ライフスタイル 2020/05/15

新スタイル! 喫茶店風の本屋『りんご堂』 「町から本屋を無くしたくない」という思い【中区】

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広島市中区に、先月オープンした本屋兼カフェバー「りんご堂」。4月10日にオープンしたもののコロナ禍による緊急事態宣言を受けて、数日の営業で自粛することとなった。

そして、5月13日に営業時間を短縮し、アルコールやフードメニューの提供をしばらくは休みながら再開したということで、さっそくお店に行ってみた。

お店は「あおば園」があるビルの1階。看板が目印。

奥へ進むと、「りんご堂」のかわいらしいロゴの看板が。イラストは店主が好きだという広島出身のイラストレーター・てらおかなつみさんが描いたもの。

本を売るカフェバー

店名の「りんご堂」の由来は、椎名林檎さんのファンだから。

そう話してくれる店主・野崎泰弘さんは、いまどきの若い男性で、少しはにかみながら話してくれた。

 

生まれも育ちも広島で、10代のころはバンドマンだった経歴を持つ。21歳でバンドを辞めて会社員になったが、生活のために働いている自分に悶々としたという。そこで、10代のころに夢描いていた自分のお店を持つことを決意する。

「もともと本が好きなんです」

音楽と同じぐらい好きな本。

野崎さんは、飲食店のアルバイト経験を生かして、ブックカフェやブックバーのような飲食店を考えていたが、自分が選んだ本の販売ができたらと思い、本をメインにして料理をサブ的な扱いとするスタイルの店をイメージ。そして「りんご堂」が誕生した。

コーヒーやお酒、軽食が楽しめる昔懐かしい喫茶店風のスタイルだが、新刊書籍を販売し、古書をレンタルできるといった新しい側面も持つ。

本のセレクトについて「文庫本や話題の小説は一切置いてなくて、口コミや知り合いから聞いた本を、書店や直接作家さんに交渉して選んでいます」

というように、店内には詩集や写真集などアート系の作品を中心に、純文学や小説、美術、サブカルなどを取りそろえるほか、ジンやリトルプレスの本も置いている。

 

さらに「りんご堂」の大きな特徴が、古書をレンタルサービスしているという点。

「お店に来ていただいて読み始めても、最後まで読めない方もいらっしゃる思い、だったら貸し出して、またお店に来てもらえたほうがうれしいじゃないですか」と、いきなり経営戦略っぽいことを(笑)。

でも、最後まで気になる本に出合ってしまったら、確かに持ち帰りたくなる。他店ではまれに見ないサービスだ。

自家焙煎のこだわりコーヒー

カフェメニューは、主にドリンクが多い。ソフトドリンクはクリームソーダ(600円)やレモンスカッシュ、レモネードなど喫茶店をほうふつとさせるメニューがうれしい。

そして、本といえば個人的にはコーヒーが欲しいところ。

すると「自家焙煎でドリップコーヒー(400円)を出しています」と言うではないか! 豆からこだわる格別な一杯は、読書の質を高めてくれる。

アルコール類はクラフトビールをはじめ、日本酒やウイスキー、焼酎がラインアップ。地酒も取りそろえる。

町から本屋を無くしたくない

まだまだ25歳で若輩者ですが、と謙遜しながらも、本の魅力を話してもらった。

「いろんな読書があると思っていて、例えば小説だったり教訓だったり学びを得る読書だったり、物語に共感したりす読書だったり、いろいろあると思うんですけど、そういった懐の深さとか大きさがあって、人生の大事なタイミングで読んだことが生かされることもあるので、人生に寄り添ってくれるのが本の魅力だと思っています」

広島は現在、105年の歴史に幕を閉じた「廣文館 金座街本店」を含め、大型書店が次々と閉店していく。

そんな中で、本好きにはありがたい「りんご堂」のオープンについて、野崎さんは最後にこんなことを言っていた。

「(広島の)町で育った僕としては、町から本屋さんを無くしたくないという気持ちもあります」

社会的ビジョンを持ちながら町に貢献する25歳の一人の若者が、ここにいる。「本が好き」な若者というのが、さらにうれしかった。

 

■理想の読書スタイル■

「ワインを片手に読みながら飲んで、うとうとしてきたら寝る!」

■おすすめの本■

「美しいからだよ」(著:水沢なお/発売:思潮社)
詩は解釈が難しいものが多いですが、水沢さんの詩はいたずらに難しいだけではなく、文章を読むことによって物語が見えてくるんです。自分なりに解釈しやすくて、それが面白い。全体的に水沢さんの詩は「不穏」や「不気味」というか、「湿度が高い」と評されることもあって、不思議な世界観を堪能できて、実用書やビジネス書とは正反対の「感覚」で楽しめる一冊です。

「ことばと」(発売:書肆侃侃房)
いろんな作家さんが記事を寄せているムック本です。知る人ぞ知る作家さんが並ぶ中で、広島出身の片島麦子さんも記事を寄せてるんで、同郷としては注目してほしい作家さんです。

■SHOP DATA■

店名 本屋兼カフェバー「りんご堂」
住所 広島県広島市中区小網町1-9 おおば園 1階
営業時間 15:00~24:00(※フード、アルコールなどドリンクは19:00まで。本の販売は24:00まで)
※5月13日現在の営業時間です。営業時間や休みは変動する場合あり
定休日 月・火曜
お問い合わせ先 090-8607-1447
SNS Twitter(https://twitter.com/ringodo2020?s=09

 

photo/中野一行

 

紹介したお店はこちら


堀友良平

堀友良平[株式会社ザメディアジョンプレス 企画出版編集・FLAG!web編集長]

東京都出身。学研⇒ザメディアジョンプレス。企画出版、SNS、冊子などの編集担当。書籍「古民家カフェ&レストラン広島」などのグルメ観光系や、「川栄李奈、酒都・西条へ」などのエンタメ系なども制作。学研BOMB編集部時にグラビアの深さを知りカメラに夢中

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