるお湯を見つめながら、しばし待機。
豆が水分を吸ってふわっと膨らみ、モコモコした泡が立つ。
あたりに漂う芳醇な香りを存分に満喫しながら、生まれたばかりの液体がカップに満ちるのを静かに待つ時間は、この上なく贅沢だ。
「もう少し見ててくださいね」
その言葉と同時に再度カップをのぞきこむと、ほぼいっぱいになった液体の上を、雫となったコーヒーがいくつも転がるように放射線状に散らばった。
表面張力によるものか、ドリッパーと溜まったコーヒーの距離が近いせいかはわからないが、期せずして出合えた美しい瞬間に思わず笑顔になる。
「お口に合うといいんですが」
笑いながらそう言ってキッチンに戻る泉さんに会釈をし、カップを口に運ぶ。香りが良いのはもちろんのこと、驚くほどクリアな味。
「焙煎はフルシティロースト」と聞いていたのでわりとコク強めかな……と思っていたけれど、想像したよりもすっきりしている。軽やかな苦味と果実感の残る甘みのバランスも秀逸だ。
雑味が一切残らない理由はなんだろうと聞いてみると、仕入れた生豆を水で研ぎ、その際ハンドピックで欠点豆を丁寧に取り除いているからだそう。
その後は湯浸しして水をしっかり切った状態でダブル焙煎。
焙煎機は、アウベルクラフトの手回し式。店舗で手回しだと大変では?と泉さんに質問すると、「そうですね(笑)。でも、少量ずつ、目で見て豆の状態を確認できるのが良いんですよ」と、にっこり。
これだけ手間のかかる一杯を、わざわざテーブルで淹れてくれるなんて……と感動しながら、ベリーソースが愛らしいチーズケーキもパクリ。
こちらもベジ対応でタマゴ不使用だけれど、ちゃんとコクがある。しっとりなめらかな食感は、ややレアに近いものがあるかも。
コーヒー片手に読書 雑誌から書籍まで多彩なジャンル
そうそう、忘れちゃいけない、コーヒーのお供にはやっぱり本だよねと、店内の一角にある『古本屋 マハ本店』のコーナーをチェック。
ここに置いてある本は販売商品だけれども、店内で読書するのも可。
嬉しいサービスだなぁと感心しながら背表紙を眺めると、なかなかノンジャンルなラインナップ。
イヤミスの女王の新刊、アート小説の名手による短編集、写真集や雑誌、自己啓発本まで。
どれを読もうかな……と手に取っていると、「これもおすすめですよ」と、泉さん。渡してくれたのは、その日泉さんが私物として持っていたパラパラ漫画。
さっそくページを繰ると、目に飛び込んでくる「お父さんは愛でできている」の文字。詳細は秘すけれど、親子の愛情に心を鷲づかみにされ、図らずも涙がこみあげてきてしまった。
やばい、続きは家で読もう。帰りに本屋で同じタイトルを探してみよう。帰路の道順を頭で組み立てながら店を出ることにする。
「ごちそうさまでした」。泉さんに本を返しながら声をかけると、「またぜひどうぞ」と気取らない笑顔。
今度はラテやカプチーノでゆっくりティータイムしたいな、それともお酒とおつまみでダラダラ過ごして最後にコーヒーもいいかもしれない。
色々想像を膨らませていると、なんだか爽快な気分になっている自分にふと気付く。
どうやら忙しない日々に溜まった心の澱は、すっかり洗い流されてしまったようだ。
「ありがとう」
心の中で呟いて、そっと店を後にした。
■店主おすすめの一冊■
『いつか伝えられるなら』(絵:鉄拳 作:つたえたい、心の手紙/発刊:SB Create)
「ただの検査入院じゃけえ」。そう言って病院に向かった父がほどなくして旅立ったのは、僕がまだ20代の頃のことでした。
伝えたいことがたくさんあったのに、伝えられなかった…。
それは人生観を大きく変えるほどの出来事でした。
この本は、亡くなった大切な人へ向けて書かれた手紙をもとに作られています。
一般公募というかたちで寄せられた手紙の数々は、共感とともに悲しみでいっぱいだった僕の心を慰めてくれました。
掲載されている手紙のうちのひとつは、鉄拳さんによる温かなタッチの絵でパラパラ漫画風に仕上げています。
本を読むのが苦手な人でもすぐに読めるので大丈夫。
読めばきっと、大切な人をもっと大切にしたいと思えるはずです。
店名 | CAFÉIZM(カフェイズム) |
住所 | 広島市西区三篠町1-8-2 酒井ビル1F |
電話番号 | 082-237-1912 |
営業時間 | 10:00~21:00 |
休み | 月曜ほか不定 ※月曜は祝日の場合営業 |
SNS | Instagram Facebook |
取材・文/浅井ゆかり
写真/中野一行 堀友良平
編集/堀友良平
堀友良平[株式会社ザメディアジョンプレス 企画出版編集・FLAG!web編集長]
東京都出身。学研⇒ザメディアジョンプレス。企画出版、SNS、冊子などの編集担当。書籍「古民家カフェ&レストラン広島」などのグルメ観光系や、「川栄李奈、酒都・西条へ」などのエンタメ系なども制作。学研BOMB編集部時にグラビアの深さを知りカメラに夢中
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