
元カープ山崎隆造が綴る盟友の遺志 崇徳高等学校硬式野球部の歴史を動かした「ALL崇徳」の正体——『受け継がれる「一勝。」』
- 山崎隆造
- 崇徳高校野球部
山崎隆造、
アルプススタンドへ
プロ野球の解説で甲子園を訪れるときは決まってバックネット裏の実況席に陣取る男が、あえて熱気渦巻くアルプススタンドの通路沿いに立っていた 。
元カープのドラフト1位・山崎隆造氏だ。
その身にまとっていたのは、2022年に急逝した硬式野球部の前監督・應武篤良氏が遺したグラウンドジャンパー。
山崎氏の新刊『受け継がれる「一勝。」』は、単なる高校野球の美談ではない。
広島のレジェンドたちの乾いた記憶と、現代の組織変革が交差するドキュメンタリーだ。
150年目の適応
ボイコットの男子校から進学校へ
1976年、山崎氏がショートのレギュラー兼主将としてセンバツ制覇を成し遂げた当時の崇徳は、厳しい指導に耐えかねた部員たちがスパイクのまま山へ逃亡するような、エネルギーの有り余った男子校だった。
しかし、2026年現在の学園は全コースが共学化され、ブレザーの生徒が行き交う進学校へと姿を変えている。
かつて複数の運動部がひしめき合っていた狭いグラウンドから、2021年に整備された野球部専用の「己斐上キャンパス」へ。
生き残りをかけた地方私立学校の、ドラスティックな環境適応の構造がここにある 。
「楽しむ」令和の球児
昭和のレジェンドが抱いた違和感
山崎氏の視線は、どこまでもドライで客観的だ。
泥臭い根性論の時代を過ごした自分たちと異なり、令和の選手たちは「科学的裏付け」と「納得」によって動く。
試合を「楽しむ」と口にする現代の選手気質に、現役時代に一度も野球を楽しいと思ったことがない山崎氏は小さな違和感を覚える 。
だが、アルプススタンドから後輩たちの躍動を見つめるうち、その違和感は別の形へと昇華していく。
彼らが言う「楽しむ」の真意を知ったとき、読者もまた胸が熱くなるはずだ 。
名マネージャーと監督の違い
「ALL崇徳」というシステム
組織論に関心がある層にとって、本書の最大のフックは生前の應武氏が現監督の藤本誠氏へ浴びせた「ある強烈な一言」だろう。
スカウトや進路指導、日々の練習メニューが完璧でも、勝負どころでベンチの指揮官が揺らげば勝てない。
應武氏は自身の背中を通して、勝つための監督の振る舞いと、1000人近くいるOBの力を結集させて組織を機能させるスローガン『ALL崇徳』の本質を藤本氏に叩き込んだ。
それは、個の熱意を勝てる「システム」へと変換する試みだった 。
「伝統校」への
スタートライン
8回裏に相手のミスを突いた劇的な同点劇、そして10回タイブレークの末に力尽きた電光掲示板 。
山崎氏は、崇徳をまだ「古豪」とも「伝統校」とも呼ばない。
この敗北を糧にすることこそが、環境が整った今、真の強豪へと脱皮するためのスタートラインだからだ 。
変わりゆく時代の中で、組織は何を受け継ぎ、何を新しく構築すべきか。
紫紺の優勝旗の重みを知る男が残した言葉は、スマートに生きる現代の私たちに、心地よい余白を残してくれる 。
目次
はじめに 2026年春、崇徳は甲子園球場にいた
第1章:崇徳の歩みとスポーツ黎明期
第2章:栄光の時代
第3章:雌伏の時代
第4章:「ALL崇徳」の名のもとに
第5章:150年目の足跡
第6章:時代は変わっても
第7章:「伝統校」への道
おわりに
【著者プロフィール】
山崎隆造
(やまさき・りゅうぞう)
1958年4月15日広島市生まれ。崇徳高等学校では1976年(昭和51年)、1番打者・遊撃手として第48回選抜高等学校野球大会に出場。決勝で小山高を降し優勝を果たす。同年、第58回全国高校野球選手権大会では3回戦で長崎海星高に敗退。超高校級の遊撃手と高い評価を受け、ドラフト1位で広島東洋カープに入団。プロ入り後、両打に転向し、内外野で見せる鉄壁の守備と堅実な打撃でカープの主力として活躍した。2023年9月、母校・崇徳高等学校野球部の総監督に就任。
【書籍情報】
『受け継がれる「一勝。」』
著者:山崎隆造(崇徳高等学校硬式野球部 総監督)
定価:1,980円(本体1,800円+税10%)
発売日:2026年7月4日
出版社:株式会社ザメディアジョン
受け継がれる「一勝。」
著者: 山崎隆造
定価: 1,980円(本体1,800円+税10%)
判型: 四六判
ISBN: 978-4862508829
発売日: 2026年7月4日
この記事は2026年7月2日の情報です。
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