コラム 2022/02/04

地球のためになる行動で子どもたちの未来を【アジアンドキュメンタリーズ】経営者のチョードリー・サマールさんが『森林伐採 -オリンピックのために-』を語る

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アジアの優れたドキュメンタリー映像を配信する「アジアンドキュメンタリーズ」。

戦争、貧困、環境、人権など、アジアの社会問題に鋭く切り込んだラインナップが特徴だ。

その作品の魅力を発信するべく実現した、FLAG!とのコラボレーション企画「映像と本で知るアジアの現実」第11弾。

今回は広島で美容サロンやレストランを経営するナマステ・インディアの社長、チョードリー・サマールさんが『森林伐採 -オリンピックのために-』を視聴。

自然環境と日本の社会について語ってもらった。

森林伐採 -オリンピックのために-

【作品内容】
「持続可能性の追求」を掲げて開催した2020年の東京五輪。
中でも木材については、持続可能なものを調達することと、伐採地の先住民族への配慮も公約としていた。
だが関係者は木材の調達地すら知らなかった。

インドネシアのボルネオ島は、アマゾン川流域と並ぶ、巨大な森林地帯。
この森を守ってきた先住民族は、土地を略奪され木々を切られ、生きる糧を失いつつある。
政府は業者に許可を与え、森をパーム油農園へと変え、所有権も業者に移った。
先住民たちは伐採された森の木を追って川を下り、流通経路をたどる。
「持続可能性」を掲げることを免罪符に、旧来のビジネスを繰り返す企業を告発する社会派のドキュメンタリーだ。

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月額990円(税込)で全作品見放題 / 作品ごとの視聴は495円(税込)
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自然が破壊されることへの危機感

▲インド・デリー出身のチョードリー・サマールさん

――なぜこの作品を視聴しようと思ったのですか?

いま、世界中でどんどん自然が破壊されています。

しかし日本で使われる木材が、海外から輸入されていることを知らない日本人が多いと思います。

建築に木が必要だということは分かるのですが、自然がなくなっていることでさまざまな問題が起きているのではないでしょうか。

――サマールさん自身も環境への関心が強いのですね。

広島で生活していると、自然をとても身近に感じます。

山も海も近く、畑もある。

私の実家も農業なのですが、インドでも自然破壊が問題になっています。

――作品の中でも大規模な森林伐採が行われていましたね。

昔からそこに住んでいる人たち、森の所有者は、森に「神」「聖なるもの」を感じ取っています。

その人たちが先祖から受け継いだもの、神様から預かっているものを、業者が勝手に伐採している。

神の力を感じるものや、命あるものが知らないうちに奪われてしまうんです。

彼らの苦しみを思うと、涙が出てきます。

私たちの周りではそこまで大きな変化はありませんが、団地や道路などの開発で、山や川、海が変化していくことがあります。

――私たちが家を建てることも自然の一部をもらっているのですね。

山を切り開いて家を建てるということは、それだけ自然がなくなっているということ。

開発が原因で災害が増えているのではないでしょうか。

広島でも西日本豪雨災害でたくさんの人が亡くなっています。

森が少なくなり、温暖化で氷が溶けています。

新型コロナウイルス感染症のまん延も、地球環境の変化が関係しているのかもしれません。

「持続可能」と相反する資本家のビジネス

――作品では日本の企業名も出てきました。「持続可能」とは何なのかを考えさせられます。

この映画を観るまで、こんなに大規模な森林伐採が起きているとは知りませんでした。

最低でも刈り取った木と同じ数の木を植えることが法律で決まっていても、守られていません。

逆に、商売のためにまったく違う種類の木を植えていました。

――サマールさんのように自然由来の製品を使う人もいれば、環境を破壊してまでビジネスを続ける企業もあります。

ヘナという植物は切ってもまた生えてきます。

私たちは常に再生したものを使っているのです。

ケミカルなものは何も入っていないので、肌にもいい。

自然の物は地に返ります。

ところが薬品は下水に流しても消えることがありません。

水が汚れ、海が汚れ、やがて魚が汚染されます。

自然と共に生きている先住民の所へ資本家が入り込み、ビジネスとしていろいろなものを奪い取っていく場面は胸が締めつけられます。

子どもの世代に豊かな自然を残すために

――この作品から学べることはどんなことでしょうか。

大切なのは、そこでどんな手当てをするかでしょう。

日本ではレジ袋が有料化されました。

わずか3円、5円の負担を求めるだけで、ほとんどの人が袋を使わず、マイバッグを持つようになりました。

これはすばらしいことです。

懐が痛めばもらわないのに、無料なら「もう一枚」と必要がなくてももらっていました。

地球のためにいろいろと行動していけば、急には変わらなくても長い目で見れば大きな変化になります。

この映画を子どもたちに見せたいと思いました。

子どもたちの世代が理解すれば、世界が変わると思います。

――どの場面が一番好きですか?

森の人たちが、先祖から教わった道を行く場面。

誰も足を踏み入れられないような森の奥でも、先祖の知恵と森の恵みを使って生きています。

私たちは今、マスクをして息苦しい生活をしていますが、彼らは自然の中で自然のままで暮らしていました。

日本の良いところを思い出してほしい

――私たちの暮らしは、この数年で大きく変わりました。

日本が日本らしくなくなりました。

今の日本は何もかもが安いです。

私が初めて来日した17年前と比べると驚きます。

日本は技術があって、良いものは高いのが当たり前でした。

今は安い物ばかり輸入しています。

安物が増え、必要ない物まで買っている。

技術を生かした製品は長く使えるはずなのに、大切に使おうとしないで、捨てて安い物に買い替えています。

壊れたら直して使うのではなく、捨てて買い替える。

そのせいで、物があふれています。

本通の店頭でパジャマが500円で売られていました。

信じられません。

安物を買っても、すぐだめになってゴミになる。

その繰り返しが環境破壊や自然災害を招いているのではないでしょうか。

今地球で起きていることの原因が目の前にあるんです。

インドでは父から、物を大切にするように教わりました。

日本人も物を大切に、相手を思いやるという民族です。

ものすごい技術も持っています。

安い物を入れて自国の企業を苦しめるなんて、もったいない。

買ってくるのではなく、こちらから良い物を売るように変わってほしいですね。

 

チョードリー・サマール
1980年生まれ。インド・デリー出身。2005年に観光で初来日。日本に魅了され、2009年に再来日し、広島で美容事業を立ち上げる。現在、アーユルヴェーダやヘナトリートメントを中心に美容と健康を追求するサロン「ナマステ・インディア」の他、インド料理レストラン「カナック「シャンティシャンティ」を経営。

 

■今回見たドキュメンタリー映画■
『森林伐採 -オリンピックのために-』
アジアンドキュメンタリーズにて配信中


『世界で一番ゴッホを描いた男』
2021年製作/作品時間52分
撮影地:インドネシア、日本
製作国:ドイツ

動画配信サービス「アジアンドキュメンタリーズ」
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ドキュメンタリーの視聴はクレジットカード決済で、いつでもすぐに視聴できます。

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アジアンドキュメンタリーズとは

株式会社アジアンドキュメンタリーズは、優れたアジアのドキュメンタリーを世界へ配信し、アジアでドキュメンタリー制作者ネットワークの構築をめざす日本の新しい映像配信会社です。配信するコンテンツは、アジア各国で作られたドキュメンタリー映画を中心に、当社オリジナルのコンテンツもラインナップに加えていきます。

テレビでは放送されない、タブーに切り込む作品の数々。

テレビは人々が信頼を寄せる巨大な映像メディアですが、そこには大きなタブーも存在します。当然のことかもしれませんが、広告主や視聴率に悪い影響をもたらすもの、特定の業界から強い反発が予想されるような自らの立場を危うくするテーマをなかなか取り扱いません。しかし私たちは小さな市民メディアとして、テレビが取り上げないドキュメンタリー作品こそ大切にしたいと考えています。

「衝撃」「感動」「覚醒」… 優れたドキュメンタリーがあなたを揺さぶる。
優れたドキュメンタリーは、あなたに驚くほどの衝撃を与えることでしょう。それは今までの人生で築き上げられた価値観が壊れてしまうこともあるほどのものです。また作品によっては深い感動や共感を抱くこともあるでしょう。それが激しい怒りや悲しみ、絶望かもしれません。しかし、私たちが一つのドキュメンタリーと向き合うことで、新しい何かが生まれていきます。ドキュメンタリーは、私たちを奮い立たせるエネルギーを与えてくれます。自らの生き方を問い直すきっかけになるかもしれません。

毎月厳選してお届けする〝特集編成〟と〝オリジナル解説〟
私たちは作品の価値を高めるために、複数の作品を組み合わせて視聴することをお勧めしています。それが特集編成です。またそれぞれの作品について、今見る価値をしっかりお伝えし、過去の作品であっても、そこから得られるものがいかに大きいかをわかりやすく解説いたします。

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<関連おすすめ書籍>
■〝環境″をもっと知る本■

『TRANSIT49号 -地球の未来を考える- 美しき消えゆく世界への旅』(発刊:euphoria factory )

 

知る人ぞ知る雑誌『TRANSIST』から、49号をピックアップ。アジアをはじめとする世界が抱える環境破壊を知る入門編として、美しい写真とともに知れることができる1冊です。写真を見ながら「地球って美しいなあ」と感じる一方で、そんな地球を自らの手で破壊していることへの実感がわいてきます。

 


堀行丈治

堀行丈治[ぶるぼん企画室]

原稿屋「ぶるぼん企画室」代表。ウェブマガジン「INTERVIEW JAPAN」を運営。読書よりも執筆が、見ることよりも撮ることが好き。仕事の傍らで小説も書いている。第2回庄原文芸大賞・短編小説の部佳作「返納」は、Amazon Kindleで発売中。

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