【重版】話題の書籍『万引きGメンの憂鬱』著者に聞いた「万引きは身近な社会問題。だからこそ実態を知ってほしい」
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お店が抱える「不明ロス」という売上損失があります。
店頭での売上額、廃棄や破損などのロスを差し引いても、実在庫と理論在庫が合わない原因不明のロス金額を指す「不明ロス」という言葉は、SDGsが推奨される今日にあって、新聞やニュースで聞いたことがある人は多いかもしれません。
その「不明ロス」の内訳には、万引きを含む「不正ロス」というものが含まれているのですが、2021年の1年間、不正ロスが約8割というデータがはじき出されました。
つまりお店が抱える不明ロスでの損失のほとんどが、万引きによるものだということです。
年々増加傾向にある万引きによる被害。
今、現場では何が起きているのか。
そして、万引きはなくせるのか。
今回、書籍『万引きGメンの憂鬱』(11月22日発売)編集者が著者の日南休実さんをお迎えして、本の内容紹介を交えながら改めて「万引き」の実態を聞いてみました。
万引きの実態を知ることが大事
編集者(以下、編)「本書は、万引きの実態を知ってもらうことを軸に、万引きGメンの方々にお話を聞いたり、日南休さんの万引き対策に対する考えや思いを綴りながら、万引き対策解決への糸口を模索していくという1冊になりました」
日南休さん「万引きという事件、犯罪の背景を誰もつかめていないところで、どのようにしたらその解決方法に近づけるのかという悶々とした思いがあったんです。それで何か新しい方法で解決の糸口を見いだせないかと勉強して、SMD(セキュリティ・マーチャン・ダイジング=セキュリティーをキーワードにお店作りをする)という方法にたどり着いたわけです」
編「SMDについては後ほどお話を聞きますが、今回本書のメインともいえる『万引きGメンの事件簿』の章では、実にたくさんの事件エピソードをGメンの方々がお話してくださいました。僕の感想は、総じて『万引きは身近な社会の闇』だと感じました」
日南休さん「そうですね。皆さんの生活範囲の中で起きていることですし、いろんな不都合がありますので、それを意識いていただければ、普段通っているお店や地域の人との接し方がまた変わってくると思います」
編「知っていると知っていないとでは、だいぶ変わってきますね」
日南休さん「特に万引きGメンたちの実態を知ることで、警察に対しての見方も変わってくるでしょうし、お店がどういうふうに対応するとか、私たち消費者としてどうしたらいいのかというのもわかってきます」
編「万引きGメンたちの活躍で多くのお店は万引きから守られていますけど、実は万引きGメンたちができることは限られていますよね」
日南休さん「いちばんやってはいけないのが誤認逮捕です。そのためにたくさんの縛りがあって、その中で自分たちの経験を駆使して活動していますね」
編「日々のデータを基に万引き犯を確保するGメンもいれば、万引きする人のオーラが見えるといったGメンがいることにも驚きました。そんなこと実際にあるんですね」
日南休さん「オーラが見えるというのは私もびっくりしましたけど、その人はこれまでに一度も誤認がないという結果ですからね」
編「いろんなGメンがいれば、万引きする人にもさまざまなタイプの人がいます」
日南休さん「外国人グループでの集団万引きも含めて、万引きの手口がより悪質で巧妙になってきています。それから、映画でも一時期話題になりましたが、家族での万引きもありますし、高齢の方もいれば学生さんもいたりと、いろんな人が万引きという行為に手を染めていますね」
編「中にはGメンに危害を加える人もいたり……本書ではたくさんの事件を例に挙げていますので、ぜひ読んで実態を知ってもらいたいです」
日南休さん「今回挙げた事件のエピソードは、ほんの一部です。実はもう毎日いろんな事件があって、Gメンたちの万引き犯の捕まえ方もさまざまです。それから、Gメンたちはいろいろな思いを持って動いています」
編「皆さん口をそろえて『どうしても悪を許せない』『放っておけない』といった正義感が最終的に勝ると言っていましたね。それにしては制約が多くて権限が少ないです……リスクが高すぎますよね。今回取材を通して万引きGメンたちが気の毒にすら感じました」
日南休さん「もどかしい場面はたくさんあると思います。どうしても正義感が最終的にはないと続かない。ただ、正義感だけではあまりにもGメンたちの負担が大きすぎます。だからこそ万引き対策はトータルで更新していくべきなんです」
編「SMDという考え方ですね」
「万引き」をトータルに考える
日南休さん「5年ぐらい前からSMDを構築しているんですが、ここ数年で状況が変わっていまして、防犯カメラ、顔認証AIが本当に進化しました。2020年のときには『この程度の機能か……』って思っていたんです。でも急激に進化してきて、新しい防犯という形が見えてきているんです」
編「セルフレジも、その流れの一つですよね」
日南休さん「ただ、最終的には人なんですよね。人の目が絶対的に必要なんです。なぜかというと、やっぱり最終的に確保するのは人なのですから」
編「進化していくシステムを補助的に使うことで、Gメンの負担が少しでも減らしていければ良いということですか」
日南休さん「どうしてもシステムを使いこなすのが難しかったりするんですよね。結果Gメンばかりに頼ってしまう。そうではなくて、システムを使える人、現場に立つGメン、日ごろから万引きに対する知識をアップデートしている店長や店員さん……それぞれが立場や役割を理解することで、店舗が一体となって万引き対策に取り組んでいくことがとても大事だということです」
編「万引きする人にも、さまざまなバックボーンがあって。万引きしてしまう理由には、社会的な環境がすごく影響していますね」
日南休さん「万引きは一つの事例であって、いじめがあったりDVがあったり、あるいはストレスや貧困があったり……万引きに走ってしまった理由はさまざまです。その逆もあります。万引きを放置していると、派生してさまざまな犯罪が生まれます。私はこれを『負の連鎖』と呼んでいます。それを加味すると、万引き対策は防犯カメラや万引きGメンだけで減らせるものではないんです。その場の抑止にはなるかもしれないけど、根本的なところはもっと違うところにあるんですよね」
編「一般的に、万引きGメンがしっかりと犯人を捕まえれば万引きはなくなるんじゃないの? 警察が動いているんじゃないの? お店が防犯してれば大丈夫でしょ、と思われてしまうことがほんとんどだと思います。僕もそう思っていました。でも、そんな簡単なことじゃないということなんですよね」
日南休さん「SMDは『トータルで万引きを防止するシステムの構築』という考え方となります。つまり、万引きに対する意識が高い店舗、防犯システムのメーカー、警察、そして地域住民など、「万引きゼロ」を実現するために必要なのはバラバラの方向性を一つにまとめ、各店舗に最適なセキュリティ対策をトータルで考えるという視点です」
編「一人一人の意識が本当に大事ですね」
日南休さん「万引きの実態や万引きを取り巻く環境などを知っていただければと願いながら書かせていただきました。本書をきっかけに、一人でも多くの人が万引きに対して意識していただけるとうれしいです」
【著者プロフィール】
ひなやすみ・みのる/広島市に生まれる。セキュリティコンサルタント、ロス対策士。1984年、株式会社NICCOの前身日弘商事有限会社を設立。店舗清掃やビルメンテナンス事業を行っていたが、施設警備や保安業務に進出したことを機に万引き犯罪に対峙。そこから店舗の防犯対策やロス対策の研究を進め、独自の防犯システムである「セキュリティマーチャンダイジング(SMD)※」を完成させる。現在、株式会社NICCO取締役会長を務める。
※「セキュリティマーチャンダイジング(SMD)」は株式会社NICCOの登録商標。
タイトル | 万引きGメンの憂鬱 |
著者 | 日南休 実 |
価格 | 1,650円(本体1,500円+税10%) |
体裁 | 四六判縦/二色/本編208頁 |
発売 | ザメディアジョン |
Amazon購入先 | https://amzn.asia/d/ccCkAOg |
楽天ブックス | https://books.rakuten.co.jp/rb/17304661/?l-id=search-c-item-img-01 |
堀友良平[株式会社ザメディアジョンプレス 企画出版編集・FLAG!web編集長]
東京都出身。学研⇒ザメディアジョンプレス。企画出版、SNS、冊子などの編集担当。書籍「古民家カフェ&レストラン広島」などのグルメ観光系や、「川栄李奈、酒都・西条へ」などのエンタメ系なども制作。学研BOMB編集部時にグラビアの深さを知りカメラに夢中
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