前から気になっていた「カモメのばぁばぁ」に行ってきた【横川】

昔ながらのレトロな町並みを残しながら、個性的な人やお店が集まり、独特な雰囲気を醸し出す横川の町。そんな横川にあるお店は名前も個性的。一度聞いたら忘れられない、インパクト大な名前のお店を紹介します！

「カモメのばぁばぁ」ってどんなお店？

横川商店街の外れに面白い名前のお店があるよとの情報。早速、その場所を訪ねてみた。

FLAG!編集部から徒歩3分の場所にあったのは、窓に「カモメのばぁばぁ」と書かれたかわいらしいお店。名前のとおり、お店の周りにカモメのイラストやオブジェがたくさん飾ってある。

ばぁばぁ＝barber？=散髪店？　なんて考えながらドアを開けると、出迎えてくれたのは店主の船本由利子さん。ご自身が作ったという石膏（せっこう）のオブジェを携えての登場。壁一面に飾られた写真といい、どうやら散髪店ではないようだ……。

お客さんから「リリーさん」の愛称で親しまている船本さん。「この子と写真を撮ってもらえるなんて幸せ」と自身の作品を手に満面の笑顔

アーティストが集う人気のギャラリー

実はここは、今年でオープンから12年目を迎え、2年先まで展示の予約が埋まっているという人気のアートギャラリー。プロ・アマ問わず、2週間ごとに、写真、絵画、アクセサリー、洋服など、さまざまなジャンルの作品が展示される。リリーさん自身も長年デザインや設計などの仕事をされて、昨年末に閉園した「ガラスの里」のディスプレイや植栽、大型商業施設の基本設計など大きなプロジェクトにも携わってきたクリエイターなのだ。

この日はドイツのフランクフルト在住の日本人「JUNKO MIURA」さんの写真展

子育ても落ち着いた54歳の時に、英語が話せるようになりたいと、単身イギリスに1年間語学留学。卒業後は、絵を描きながら4カ月間ヨーロッパ各地を旅し、帰国してギャラリーを開くため物件を探していた時に出合ったのが現在の建物だったそうだ。「壁もはがれてボロボロだったのを仲間たちに手伝ってもらいながらリフォームしたのよ。すぐに潰れると思っていたけど、皆さんのおかげで11年もやってこれた」と振り返る。

店内はインテリアやさりげなく置かれた小物など、今まで個展を行ったアーティストや知り合いの作家さんたちの作品であふれ、「これはね、○○さんっていう若手作家の作品で……」などと一つ一つ丁寧に解説してもらえるのも魅力だ。

お手洗いに続くバックヤードも作品でいっぱい

そして「見て見て」と手渡されたのが、アーティスト仲間に協力してもらって作ったという何とも面白いスケジュールカード。近くの公園に集まり、みなさん実際にこの姿で撮影したそうだ。

2019年のスケジュールカード。青木繁作「海の幸」オマージュした作品。撮影時の楽しさが伝わってくる

手作りチーズケーキやイベントも好評！

チーズケーキセット（ドリンク付き）600円

ギャラリーの一角はカフェスペースとなっており、作品を眺めながらコーヒー、紅茶などのドリンクの他、リリーさんお手製のチーズケーキをいただくこともできる。カップやケーキ皿、シュガーポットまでもすべて作家さんの作品というこだわりだ。
また「おすすめはしないけどね」ということだが、昼休みにしか来られない人のために、食事も少々提供している。

そして、定期的にギャラリースペースで開かれている英語やフランス語、俳句、朗読、鉛筆画などの楽しい講座も人気。定員があるが誰でも参加できるので、気になる人はお店へ問い合わせを！

さてさて何故「カモメのばぁばぁ」？

リリーさんが留学したのはイギリス南部のブライトンという海辺の町。大きなカモメがたくさんいたのがとっても印象的深く、そして、この建物がもともと散髪店だったことから、楽しかった留学生活の思い出と合わせて「カモメのばぁばぁ」と名付けたのだそうだ。
「一度聞いたら気になって忘れないでしょ！」とのこと。

店には国内外からカモメをモチーフにした作品が数多く送られてくる

毎年海外を訪れていて「数年前に一人でインド旅行もしたのよ」とバイタリティあふれるリリーさん。店を訪れる海外のアーティストやお客には英語で接客するが、「相手の国の言葉が分かると楽しいよね」と、今年はフランス語を学びに3カ月間フランスに留学するそうだ。

そして最後に「もっともっとアーティストたちが活動できる環境を横川に作って、『横川＝アート』と思ってもらえる町にしたい」と優しい眼差しで語ってくれた。

取材中ずっと良い子にしていた看板犬のアトム君が見送ってくれる

横川の魅力を凝縮したような場所。体感したい人はぜひ訪ねてみてほしい！