観光・旅 コラム 2021/12/28

温鉄!! ローカル線に乗って温泉に行こう! 第一回 そうづきょう温泉&錦川清流線(山口県)【前編】錦川清流線で絶景車窓を楽しむ

タグ:
  • そうづ峡
  • 山口県
  • 温泉
  • 温泉旅
  • 鉄道

温泉をこよなく愛する温泉ソムリエ&フォトグラファー中野一行と、ローカル線に乗るのが大好きな鉄旅ライター・やまもとのりこの‟のんびり珍道中”。3回に分けて紹介します。

ローカル線とは地方を走る鉄道のこと。

ガタンゴトン、列車の窓からぼーっと眺める

青い空。

海。

緑の山。

川。

田園風景。

そんな旅がいい。

ローカル線の乗り鉄をして、着いたところが温泉ならもっといい!

そして、温泉といえば中野カメラマン。

「今度この路線に乗るんですよ〜」「それならこの温泉ですね!!!」

普段から何も聞かなくても温泉の話が湯水のように溢れ出てくる中野カメラマンと一緒に「温鉄」の旅に行ってみた。

第一回 そうづきょう温泉&錦川清流線(山口県)
【前編】錦川清流線で絶景車窓を楽しむ

第三セクターの錦川鉄道・錦川清流線は、山口県岩国市の川西駅から錦町駅に至る全12駅、全長32.7kmの鉄道路線だ。

その大半を錦川に沿って走る。

錦川は、山口県一の大河で、下流には有名な錦帯橋が架かる。

錦川清流線はすべての列車がJR山陽本線岩国駅に乗り入れており、同駅から発着する。

岩国駅を出発した列車は、車窓から自然豊かな景色を眺めながら1時間あまりで終点の錦町駅に着く。

 

「錦川清流線といえば、そうづきょう温泉ですよー!」と中野カメラマン。

錦町駅からバスで15分ほど。

錦川の支川・宇佐川沿いにある、静かな温泉地だ。

車を運転すれば広島市から一時間半くらいで着く。

だが、今日は「温鉄」である。

ローカル線に乗って列車に揺られて、ぼーっと景色を眺めながら行きたいのだ。

車でぼーっとしてたら危険である。

きっぷはJRの駅から錦町駅まで通しで買える。

ICOCAは錦川清流線では使えないので、山陽本線から乗車する際はICOCAを使わずにきっぷを買うようにしよう。

今日の旅は山陽本線岩国駅からスタート。

錦川清流線は0番ホームからの発車だ。

切り欠きになっているところが錦川清流線が発着する0番ホーム。

切り欠きの手前の1番ホームはJR岩徳線だ。

岩徳線は岩国と徳山を結ぶ路線で、錦川清流線同様、ディーゼル列車(気動車)が走る。

「おおっ!!0番と1番のホームだけ、電線がないですねー!!」驚く中野カメラマン。

そう、山陽本線のように電車が走るレールの上には電線が通っているが、錦川清流線や岩徳線はディーゼルエンジンだから電線は不要なのだ。

エンジン音を響かせて1両編成の列車が入線して来た。

今日はイエローのボディの「きらめき号」。

清流沿いに群舞するホタルのイラストがあしらわれている。

錦川鉄道にはこのほか、ブルーの「せせらぎ号」・ピンクの「ひだまり号」・グリーンの「こもれび号」がある。

どの車両に乗れるか、毎回楽しみなのだ。

 

ローカル線にはこのような1両編成の列車は珍しくない。

都市部で何両も連なった長い編成の電車しか見たことがない人に「バスみたいでかわいい!!」と驚かれたことがある。

実はローカル線の車内には、バスと同じような整理券や運賃箱、料金表があることが多い。

無人駅では運賃箱に整理券と一緒に料金を入れて下車するのだ。

岩国駅を出て2駅目の川西駅。

ホーム上に錦川清流線の0キロポストが立つ。

キロポストとは路線の起点からの距離を示す標識のこと。

さあ、ここからが錦川清流線のスタートだ。

川西駅を出発し、トンネルを抜けたところで線路が二股に分かれる。

ここがJR岩徳線との分岐点だ。

我々が乗るきらめき号は右へ進み、岩徳線は左へと分かれて行った。

雲ひとつない晴天の下、ゆったりと流れる錦川。

水が透明に透き通って、車窓からでも川底の小石が見える。

錦川鉄道の車両はこの景色を楽しめるように、窓が大きくとってある。

座席は転換クロスシートで方向を変えられるので、ボックス席のように対面式にすることも可能。

窓辺に折りたたみ式の小テーブルもあり飲み物を置くのにちょうどいい。

下り4便、上り3便の計7便は「観光徐行対応※」で、景色のいいところで速度を落としてくれるので、しっかりと車窓を楽しむことができる。

※下り:岩国8:28、9:53、11:10、14:20発/上り:錦町12:31、14:19、16:02発

錦川清流線は単線だ。北河内駅は路線内で唯一、上りと下りの列車の行き違いができる駅だ。

構内には錦川清流線の前身となった旧岩日線開業から50周年の記念碑や転轍機(列車のポイントを切り替える装置)がある。

北河内駅を出てしばらくすると進行方向左手に「清流の滝」が見える。

列車がスピードを落とすと、窓のすぐ前に細い滝の筋が見える。

ちょうど雨が少ない時期で水量こそ少なめだが、立派な五段滝だ。

次の椋野駅を出たところにも「かじかの滝」という滝があった。

次の南桑駅は錦川を背景に紅葉が散り始めだった。

春は桜の名所で、周辺はきれいな声でなくカジカガエルの生息地らしい。

さらに進むと、錦川の眺望が開けた絶景ポイントにある「清流みはらし駅」。

イベント列車のみ停車・下車できるイベント専用駅で、普通の定期運行列車は停車しない。

しかも駅までの道路がなく列車でしか到達できない“秘境駅”なのだ。

「ここが清流みはらし駅か〜!降りてみたいな〜」いつかまたイベント列車に申し込んで、清流みはらし駅からの眺めを存分に楽しんでみたい!

次の根笠駅を出て少し行くと錦川に架かる潜水橋が見えた。

潜水橋は沈下橋ともいわれ、川が増水したときは水面下に沈むよう、低い位置に架けられている。

流木などが引っかからないよう欄干がないのが特徴だ。

そうするうちに終点、錦町駅到着。

ホームに、昔使われていた鉄道用の腕木式信号機が展示されている。

現在使われているライト式の信号機と違い、人の手でレバーを使って腕木を上げ下げしていたものだ。

構内の留置線には今乗ってきた「きらめき号」以外の車両が停車している。

車庫の横に、イベント列車として使われるキハ40-1009が休んでいる。

JR東日本から譲渡を受けたもので、昭和57年製の国鉄型車両だ。

栃木県のJR烏山線で使われていたもので、JR東日本のロゴも生かしてある。

高架ホームから駅舎に降りる。電光掲示板ではない看板ぶら下げ式の発車標がいい味出してる。

さ〜て、錦町駅に来たからには鉄印をもらわないと〜! 鉄印とは、御朱印の鉄道版で、日本全国の第三セクター鉄道40社で集めることができる。

窓口で鉄印帳(2,200円)を購入して、錦川鉄道の鉄印を記帳してもらう。

今日は追加で10〜12月限定のニシキー&岸根栗のスタンプも押してもらった。

スタンプは3ヶ月ごとに季節によって変わる。

ニシキーとは錦川鉄道のマスコットキャラクターで、売店でぬいぐるみキーホルダーなども販売している。

いったん駅舎の外に出てから外階段を昇り、駅舎2階の「観光・鉄道資料館」を見学する。

「岩日線と錦川清流線のあゆみ」と題して、錦川清流線がかつて国鉄・岩日線だった時代や、錦川鉄道として開業したときの写真が展示されている。

「わ〜古い写真〜!ん?ワタシが生まれた年だあ!!(汗)」

精巧な鉄道模型のジオラマも展示されている。

駅構内にある「キッチンぱどる」という飲食店で手づくりのオリジナルスパイスカレーの昼食を頂いてから、駅前のバス停へ。

岩国市生活交通バス「深谷峡温泉行き」に乗車してそうづきょう温泉に向かった。

 

【中編】錦パレスでワーケーション&焚き火体験 へ続く

 

取材・文/やまもとのりこ
写真/中野一行

 

■温泉と鉄旅を楽しめる関連本■

『ローカル線の旅ガイドブック~愛しの三江線~』(写真右)
著者:やまもとのりこ
発売:2016年12月/ザメディアジョン

中国地方のローカル線の乗り鉄旅に便利なハンディサイズのガイドブックです。

山陰・山陽エリアのローカル鉄道のうち、平成30(2018)年4月に廃線した三江線の情報は貴重。

現在でも重宝したい芸備線・木次線・山陰本線・錦川清流線・一畑電車の6路線の情報を掲載。

持ち運びやすいハンディサイズです。

著者はローカル線鉄旅ライターのやまもとのりこ。

彼女が実際に体験した沿線の見どころ、グルメ、温泉、宿泊を徒歩圏内を中心に紹介。

ただ乗るだけじゃない、“もっと楽しむ” 乗り鉄旅のプランが広がります。

他の路線やバス・タクシーへの乗り継ぎを紹介する乗り継ぎマップ&インフォメーションページも便利。

緑の山々、清らかな川、青い海……三江線をはじめとする中国地方のローカル鉄道を撮り続ける山岡亮治氏ほか、写真愛好家による四季折々の美しいローカル鉄道写真も多数掲載しています。

『温泉ソムリエ・中野一行 厳選 中国・四国かけ流し温泉ガイド&メモ』(写真左)
著者:中野一行
発売:2018年12月/ザメディアジョン

数々の雑誌やメディアの制作にたずさわり、広島を拠点に活躍するフォトグラファー・中野一行。

彼のもう一つの顔は、全国400箇所以上の温泉に入り、中四国の温泉の魅力を知り尽くす温泉ファン。

「温泉ソムリエアンバサダー」をはじめ「温泉入浴指導員」の資格を保持し、「湯原温泉指南役」「別府八湯温泉道・名人」に認定されている。

その中野一行が【厳選】した、『中国・四国地方のかけ流し温泉』のみを紹介するガイドブック。

全62箇所の温泉は、どれも筆舌しがたい最高の温泉ばかり!

中野自身が入って撮って書いた、まさに温泉好きによる温泉好きのための一冊となっています。

 


やまもとのりこ

やまもとのりこ[ローカル線鉄旅ライター]

ローカル線に乗って旅をするのが大好きなライター。そんな仲間を増やすべく、ローカル線沿線の観光ガイド本を手がけている。著書「中国地方ローカル線の旅ガイドブック」「ローカル線で行こう!鉄旅ガイド」HPは https://writer-norikoyamamoto.jimdofree.com

やまもとのりこの記事一覧

中野一行

中野一行[フリーランスフォトグラファー/温泉ソムリエ]

宮城県出身、広島市在住。札幌の写真学校卒業後、東京のスタジオで修行。広島のスタジオで勤務後に2001年からフリーランス。主に雑誌・書籍・広告・Web等の様々な撮影を担当する。飲食店や商業施設の撮影は現在で数千件を超える。また日本で数十人しかいない「2つ星 温泉ソムリエ」でもあり温泉撮影のスペシャリスト。HPは(https://onsen-photographer.amebaownd.com)

中野一行の記事一覧

関連記事

トップに戻る