ライフスタイル 2021/10/30

【らっこ文庫】片手に本とお酒 自分を取り戻すプチトリップへ

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紙のにおいや、手触りが好き。

昔から本に囲まれて育った私にとって、昨春小網町にオープンしたブックカフェ『りんご堂』はまさに好みの一軒だ。

詩集や写真集といったアート系の作品が多く、純文学や小説なども取りそろえる。そしてなんといってもレトロな喫茶店風の店内。

本を読みながらクリームソーダとか、至福以外の何物でもない。

そんなりんご堂の姉妹店ができたと聞き、喜び勇んでお店に向かった。

<「りんご堂」の記事はこちら>

本屋兼バー兼夜喫茶の店が位置しているのは、薬研堀。

その名も『らっこ文庫』。

キャバクラやガールズバーのネオンひしめくビルの入口に、ゆるっとふにゃっとラッコが本を読んでいる看板が出してある。

異色っちゃ異色なんだけど、逆にとってもそそられる。エレベーターの4階ボタンを押し、いざお店へ。

▲元スタンドの雰囲気を生かしながら落ち着ける空間に

出迎えてくれたのは、笑顔がチャーミングな店主の野崎あかりさん。

聞くところによると、りんご堂の店主、野崎泰弘さんの奥さまという。

「主人とは5月に付き合いだして9月に籍を入れたスピード結婚なんですよ」と、あかりさん。

のっけからめちゃくちゃ気になる話題だ。

なんでもだんなさまは詩集や短歌が、奥さまは絵本が大好きで、趣味が似ていることからすぐに意気投合したのだそう。

店の壁の一面にも絵本コーナーがあり、なかなかの充実度。

壁に飾られている本の中に、絵本が置いてある。

夜のお店に絵本?と不思議に思い、その理由をあかりさんに尋ねてみた。

▲店主のあかりさん

「もともとのコンセプトは、本×お酒。その中で絵本をどうしても置きたかったのは、私が絵本好きだから。母も私も長いこと読み聞かせのボランティアをしていて、実家には絵本専用の本棚が3つもあるくらいなんです。母が読んで聞かせてくれた絵本も、店に置いていますよ」と話す。

あかりさんは以前、高校の自由研究で読み聞かせがどうしていいのかを調べたんだそう。

すると、人間の脳は文字と絵を一度に処理することができないけれど、誰かが文字の部分を言葉にして伝えてくれることで、右脳と左脳が一度に使え発達を促してくれると分かったんだとか。

▲絵本はあかりさんの思い出が詰まったものも

「子どもの成長にはもちろんいいけれど、大人に対しての読み聞かせをしてみるのもおもしろくないですか」と、お店での企画も考えている。

確かに凝り固まった大人の脳にも、何かいい影響があるかもしれない…!

▲選書は姉妹店「りんご堂」とは違った本も

店内にはその他、ジャンルにとらわれない本がずらり。

りんご堂と似たテイストの写真集やアート本、小説、漫画などがある。

大型書店には置いていないリトルプレスものも充実しているので、本好きの人は必見だ。

▲古本はすべて50円で販売

本はいずれも購入することができ、古本も販売している。

古本の中には年代物の雑誌の付録なんかも置いてあり、色々と探してみるのも楽しい。

飲食しながら試し読みするのもOKで、自分の読みたい本を持ち込んで読書することもできる。

「本とお酒がテーマではあるけれど、楽しみ方はこれって決めてないんで、自由に過ごしてもらえたらうれしいです。本に興味がない人も、お酒が飲めない人も、もちろん大歓迎です」と、幅広い客層を迎え入れてくれる。

▲お酒はウィスキーを中心に幅広いジャンルを品ぞろえ

メニューは、お酒もノンアルコールもどちらもそろえる。

あかりさんが「一番好き」というウイスキーの品ぞろえは、他に比べて豊富(笑)。

村上春樹さんの小説『1Q84』や『ねじまき鳥クロニクル』に登場する、カティサークも置いてある。

あと、スイーツを提供しているのもちょっとうれしい。

おすすめはブリュレチーズケーキで、あかりさんの手作り。

表面を焦がしてあって、底はココア生地。

ほろ苦な感じがお酒にも合うんだとか。

あー、お酒とおやつと本があったら、お店から帰りたくなくなっちゃうね。

▲ハイボール(650円~)

▲ブリュレチーズケーキ(600円)

本好きの私としては、他にないような珍しい本がないか気になるところ。

あかりさんに聞いてみると、2冊を紹介してくれた。

 

■「らっこ文庫」おすすめの本

短編小説『するべきことはなにひとつ』(著:モノ・ホーミー/発刊:乃帆書房)

ちょっぴり怖かったり不思議だったりするお話『貝がら千話』に掲載されたものを加筆・修正した33話で構成。

浮遊感漂うお話は没入感がすごくて… そう! 長湯にぴったり! 実はこれ、オール撥水加工のお風呂向け本。その名も「長湯文庫」。こんな本があるなんてびっくり。

 

『100年後 あなたもわたしもいない日に』(著:土門蘭(文)、寺田マユミ(絵)/発刊:合同会社文鳥社)

歌集でも画集でもあるこちらの本は、トリミングがテーマ。
印象的な言葉や際立たせたいところを切り抜いてあって、仕掛け絵本に近い感じ。

言葉がぐっと心に刺さってくる。
「こういうことができるのは、紙の本の良さですよね」と、あかりさん。

ほんとに、それ! 電子書籍にイニシアチブを取られがちな昨今だけど、やっぱり紙には紙の良さがある。

▲絵本の魅力を話すあかりさん

最後にあかりさんに、本とお酒の魅力について聞いてみた。

「なんでしょう……。人って皆、宗教を持ってると思うんですよね。いろんなものに依存してるというか。その中でも、さまざまな作品の中で出合う言葉に、自分の軸を見つける場合があると思います。そして、その言葉に共感するというのは、過去の自分と向き合ってあげることだと思うんです。“あぁ、私もそう思ってた”“それが私の言いたかったことだ”って。同じ考えを持つ作品に出合って自分を認めてあげることができたら、なんかいいですよね」。

さらにお酒の魅力に関しては、「うーん、飲むと感情がより大きくなっちゃうんで、自分を解放してあげれるところかな」と、笑う。

片手に本、片手にお酒、限りなくリラックスできる『らっこ文庫』でなら、普段おざなりに扱っている自分を、ちょっと大切にできそう。

そしてそんなご褒美のようなひと時を、大切な誰かとシェアしたり、時に一人で満喫するのは、大人の嗜みともいうべきものなのかも。

 

■SHOP DATA■

店名 らっこ文庫
住所 広島市中区薬研堀3-6 第2ONOビル4F
営業時間 18:00~翌1:00
定休日 火・水・木曜
お問い合わせ先 090-8607-1447
SNS Twitter(https://twitter.com/raccobunko)

 

取材・文/浅井ゆかり

 

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堀友良平

堀友良平[株式会社ザメディアジョンプレス 企画出版編集・FLAG!web編集長]

東京都出身。学研⇒ザメディアジョンプレス。企画出版、SNS、冊子などの編集担当。書籍「古民家カフェ&レストラン広島」などのグルメ観光系や、「川栄李奈、酒都・西条へ」などのエンタメ系なども制作。学研BOMB編集部時にグラビアの深さを知りカメラに夢中

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