ワイルドバンチフェスを10倍楽しむために知っておきたいこと!「新しいフェス文化の創造」
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旬の国内アーティストが勢ぞろいする西の大型夏フェス、WILD BUNCH FEST.
そのオーガナイザーとして指揮を執る大山高志。
フェスの成り立ちから制作の裏話、今後の展望を聞いた。
庄原でのSETSTOCKから山口のWILD BUNCH FEST.へ
2013年から山口県の山口きらら博記念公園にて毎年開催され、県内外から人が訪れる、押しも押されもせぬ人気フェスとなった「WILD BUNCH FEST.」( 以下、WBF)。その一貫を担う大山さんは、同フェスの前身である、庄原市の国営備北丘陵公園にて行われていたSETSTOCK で、2005年からオーガナイザーとして携わっている。
「当時、僕はまだ27歳でしたね。若かったけれど、大きなフェスを任されるのはうれしかった。フェスというのは普通のコンサートとは違って、自分のやりたいことが全て体現できる。こんなに楽しいことはないですよね。コンサートやライブツアーだとアーティストサイドに主導権があるから、こうしたいと意見を言っても、いや違うと言われるとできない。だからこそ、フェスやイベントは本当に楽しい」
しかしSETSTOCK は、県北での開催から10年目である、2012年に突如終わりを遂げた。広島で楽しめる大型野外音楽フェスがなくなってしまったと嘆いたロックキッズたちも、きっと多かっただろう。しかし、その裏には制作サイドのはっきりとした理由があった。
「庄原の会場は、メリットもあれば、デメリットもあった。山中の大自然を感じられる環境は素晴らしかったけれど、お客さんを運ぶ手段や、会場のキャパに限界がきた。10年も同じ場所でやれば、できることが限られてくる。それで一旦区切りをつけたんです」
こうして、翌年2013年に会場を山口へと移し、新規一転、夢番地が主催する新しいフェス、WBF がスタートしたが、すんなりと場所移動が遂行されたわけではない。
「実は、2010年から、きらら博の会場でやりたいと目星をつけていて、現地に直接相談しに行ったんです。でも最初は門前払いだった(笑)。2011年に再度お願いをしに行ったけれど、やっぱり答えはノー。そこで、SETSTOCK 最終年の2012年に、公園関係者の方に実際にフェスを見に来てもらった。『このステージ、この雰囲気、そしてこれだけのお客さんを、きらら博の会場にもっていきたんです!』って。ほかに候補はなく、ここに勝てる場所はない。駐車場、アクセス、芝生、海……、新しいフェスを立ち上げる全ての条件をクリアできるのは、ここしかないんだと。大説得のすえ、やっとイエスをもらえましたね」
最高のロケーションとブレないブッキング力
初年度の観客動員数は、2日で約3万人。2年目は、2日で約4万5000 人、という盛況ぶり。規模も動員も年々増し、チケットも足早にソールドアウト。確実に夏フェスとしての固定票を得たWBF。その成功の理由は、一体どこにあるのだろうか。
「やっぱり、この空間がすごくよかった。『ロケーションで勝った』と思っています。ライブやアーティストだけに焦点を当てていると、ユーザーが求めていないアーティストがきた場合、チケットは売れない。つまり、会場の素晴らしさがお客さんに受け入れられたんだと思います。一番は、海ですね。山もいいけど海のほうが夏フェスには合っている」
事実、初年度には、夜に輝く月の海をイメージした、Onthe Sea ステージにて、奥田民生の弾き語りライブが。2017年には、満潮時間を緻密に計り、ゆずがジェットスキーに乗りライブパフォーマンスを行うなど、海上を利用したステージ展開は、強く心に焼き付くものだった。
出演アーティストを見てみると、誰もが知るビッグネームから、期待の新鋭まで、そのバランスの良さも支持される理由の一つだと伺える。
「基本は、ラウド、ロック系。ラインアップの軸がぶれないよう、そこはとても大切にしていますね。ブッキングは全社員で会議して決めている。10代後半から20代半ばのユーザーをターゲットに、きちんとマッチしているかどうかにフォーカスする。でも幅広い世代に来てもらいたいので、30~40代でも楽しめるアーティストも必須。それに、全部ロックやラウド系だと、きっと疲れちゃうでしょ」
フェスの空気を壊さない、フェスの個性に沿ったアーティストがずらりとそろっていること自体が、同フェスが提供する楽しみの1つ。タイムテーブルを見ながら、どういうプランでステージを周るか、想像するだけで十分に楽しいのだ。
ヒントはコーチェラから 好奇心と遊び心で空間演出
大山さんが、WBF を立ち上げるにあたり、ヒントを得たのが、アメリカ・カリフォルニア州で開催される世界最高峰の野外フェス「The Coachella Valley Music and ArtsFestival」(以下、コーチェラ)だ。
「2012年、つまり山口でのフェス開催が決定した年に、初めてコーチェラに行ったんですよ。凄まじい衝撃を受けましたね。今まで『遊び心』が足りなかったんだなと気が付いた。SETSTOCK 時代は、どうしてもアーティスト頼みになっていましたからね。昨年もコーチェラに視察に行ってきました」
海外のフェスからアイデアを得て取り組んだのが、主にインフラ系の整備や、ステージ間を繋ぐ道の装飾、ロゴオブジェなどを設置するなど、思わず足を止めてしまう、遊園地のような空間作りだ。そして、開催6年目を迎えた昨年、山口ゆめ花博開催のため、会場レイアウトの大幅な変更を試みた。前年の約2倍はある土地に、会場は同じだが、まるで別フェスのような空間が広がる。入口には鼻からミストを吹く象のオブジェ、大きく目立つナンバリングタワー、カラフルな気球、ジュラシックパークさながらのビックサイズな恐竜、巨大なギター……。
「海外で、動物をテーマにしたフェスがあるんです。そこからアイデアが浮かんで、ゲートオブジェが欲しいなと。僕が手書きで象のイメージを書いて、デザインがあがってきたものを、そのまま作り入口に置いた。理由? たまたま象。僕が象が好きだったから(笑)」
思い思いに遊べるフェス空間を提供するということ。夏フェスの楽しみ方は無限大にある。
「熱気球は、会場の彩りのために、バルーンで有名な佐賀の市役所まで行って借りてきたもの。恐竜のオブジェは、もともと借りていたものを、カフェに設置。そして、誰が見ても遠くからわかるように数字を記したタワーを置いた。待ち合わせポイント用ですね。広大な敷地で開催されるコーチェラ、なんで皆スムーズに動けるのかなと思ったら、それぞれのステージ近くに目印になるようなオブジェがあって。このオブジェを本当は作りたかったけれど、そんなにたくさん作れないからタワーにしました。一番お金はかかってないけど、すごく評判が良かった(笑)」
その場でしか出会えないサプライズや演出があるのも、フェスならではの楽しみ方だろう。
「ギターは、某アーティストさんのツアーセットをいただいたものなんです。それをそのまま置かせてもらった。僕、毎年もらうんですよ、ツアーのセット。捨てるんだったら貰いますって。たとえば過去で言うと、斉藤和義さんや、スピッツのツアーセットをもらって会場内にセッティング。これが見れるのは、うちのフェスくらいだと思います。アーティストサイドからしたら、こいつ、またくれっていうんだろうな~と思われているかも(笑)。でも、そこを理解してくれているからうれしいですよ。どうせ今年もいるんだろ? ってね」
自由と多様性を提案 発想を現実に更なる挑戦へ
「どこに何を作って置くか、どんな空間を作るか、全てはくだらない発想の中から生まれるんです。自分が図面を書いて、オブジェ類を置いて妄想するのは、楽しくて仕方がない。人が入る前には、なんてことないただの置物が、3万人がドッと入った瞬間に、テーマパークのように変化する。みんな写真を撮って、遊んでくれる。当たり前のことだけど、主役はもちろんお客さん。会場内でのストレスをいかにフリーにするか、まだまだ着地の段階ではないけれど、楽しんでもらえるのが何よりうれしいこと」
「Thank you for coming to WILD BUNCH FEST. 2018!!」より
そう話す大山さんが提供するのは、全国の音楽ファンの心を掴む「WBF でしか味わえない」特別なフェス。
フェスはまだ見ぬ音楽を体感できる場所だ。名前は知っているけれど、曲はよく知らない。あるいは、名前すら分からないアーティストの演奏に心を奪われてしまう。そんな体験ができるのがフェスの魅力でもある。その間口をグッと広げてくれたのがWBF。音楽ファンは更に楽しめ、たとえわからなくてもその場にいるだけで幸せ。自由に楽しんでいい、主役は自分なのだ。1年に1度、日本の短い夏を彩る、WBF というワンダーランド。次の夏が、待ちきれない。
今年は3日間! 話題のアーティストが勢ぞろい
8月23日(金)・24日(土)・25日(日)(※雨天決行 荒天の場合は中止)開催となるWBF。最新情報や注意事項など、詳しくは下記HPのURLをタップしてください。
おおやま・たかし
広島市在住。高校生の頃より、アルバイトスタッフとしてコンサート業務に携わり、大学卒業後に(株)夢番地に入社。コンサートプロモーターとして、ライブやコンサートの会場手配から宣伝、チケットの販売、当日の運営を行う他、野外音楽フェス、WILD BUNCH FEST.の企画運営を手掛ける。担当するアーティストは、奥田民生、Mr.Children、スピッツ、ゆずなど、多岐に渡る。
大須賀あい[フリーランス エディター&ライター]
呉市出身、広島市在住。大学院在学中から、RCCラジオでラジオパーソナリティを務めた後、ライターに転身。情報誌の取材、インタビュー、音楽誌の記事からラジオドラマまで「書く」フィールドはさまざま。どこか儚くも強い生命力を感じるものが好き。そして、音楽と海と本。男児2人、絶賛子育て中。<お仕事のご依頼は右記まで>alohasurf1030@gmail.com
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