『この世界の片隅に』新作は大人のすずさんが登場!
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©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
宝物となりました(のん)
戦争を身近に感じてもらえたら(片渕監督)
終戦から73年が経ち、平成最後の終戦日を迎えた今もなお「核」の恐怖にさらされている世界情勢。2016年11月12日の劇場公開以来、1日も途絶えることなく映画館での上映を続けているアニメーション映画『この世界の片隅に』。同作品のロングラン上映を記念したイベントが、世界で初めて原子爆弾が投下された8月6日に開催され、片渕須直監督と主演声優・のんにより、舞台挨拶が行なわれました。登壇した2人は、12月から同作に新規場面約30分を付け足した別バージョン『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が、広島をはじめ順次、全国で劇場公開の決定を受けてのコメントを残しました。
監督は、この長尺版の製作への思いとして「すずさんが出会った人たちにも、すずさんと似たような人生があって、この世界にはそういった人たちのもっとたくさんの片隅も存在するんだろうなと思い描きました」と、胸中を明かしました。
また、現在、製作が進んでいる中で、本編のアフレコはまだというのんは「特報では(声を)入れました」と明かすと、監督は「特報は原作者のこうの史代さんにも見ていただいたのですが、すずさんの声が大人っぽくなっていて、すごく良かったとおっしゃってました」とコメント。のんは「これから付け足していくすずさんのシーンは、大人っぽいすずさんなので、その部分をほめていただけたのはすごく自信がつきました」と、安心したように胸をなで下ろしました。
ロングラン上映が続き、たくさんの人が観ている同作品。のんは作品に対して「お話をいただいて、脚本も原作も読ませていただいて、絶対にやりたかった。これからの人生で出会うかわからない作品でしたので、こうして参加させていただき、宝物となりました」と、胸の内を明かしました。また、監督は「たくさんの方々に観ていただき、その中で、戦争を身近に感じるようになったという声を聞いたときは、本当にうれしかったですし、そうした方々がもっと増えて、平和とは何かを考えていただければ幸いです」と、作品への思いと願いを述べました。
この日、のんと監督は平和記念公園での式典前に献花を捧げた。きっかけは、のんの「(こんな)私でも、お花を捧げてもいいのかな?」という言葉だったという。こうした若い人が増えていくこと、こうした若い人に継承していくことが大人の役目だとすれば、アニメーション映画と原作漫画『この世界の片隅に』は、絶対に忘れてはならない作品にしなくてはならない。
映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』は、12月より広島の八丁座をはじめ、東京のテアトル新宿ほか全国で上映予定。
『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』
広島県呉に嫁いだすずは、夫・周作とその家族に囲まれて、新たな生活を始める。昭和19(1944)年、日本が戦争のただ中にあった頃だ。戦況が悪化し、生活は困難を極めるが、すずは工夫を重ね日々の暮らしを紡いでいく。ある日、迷い込んだ遊郭でリンと出会う。境遇は異なるが呉で初めて出会った同世代の女性に心通わせていくすず。しかしその中で、夫・周作とリンとのつながりを感じてしまう。昭和20(1945)年3月、軍港のあった呉は大規模な空襲に見舞われる。その日から空襲はたび重なり、すずも大切なものを失ってしまう。そして昭和20年の夏がやってくる……。