ライフスタイル 2020/08/24

新しい出会い、驚きと発見 小さな書店だからできること【安芸矢口/芸備書房(谷口屋書籍雑貨店)】

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JR芸備線「安芸矢口駅」下車徒歩6分の場所にある「芸備書房(谷口屋書籍雑貨店)」。2019年1月にオープンし、特に鉄道好きに人気を博す書店だ。

なぜ鉄道好きの人たちが集まるのか。これには理由がある。

町にある本屋として

店主の小林久夫さんは、ここ「芸備書房(谷口屋書籍雑貨店)」を開店する前に島根県で民泊を営んでいた。「ここは元々、旧芸備書房があった場所です。店主と知り合ってここをゆずってもらい、改装して今に至ります」店内は今でこそ段ボールが山積みだが(それがまた個人経営の本屋らしくて好きだけど)、びっしりと棚に整頓された本と雑貨、店内で販売しているコーヒーやお茶など、ちょっとしたソフトドリンク(300円~)が飲めるカウンター席がある。コーヒーは島根県松江市にある自家焙煎コーヒー店「三上珈琲」から仕入れている豆を使用している。

店内を見回すとさまざまなジャンルの新刊から古書まで、ゆうに1時間は過ごせてしまいそうなほど目を引く本がズラリと並んでいる。聞けば倉庫の在庫を含めて約2万冊はあるという。「今、整理が追いつかなくて(笑)」と、段ボールを指さして苦笑いしながら店内を案内してくれた。

先述した「なぜ鉄道好きの人たちが集まるのか」だが、実はローカル鉄道と書籍文化の振興に寄与する情報発信&交流スペース「安芸矢口企画本所」という側面も持ち合わせているからだ。また、自身が民泊を営んでいた場所が三江線のすぐそばだったことから、鉄道、特に三江線には愛着があるという。その甲斐があってか、今でも常連客が途絶えない。

「旧芸備書房の時の店主が鉄道好きで、そのときの常連さんがいるんですよね。その方たちの楽しみを奪ってはいけないな、と。だから書店名も含めてそのまま継承して、鉄道関連の雑誌や本は新刊も豊富にそろえています」。店に入ってすぐ目の前に新刊書コーナーがある。つまり、おすすめの本や雑誌が平積みされているお店の色が出る場所でもある。そこには「JTB時刻表」はもちろん「鉄道ジャーナル」「旅と鉄道」といった雑誌から関連書籍が並ぶ。

鉄道関連本のほかに、思想、文芸、学術、美術工芸から農林水産、生活科学など、幅広いジャンルがそろう。ちなみに小林さんはノンフィクションものがお好きなようです。また古書には店主自身が所有していたものから、知人から譲り受けたものまであり、漫画も置いてある。

そして個人店ならではのサービスがユニークでおもしろい。「本を持ちこんで店内で読んでもいい」というスタイルだ。「本を楽しんでもらうスペースとしてもぜひ活用してもらいたい」と考え、持ち込み以外にもスペースをレンタルし、イベントや談話する場所としても提供しているという。「最近は、近所の子どもたちが立ち寄って本を読んで帰ったりします。中には勉強してる子もいるけど(笑)。でも、それでもすごくうれしいことです」町中にある近所の本屋として認められていると実感するようだ。

本を楽しむとは読むことだけじゃない

町中の本屋……。私が小学生の頃は、町には本屋がありふれていた。あの店はマンガが豊富だとか、あの店は店主が怖い、立ち読みを受け入れてくれる店などなど、小遣いを握りしめていろいろと歩き回った記憶が、今でも鮮明に思い出せる。
「書店管理共有マイスター」によれば、全国の書店(取次搬入している書店の登録数)はついに1万店を割ったという報告がなされている。2003年には20880店舗の登録があったかが、17年で1万近くの書店が消えている。

そんな現代において、小さな書店をオープンするのは勇気と覚悟がいると勝手に思っていたが、こうして話を聞いていると、もちろん経営は大変だが、それ以上に得るものが大きいという。「本がこの世からなくなることはないと思います。我々はやっぱり本が好きなんです。時代の流れは受け入れて、私も芸備書房(谷口屋書籍雑貨店)としてインターネット販売もしています。買い手としてはそっちのほうが便利だと思いますけど、店では思いがけない本との出会いがありますよね。私自身はお客様との出会いがあります。本を楽しむとは、読むことだけじゃないんです」そう言いながら、「谷口屋書籍雑貨店にお越しただくたびに『新しい出会い、驚きと発見』を感じていただければ」と笑顔で答えてくれた。

インタビュー後に、僕が今探している本を伝えると「それなら、これはどうですか?」と、1分ぐらいで4冊ほど持ってきて、1冊1冊を丁寧に解説してくれた。インターネットで探すよりも早い(笑)。

こうして、今日も新しい本との出会いがありました。

 

■おすすめの本■

『図説・鉄道路線はこうして生まれる』(著者:小野田滋 ほか/学研プラス)

特におもしろいのが、配線略図ですね。図は東京都心の路線になりますが、各駅にどの電車が配線されているかが分かりやすいです。マニアック的な読み方にはなりますが、都心の複雑な路線がどのように整備されているかを知ると、もし東京へ行く機会があったときは、いつもと違う景色に見えるかもしれません。さらに、レールの製造、シールド工法、鉄道連隊のことや、路線・施設・設備が完成するまでを図と写真でわかりやすく説明してあるので、電車が好きな方には特におすすめです。

 

「自壊する帝国』(著者:佐藤優/新潮社)

旧ソビエト連邦末期。旧ソ連が崩壊していく様子を目の当たりにした元在ソ連日本大使館の外交官・佐藤優が描くノンフィクションの社会科学です。国家が崩壊していくことって、こうゆうことなんだなと思わせる一冊ですね。今、コロナ禍で日本も含めて世界中が混沌としていますけど、国が滅んでいくという要因の一つとしては、相通ずる話が盛り込まれているので、ぜひ読んでみてほしいです。

 

店名 芸備書房(谷口屋書籍雑貨店)←ネット通販もこちらから
住所 広島県広島市安佐北区口田南7-13−12
営業時間 13:30~20:00 ※変更の場合あり
定休日 火・水曜
お問い合わせ先 080-3523-9165
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堀友良平

堀友良平[株式会社ザメディアジョンプレス 企画出版編集・FLAG!web編集長]

東京都出身。学研⇒ザメディアジョンプレス。企画出版、SNS、冊子などの編集担当。書籍「古民家カフェ&レストラン広島」などのグルメ観光系や、「川栄李奈、酒都・西条へ」などのエンタメ系なども制作。学研BOMB編集部時にグラビアの深さを知りカメラに夢中

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