コラム 2020/09/11

【著者✕編集対談】書籍『アンタッチャブルー父と息子の事業継承物語ー』制作スピンオフトーク!

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「good experiencem,Groovin’book odyssey」をテーマに、出版や本づくりの楽しさを拡げる活動を行う非公式出版ユニット「Enjoy Publish Club」。広島の出版業界で働くディレクター、営業、編集、校閲、デザイナーなどで構成され、不定期で活動中です。

今回は、僕たちがYoutubeチャンネルで放送している『Enjoy publish TV』から派生し、書籍の著者と担当編集者が対談し、本の内容はもちろん、制作の裏側や誕生ヒストリーについて振り返ります。

今回は、安佐南区に本社を構える「ホームサービス植木」の社長・植木繁之さんにお越しいだたき、2020年3月に発行された『アンタッチャブル』のお話を聞かせてもらいました。

 

【書籍『アンタッチャブルー父と息子の事業継承物語ー』】


多くの事業者が抱える事業継承の問題。そこには世代的な意味合い以上に“父と息子” という関係性だからこその感情的な難しさがある。今回は植木父子に着目し、ひとつの事業を継承していく過程に密着。考え方、経営哲学、時代認識、仕事観、家族観など……すれ違う2人は果たして似ているのか、真逆なのか。ある種“アンタッチャブル”な不可侵の関係が最後に辿り着くのは和解か、それとも父子は分かり合えないのか……。植木父子をモデルとしたリアルに描かれたビジネス書であるとともに、“家族”や“親子”を考える真摯な一冊。

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紡がれる親子と事業継承の物語が生まれた経緯

 

植木さん(左)と山本さん(右)

 

編集・山本

事業を渡す側、継承する側。両方のエピソードや思いをクロスさせながらどうやって事業継承していったかをまとめたこの一冊ですが、書籍化するきっかけはなんだったんですか?

 

著者・植木

もともと、本を読むのが好きで、本を作ってみたいという気持ちがあったんだよね。テーマまでははっきり決まっていなかったんだけど、祖父の10回忌で故人の話を親戚と集まってしたとき、みんなと自分が持っていた祖父の印象が違っていて。そこで、ふと隣の父を見て「そういえばオヤジのこともあまり知らないな」って改めて思ったんですよね。会社を継ぐことになったにもかかわらず。父70歳、自分40歳。父から知らされてこなかった昔のエピソードを知るきっかけとしては、とてもいいタイミングだとじゃないかなと、山本さんにお願いさせていただいて。

 

山本

一般的に本を出したい、作家を生業にしたとかじゃなくて、純粋に「お父さんを知りたい」って思いがあったんですよね。僕としては、まず、植木さんの本を作れるってことがすごく嬉しくて。友人のような関係の方の本を作らせてもらえるってことは、編集としてとても喜びを感じました。植木さんとしては、最初から「こういう本にしたい」っていう構想はあったんですか?

 

植木

読み終わった後、親子関係っていいなって思ってほしかったんだよね。同世代から、父親が好きじゃなかったり、事業継承がうまくいっていないという話を聞いて、「なんでかな」と疑問に思っていて、自分が体験したこととか、事業継承に対する思いとか、でもそれは世代によっても違うからそういう部分を知ってもらいたいという思いがありましたね。

 

山本

事業を継ぐ方と、渡す方という特殊な関係性であることを差し引きしても、一般的には、父と子って話すことがないし、真正面から向き合うこともない。となると、本作りを通じて知っていけるという意味では非常に、人生においていいですよね。

 

植木

そうそう。自分が祖父のことを知らなかったように、自分の息子も自分の父親のことを知らないだろうけど、これをやるよって渡せば、父親の僕のことも祖父にあたる僕の父のことも知ってもらえる。SNSって、情報を発信したり拡散したりすることには便利なんだけど、古くなる。でも、本は、手に取った瞬間が誰かにとっての最新情報だから、色あせない。それに、この本を読んでもらえることで、僕のファンと父のファンが合体するんですよね。60年分のストーリーを知ってもらうことによって、「あなたのお父さんって素敵ですね」と、父から僕のことを知ってもらったり、逆もまた然りで。

 

山本

本は記憶に刻んでいけますよね。この本自体、取り上げているテーマが「事業継承」という普遍的な話題だから、内容的にも腐らない。いつ読んでもいいですよね。読まれた方の声とかも届いていますか? お父さんの反応とか。

 

植木

父はね、いろんな人に渡してくれたりしていて、とても読んでもらいたいみたい。他にも県内のいろんな商工会から本を多くってほしいって父宛に連絡が届いていたり。やっぱり、今は中小企業の事業継承が問題になっているんだよね。

山本

この本の良かったところが、ビジネス書でよくあるようなノウハウ本じゃなくて、お互いのコミュニケーションであったり、リアルな思いが語られているので、本音の部分が聞けて良かったなと思いますね。堅苦しくなく読める。

 

植木

事業継承する前に、父に「何で会社を作ったの?」と聞いたことがあって。その時に即答で「お金のためだ」って言われたのがショックだったんですよね。僕としては、地域貢献とか暮らしの向上とか、そういう言葉を期待していたんですけど。それが、僕としては、わだかまりになっていたんだけど、本を作る過程で、その理由がわかったんだよね。

 

山本

お父さん自身もすごく子供のころに苦労されていたんですよね。本にも書いてますけど、借金取りが来て家を差し押さえられそうになったりした辛い過去があって、その辛い経験から出た言葉だったんでしょうね。

次は僕と息子の物語を作りたい

 

山本

今回の書籍にかんしては、取材の進め方を従来とは少し変えました。一緒ではなく別々で取材させてもらっていたんですよね。二人には同じテーマを投げかけたけど、初校の原稿が揃って確認してもらうまで、二人はお互いのエピソードや思いを知らなくて。

 

植木

まったく知りませんでした。

 

山本

だから、発見がたくさんあったんじゃないかと思います。他にも制作の話でいえば、僕はタイトルにこだわりがあって。

 

植木

最初、「アンタッチャブルかぁ……」と言ってしまいました(笑)。

 

山本

少しだけ凹みました(笑)。ただ僕自身、二代目三代目の方にお話を聞かせてもらうことが多くて、お父さんの話を聞いていると、親子なのに一歩踏み込めない「不可侵地帯」がありそうだな、そこってなんだろうなと思ったんですよね。きっと、継ぐ方と継がせる方にもアンタッチャブルな何かがあるんだろうなと思って、このタイトルにさせていただきました。

 

植木

山本さんのことを100%信じているので、結局このタイトルで行かせてもらいました(笑)

 

山本

タイトルもそうですけど、中身にもこだわりがあって、最初は掛け合いと出来事と年代で区切っていこうと思っていたんですよ。事業の変遷を時間軸に、それぞれの年齢で照らし合わせながら、作ろうと思ってたんですけど、体系的に紹介するよりは、それぞれに質問を提供して、答えを出してもらう方が、本音の気持ちを表現できるんじゃないかと思って、今の構成にさせてもらいました。

 

植木

テーマごとにそれぞれの視点から話が進んでいくので、短編小説みたいで読んだ人も皆さん読みやすいって言ってくれてましたね。続きが気になって、一気に最後まで読みましたって言ってもらったりしました。

 

山本

もちろん編集の仕方もあるんですけど、事業継承というビジネス書っぽいテーマを物語風にしたのが良かったかもしれませんね。あとは、親子の話をいかに内輪っぽくせず、一般対象向けにするかがキモでしたね。一般読者のメリットがどこにあるのか、悩みながら作りました。普通の親子の話って普通は誰も読まない。それをいかに面白く読ませるか。そこで、章が始まる扉には本文中の印象的なメッセージを挿入したり、謎解き的な要素を入れました。僕としては、植木さんに任せてもらっていたのもあって、完成品にすごく満足していて。だいたい本を作ると「もっと〇〇できたな」と後悔が残るんですけど、アンタッチャブルに関してはないですね。やりきりました。

 

植木

僕も、本を出したい思いがあっても、なかなかハードルが高くて、チャレンジが出来てこなかったんだけど、山本さんが近くにいてくれたっていうのもあって、出版に踏み切れたんだよね。出そうと決めてからは、すごくスムースだった。完成した書籍を、読んでくれた人もたくさんいて、僕の事業継承や親子関係とかを一瞬でも考えてくれた人がいることを思うと、この決断ができてよかったと思ったね。社長とか会長とか役職があると、その肩書きで見られがちだけど、この本読むと、普通の親子で、いろんな苦労をしてきて頑張ってきたんだなって、僕たちのことをちょっと応援したくなってほしい。

 

山本

この本を作ってみていろいろな変化があったと思うんですけど、今後10年20年、さらにその先に向けて、展望などありますか?

植木

中小企業の間で事業継承ってやっぱり困っていることだから、対談セミナーを親子でやりたいんだよね。手放すことは簡単だけど、継ぐ方は先代がやったことって嫌じゃないですか。事業継承には嫌なイメージがあるけど、過去の失敗とかダサい部分とかそのストーリーを持っていく方が、継ぐ方にとってはファンを濃く深くしていけるからメリットが大きいんだよね。さらにいえば子どもが大きくなって、家を継ぐ時にまた本を出したいね。僕と息子の物語として。そうすると、家に本が増えていくじゃないですか? それが棚に並ぶといいですよね。

 

山本

いずれホールディングスにしたいという構想もあるんですよね。よければ最後に植木さんのストーリーとして、リフォームは人で決まるという面白い話を……(笑)

 

植木

僕が10年前に帰ってきた時に、父の方がエリアで信頼を集めていて、その中で継がなきゃいけないから必死だったんですよね。そこで、自分のことを知ってもらうために、軽ワンに自分の写真を貼ってたんです。両ドアに、自分の半身写真と「リフォームはひとで決まる」という言葉を(笑)3年くらいずっとその車で安佐南区を走っていて、新規のお客さまのところに行ってもああみたことがあるって話題になったり。徐々に依頼が父から僕の方に来るようになったからね。3年ずっとその車で走っていたから、最後にはビリビリになっちゃって(笑)あの時は腹くくってたから何も恥ずかしくなかったなぁ。

 

■著者PROFILE■

植木 繁之(うえき・しげゆき)

1979年7月、安佐南区生まれ。摂南大学工学部建築学科卒業後、京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科に進学し建築の道を志す。大学院卒業後は「旭化成ホームズ株式会社」に入社し設計職などを経験する。2010年、故郷・広島に戻ってきて「ホームサービス植木」に入社。2015年には父・重夫の後を継いで2代目社長に就任する。会社以外にも現在、父と共に田中山神社の神職も務める。さらに安北小学校PTA会長、安古市町商工会青年部副会長を務めるなど安佐南区の地域活性化のため活発に活動を続けている。また、安佐南区に縁のある人々の交流の場である「安佐南区LOVEの会」も主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

 

■編集■

山本速(やまもと・すみや)

株式会社ザメディアジョン所属メディアマーケティング事業部営業本部長。『知識ゼロでも安心して始められる! Zoom営業の教科書』、広島マツダ会長の著書『2045年、おりづるタワーにのぼる君たちへ』などを企画・編集。その他、経営者によるビジネス書などを企画するほか、自費出版のサポートを行っている。

 

取材:西村公一/文:芝紗也加

 

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芝紗也加

芝紗也加[株式会社ザメディアジョン メディア関連事業部クリエイティブサポート]

高知県出身。冊子やリーフレット、パンフレット、広告などを企画。マリーナホップ発刊の情報誌『Aletra』、お好み焼アカデミーによる『お好み焼シンポジウム』プロジェクトなどを運営。映画、読書が趣味。最近は刺繍に目覚めたり、絵本講師になるため勉強中。

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西村公一

西村公一[株式会社ザメディアジョン メディアマーケティング事業部 出版メディアコンサルティング課 課長]

山口県出身。自治体の冊子制作や企業広報誌などの営業・制作担当。本を楽しむことを提案する「Enjoy Publishing Club」プロジェクト設立。なんだか思いや本音がにじみ出ている、あふれ出ているものが好き。自然・抜け道・補充・やる気がないように見えて気合入ってるもの・が好き。

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