「横川創荘」は若きアーティストのアトリエだった。【横川】
- アート
- 横川
横川駅から徒歩3分、横川シネマ沿いの建物の一角にある『横川創荘』。どこか懐かしく昭和レトロな雰囲気を醸す商店街にあるその場所は、祐源紘史さんという若きアーティストが設立した、作家や学生が数人でシェアするアトリエだった。
生と死を見つめる
「もともとはグラフィックデザインを専攻しようと思っていたんです」。アーティストや建築家など、数名でシェアする広いアトリエの中に、細かい骨のパーツがたくさん入ったケースが積み重ねてある奇妙な机があった。ここが祐源紘史さんの制作スペースだ。祐源さんは、将来は広告デザインをやりたいと入学した広島市立大学で、イギリスの現代美術家、デミアン・ハーストの影響から現代美術というジャンルに興味を持ち、「生と死」をテーマに作品作りに励むようになる。
代表作はフライドチキンを食べた後の骨を再構成し、人間の骨にみたてた作品『Please eat me』を含むシリーズ。大量生産や大量消費の問題を、ユーモラスな表現で問いかけた作品は、国内外の企画展で展示され話題となった。
「この作品は〝チキンを食べる〞ということから制作がスタートしています。食べ終わった骨は丁寧に洗浄し、人間の形に構成し直すのですが、スネならスネ、アバラならアバラと、鳥の骨格を、そのまま人型の骨格として使って違和感がなく人型に仕上がるんですよ」と、細かいパーツを丁寧にピンセットで摘みながら教えてくれた。
現在は骨を使ったシリーズを制作しながら、駄菓子のパッケージを繊細にカットした平面作品『ダイアモンド ダスト』という作品制作にも取り組んでいる。「立体と平面なので、見た目には違う作風に感じるかもしれませんが、作品の構造はどちらも同じ。捨てられるものや、食べ残ったものなどを再構成することで、マイナスからプラスのイメージに転換できるような表現を意識しています。重くて普遍なものをテーマにしていますが、伝えるときは軽いタッチにすることを心がけています」と、幅広い人の心に作品のメッセージを届ける。
大学時代、長崎に滞在しながら制作を行っていた時のこと、庭に猫の死骸を見つけた祐源さんは、猫が自然へ還っていく過程を追いながら、生命循環の美しさに心を打たれたという。
横川に支えられながら作家活動
「今の世の中っていろいろな物事が分断されていて、全体の繋がりが見えにくいと感じます。だけど、生き物が死んで、そこから新しい生き物が生まれる過程を見たことが、生命の繋がりについて考えるきっかけとなり、今の作風に至っています」と、当時のことを振り返る。
そんな祐源さんは、2012年に同世代の仲間と共に、今のアトリエである『横川創荘』を設立した後、アートプロジェクトを企画、運営も行った。今でも横川で創作活動を行っている。
活動の幅を広げる祐源さんの夢は美術史に名前を残すこと。「日本だけでなく世界のマーケットで通用するアーティストになりたい」と、高い目標を掲げ、これから国内外問わず大きな展覧会にどんどん挑戦していきたいと意気込む。
堀友良平[株式会社ザメディアジョンプレス 企画出版編集・FLAG!web編集長]
東京都出身。学研⇒ザメディアジョンプレス。企画出版、SNS、冊子などの編集担当。書籍「古民家カフェ&レストラン広島」などのグルメ観光系や、「川栄李奈、酒都・西条へ」などのエンタメ系なども制作。学研BOMB編集部時にグラビアの深さを知りカメラに夢中
堀友良平の記事一覧関連記事
-
ライフスタイル
【まとめ記事】五月病に効果的なアーユルヴェーダ式5日間腸活とは? 加藤ジェシカさんが解説
『理想の自分に近づく「アーユルヴェーダ式5日間腸活」』著者・加藤ジェシカさんに、「アーユルヴェーダ式5日間腸活」の概念に基づいて、新生活の悩みや五月病に対して加……
2024.05.18
-
ライフスタイル
【動画】五月病に効果的 アーユルヴェーダ式5日間腸活
新刊『理想の自分に近づく「アーユルヴェーダ式5日間腸活」』著者の加藤ジェシカさんに、お話を伺いました。 内容は2つ。 ①アーユルヴェーダ式5日間腸活……
2024.05.07
-
ライフスタイル
【動画】GWから始めたい! 簡単腸活で夢を叶える準備
新刊『理想の自分に近づく「アーユルヴェーダ式5日間腸活」』著者の加藤ジェシカさんに、お話を伺いました。 内容は2つ。 ①アーユルヴェーダ式5日間腸活……
2024.05.01
-
新刊 ライフスタイル
食事前から始める腸活で理想の自分に! 夢を実現するための5日間
インドとアメリカでアーユルヴェーダを学び、現在はハワイ、インド、タイそして日本を拠点にスクールなどを開催しているアーユルヴェーダプラクティショナーである著者の一……
2024.03.26