
パン屋日記 #1 お客様という神様
- パン屋日記
町のパン屋さんで働くフワフワの日々……を想像してパン屋で働き始めた筆者が、味わい深い同僚やとんでもないお客さまとくり広げる必ずしもフワフワではない日々の記録です。
人のやさしさや仕事の本質、心に残る一言から、「かんべんしてくれよ」と思うようなできごとまで。自分や自分の身近な人のことを思い出して、ニヤッとしたりじんわりしたりしていただけたら、これ以上の幸せはありません。
#1 お客様という神様
無茶なお客さまなんて毎日来ます。
その度に心から「辞めたいなあ」と思います。
「ちょっと細かいのいいですか」と言って
代金の852円を
全て5円玉で払うのなんて、序の口です。
併設のカフェレストランで
「ニャー」
という鳴き声が聞こえてきました。
店内にくまなく目を走らせますが、
ケージらしきものが見当たりません。
カフェスタッフの女の子が、
渋い顔をしてこちらにやってきました。
『お客さまが、店内にネコを持ち込まれています』
「あ、やっぱり? でも無かったよね、ケージ」
『はい、それが』
女の子は、ぐったりと答えました。
『生きたネコを、ハンドバッグの中に入れておられます』
「ニャ~」
ここまでくると、
ヒト科ヒト族の行動とはとても思えないので、
きっとこの方々は、
お客様のふりをした神様なのだと
思うことにしました。
日を同じくして、事件は起きました。
パン屋でパンを購入したお客様が、
レストランでお食事を召し上がっていたのですが、
ランチサービスに付帯している
「おかわり自由」の食事パンを、
さっき買ったパンのレジ袋に、際限なく詰めています。
ほぼ、窃盗です。
そして、何がどうこうより、
めちゃくちゃ透けています。
色がついているとはいえ、
レジ袋に直に入れたパンが、
めちゃくちゃはっきりと、透けています。
声をかけざるを得ませんが、
いったいどうかけていいものか分かりません。
とりあえず、
「お客さま、めちゃくちゃ透けております」と、
言いたかったです。
最後の事件は、レジで起きました。
「すいません、ちょっと……」と、
神様が切り出します。
そこに続くのは「細かいんですけど」の5円玉攻撃か、
はたまた「大きいんですけど」のどーんと一万円攻撃か。
もう何が起きても驚かないわよ、と
シュッとした感じで立っていると
「すみません、ちょっと……濡れてるんですけど」
そう言って、
びしょびしょの千円札を出されました。
「これ以外、涙を拭くものが無かったんです」という理由以外は、
申し訳ありませんが、いっさい受け付けられません。
とりあえず、
一刻も早く辞めたいです。
今日のパン「クロワッサン」

フランス語で三日月を意味し、形状が名前の由来となっている。あまり普及していないが、日本語で「三日月パン」と呼ばれる場合もある。
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