観光・旅 コラム 2022/02/24

温鉄!! ローカル線に乗って温泉に行こう! 第二回 そうだ山温泉&JR予土(よど)線(高知県)【後編】四万十川の清流と共に列車に揺られて

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温泉をこよなく愛する温泉ソムリエ&フォトグラファー中野一行と、ローカル線に乗るのが大好きな鉄旅ライター・やまもとのりこの‟のんびり珍道中”。

第二回 そうだ山温泉&JR予土(よど)線(高知県)
【後編】四万十川の清流と共に列車に揺られて

宿泊客の特権!朝湯でまったり

温泉に泊まったときの一番の楽しみは「朝風呂」だ。

そうだ山温泉は、夜と朝の各1時間ほどは日帰り客がいない、宿泊客だけの時間となる。

よ〜し、まだ誰も入ってない湯船に真っ先に入るぞ〜!!と朝一番で温泉棟に向かった。

朝日が差し込む中、ゆらゆらと湯気が立ち上る。

露天風呂に行くと、澄み切った空気の中、川のせせらぎが聴こえてくる。朝早くてまだ誰もいない。クリアなお湯を独り占めだ。

少しぬるめのお湯が心地よい「まどろみの湯」。

ゆっくりと浸かっているうちに、気分もリラックス。

お湯の中でゆったりと足を伸ばす。

空を眺め、せせらぎの音に耳を傾けながら、時間を忘れてしまいそう……。

ふと川の方を見ると、木の枝に野鳥が留まって歌を歌っている。

自然の中で川の音色と鳥のさえずりを聞きながらの朝風呂、極楽だ〜。

つくづく、前の日から泊まってよかったな〜。

“地乳”で湯上がりの一杯

朝風呂を楽しんだ後の朝食。 カマスにキンメ(金目鯛)、高知自慢のお魚づくしだ。

おつゆには「ドロメ」という高知のちりめんじゃこが入っていた。

ロビーで休んでいると……、

「地乳(じちち)」なるものを発見!!

え? 地乳?? 地酒じゃなくて。

手書きポップには“土佐のローカルミルク”とある。

ローカル鉄旅ライターとして、これは飲んでみないと!!

腰に手を当ててゴクゴク。

う〜ん美味しい。

フレッシュでコクがある。

そうだ山温泉から車で30分くらいの佐川というところにある吉本乳業で、地元産の生乳100%で作られているそうだ。

時間の贅沢!乗り鉄しながら広島へ帰る

そうだ山温泉最寄り駅のJR土讃線・吾桑駅へ向かう。

今日はここから出発し、途中、四万十川沿いのローカル線「予土線(よどせん)」を経由して広島へ戻る計画だ。

土讃線窪川行きの列車に乗車。

窪川駅は四万十町にある土讃線の終着駅で、予土線への乗り換え駅だ。

吾桑駅からは各駅停車の列車で約50分。

土佐新荘駅を過ぎたあたりの車窓。須崎湾の眺めがいい。

お昼前に窪川駅(右)に到着。左は土佐くろしお鉄道の駅舎だ。

「満洲ジャンメン」で乗車前の腹ごしらえ

乗車予定の予土線の発車時間まで1時間ちょい。

この間にお昼ごはんとしよう。駅から徒歩10分の「満洲軒」へ。

老舗の焼肉屋さん「満洲軒」。地元で人気のメニューがこの「満洲ジャンメン」だ。

いうなればピリ辛風味のホルモン入りニラ卵とじ・あんかけラーメンといったところか。

中太ストレート麺にぷりぷりホルモン。

ボリュームたっぷりでかな〜り満足感あり!

ふと見ると、早くも食べ終えた中野カメラマンが「後入れごはんお願いします!」どんぶりに残ったスープの中にご飯を投入!

「うまい!」

窪川に来たらぜひ試してみてほしい。

いよいよ予土線へ

窪川駅に戻り、宇和島行きの予土線列車に乗り込んだ。

予土線とは、高知県四万十町の若井駅と愛媛県宇和島市の北宇和島駅をつなぐローカル線だ。

伊予と土佐を結ぶから「予土線」。

四国山地を越え、その大半を清流・四万十川に沿って走るので「しまんとグリーンライン」という愛称がついている。

この日乗車したのは山吹色をしたキハ54形のディーゼル気動車。

春〜秋の土日祝は、「しまんトロッコ」という観光トロッコ車両専用の牽引車として連結して運行するのだが、それ以外の日はトロッコ無しの単独で走る。

予土線には他にも、いかにも0系新幹線みたいなイメージの車両やウルトラマンのフィギュアをテーマにした車両など、色んな楽しい列車がある。

列車は窪川駅から発着するが、予土線の起点は次の若井駅だ。

窪川駅から若井駅までは土佐くろしお鉄道中村線の線路で、その区間は予土線の列車と中村線の列車が両方走る。

若井駅を出発して最初のトンネルを抜けたあと、この川奥信号場で予土線と中村線が分かれる。

川奥信号場では予土線の列車同士、中村線の列車同士の行き違いができるようになっている。

ちょうど、予土線の「かっぱうようよ号」が行き違いのため待機していた。

クロスポイントを通過して左に直進するのが予土線の線路、右にカーブしながら急勾配を下っていくのが中村線だ。

列車は四国山地へ向かってぐんぐんと高度を上げていく。

ディーゼルエンジンがうなり、勾配を登る列車の音を聞いてると頑張れー! って応援したくなる♪

蛇行する四万十川を予土線が串刺しにするように通っているので、次々とトンネルを抜ける度に四万十川の清流が右に左に見えてくる。

なので、左右どちらの席に座っても眺めが良い!

沈下橋が架かる四万十川らしい風景が見える。

沈下橋は川が増水したときに水面下に沈むように低いところに架橋されている。

水の抵抗を受けにくい、欄干のないシンプルな形状が特徴だ。

江川崎駅に到着。

江川崎駅は、1974年の予土線全通までは、前身となる宇和島線の終点だった。

駅前からは窪川行きの国鉄バスが出ていたという。

駅構内は広い。周辺は林業が盛んな地域で、かつては駅から木材の積み出しが行われていたという。

江川崎駅では停車時間が20分間あったので、その間に駅のトイレに。

予土線の車両にはトイレがないので、駅で済ませておくべし。

駅の売店に予土線グッズがたくさんあった。

予土線缶バッジをゲット♪

江川崎駅からしばらくは四万十川支流の広見川が刻んだV字渓谷の山裾を走る。

西ヶ方駅と真土駅の間で県境を越えて愛媛県へ。

やがて松丸駅あたりからは田園風景の車窓が楽しめた。

北宇和島駅到着!

予土線はここまで。

線路の向こうに「0」のキロポストが見える。

キロポストとは路線の起点からの距離を示す標識で、0キロポストのある北宇和島駅が予土線の起点となる。

ここで予土線は予讃線と合流し、列車はそのまま次の終点、宇和島駅まで運行する。

窪川駅を出てから2時間半、終点到着。

予讃線からの夕空

次に乗り換えるのはこのアンパンマン列車!特急宇和海22号松山行きだ。

車内にもアンパンマンがいっぱいでテンションが上がる♪

広島に戻るには松山からフェリーに乗るので、本当はこのまま特急で松山まで行くと速い。

でも松山方面に向かう途中の伊予大洲駅から、線路は海沿いを通る予讃線と内陸部を通る内子線に分かれる。

どちらもその先で合流して松山方面へ向かうのだが、特急は内子線を経由する。

せっかくだから海沿いを通る普通列車に乗り換えようかなと、八幡浜駅で下車した。

遠回りでもいいから海の景色が見たいよね。

おおっ!!予讃線普通列車松山行き、みきゃん&にゃんよのキャラクター列車だ〜♪

伊予長浜駅あたりから海辺に出る。

夕暮れの海の景色を見ながら列車に揺られる。

海が目の前に広がる下灘駅がもうすぐだ。

喜多灘駅と串駅の間、カーブしたレールを夕日が輝かせる。

下灘駅に入る頃、車窓から見える海と夕日に、感動でしばし言葉が出ない。

ここが下灘駅。

あぁ……来てよかった。

うっとりしながら駅舎の方を見ると、うっとりしながらスマホで夕日を撮影してる人がいっぱい(笑)。

列車にも乗ってね♪

しばし、素敵な夕日の余韻に浸る。しかしこのまま普通列車で松山まで行くと、広島行きの最終フェリーの時間にギリギリだ。

我に返って時刻表とにらめっこ。特急停車駅の伊予市駅で降りて、次に来た松山行き特急に乗り換えた。

普通列車より15分早く松山駅到着。

徒歩6分の伊予鉄道(いよてつ)大手町駅から高浜行きに乗り、高浜駅前から連絡バスで松山観光港行きに向かった。

最終フェリーで広島へ

松山観光港とうちゃーく!!!

広島港行きの最終フェリーに間に合った……。

最終フェリーが広島港に到着するのは、広電広島港発広島駅行き最終電車のあと。

なので、広島港の前に着く呉港で下船した。

呉港から徒歩10分の呉駅から呉線で広島駅に帰着。

そうだ山温泉を出てから約12時間。

土讃線、予土線、予讃線……時間を贅沢に使って、ローカル線の山と海の絶景車窓を楽しんだ。

皆さんもぜひ、参考にしてほしい。

 

取材・文/やまもとのりこ
写真/中野一行

 

【あわせて読みたい記事】

温鉄!! ローカル線に乗って温泉に行こう! 第一回 そうづきょう温泉&錦川清流線(山口県)【前編】錦川清流線で絶景車窓を楽しむ

■温泉と鉄旅を楽しめる関連本■

『ローカル線の旅ガイドブック~愛しの三江線~』(写真右)
著者:やまもとのりこ
発売:2016年12月/ザメディアジョン

中国地方のローカル線の乗り鉄旅に便利なハンディサイズのガイドブックです。

山陰・山陽エリアのローカル鉄道のうち、平成30(2018)年4月に廃線した三江線の情報は貴重。

現在でも重宝したい芸備線・木次線・山陰本線・錦川清流線・一畑電車の6路線の情報を掲載。

持ち運びやすいハンディサイズです。

著者はローカル線鉄旅ライターのやまもとのりこ。

彼女が実際に体験した沿線の見どころ、グルメ、温泉、宿泊を徒歩圏内を中心に紹介。

ただ乗るだけじゃない、“もっと楽しむ” 乗り鉄旅のプランが広がります。

他の路線やバス・タクシーへの乗り継ぎを紹介する乗り継ぎマップ&インフォメーションページも便利。

緑の山々、清らかな川、青い海……三江線をはじめとする中国地方のローカル鉄道を撮り続ける山岡亮治氏ほか、写真愛好家による四季折々の美しいローカル鉄道写真も多数掲載しています。

『温泉ソムリエ・中野一行 厳選 中国・四国かけ流し温泉ガイド&メモ』(写真左)
著者:中野一行
発売:2018年12月/ザメディアジョン

数々の雑誌やメディアの制作にたずさわり、広島を拠点に活躍するフォトグラファー・中野一行。

彼のもう一つの顔は、全国400箇所以上の温泉に入り、中四国の温泉の魅力を知り尽くす温泉ファン。

「温泉ソムリエアンバサダー」をはじめ「温泉入浴指導員」の資格を保持し、「湯原温泉指南役」「別府八湯温泉道・名人」に認定されている。

その中野一行が【厳選】した、『中国・四国地方のかけ流し温泉』のみを紹介するガイドブック。

全62箇所の温泉は、どれも筆舌しがたい最高の温泉ばかり!

中野自身が入って撮って書いた、まさに温泉好きによる温泉好きのための一冊となっています。


やまもとのりこ

やまもとのりこ[ローカル線鉄旅ライター]

ローカル線に乗って旅をするのが大好きなライター。そんな仲間を増やすべく、ローカル線沿線の観光ガイド本を手がけている。著書「中国地方ローカル線の旅ガイドブック」「ローカル線で行こう!鉄旅ガイド」HPは https://writer-norikoyamamoto.jimdofree.com

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中野一行

中野一行[フリーランスフォトグラファー/温泉ソムリエ]

宮城県出身、広島市在住。札幌の写真学校卒業後、東京のスタジオで修行。広島のスタジオで勤務後に2001年からフリーランス。主に雑誌・書籍・広告・Web等の様々な撮影を担当する。飲食店や商業施設の撮影は現在で数千件を超える。また日本で数十人しかいない「2つ星 温泉ソムリエ」でもあり温泉撮影のスペシャリスト。HPは(https://onsen-photographer.amebaownd.com)

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