観光・旅 コラム 2021/12/28

温鉄!! ローカル線に乗って温泉に行こう! 第一回 そうづきょう温泉&錦川清流線(山口県)【後編】元湯・憩の家で100%天然温泉を堪能!

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温泉をこよなく愛する温泉ソムリエ&フォトグラファー中野一行と、ローカル線に乗るのが大好きな鉄旅ライター・やまもとのりこの‟のんびり珍道中”。3回に分けて紹介します。

地方をガタンゴトンと走るローカル線に乗って、温泉へ行こう!

中野カメラマンとワタシ・やまもとの「温鉄」旅、前編では錦川清流線の絶景車窓、中編ではそうづきょう温泉・錦パレスでのワーケーションと焚き火体験をお届けした。

さて今回は……。

第一回 そうづきょう温泉&錦川清流線(山口県)
【後編】元湯・憩の家で100%天然温泉を堪能!

満天の星空のもと、焚き火と温泉コーヒーを楽しんだ我々。

翌朝、朝食後に再び温泉コーヒーを淹れて頂いた。

そうづきょう温泉は入浴するだけでなく、飲用もできる。

温泉水で淹れたコーヒーは、まろやかな酸味とすっきりした香りでとても飲みやすい。

入浴して体に良いのなら、飲んでも体に良いのではないか。

錦パレス支配人の吉本辰夫さんに聞いてみた。

吉本さんは山口県でただ1人の温泉利用指導者の資格を持つ、温泉のプロフェッショナルだ。

「そうづきょう温泉を飲用にした場合、適応症として慢性消化器病などが挙げられます。pH(ピーエイチ)7.65で弱アルカリ性なので、弱酸性のコーヒーと親和性が良いといえますね」。

なるほど、まろやかで飲みやすいのはやはり温泉水だからなのだな。

すいすいと何杯でも飲めそうな味わいだ。

日帰り入浴施設「そうづきょう温泉元湯・憩の家」は錦パレスと同じ経営母体で、歩いて5分。

錦パレスに宿泊すると憩の家の「入湯手形」がもらえて、宿泊した日とその翌日、何度でも入浴することができる。

元湯という名の通り、源泉から湧く温泉水をかけ流しで使っている。

吉本さんにどのような入浴方法が効果的なのかたずねると、「いちばん大切なコツは水分補給。入浴前にしっかり水分を摂ることが重要です」。

憩の家には飲泉場があり、温泉水が湧き出すままに流れている。

コップに受けて飲むと、ほのかな塩気が感じられておいしい。

鉄分が含まれているせいか、金気のような香りもある。

上質のだし汁を味わったかのような、喉に残るミネラルの後味が体に心地よい。

そうづきょう温泉は地下1,000メートルから自噴する天然のラドン温泉だ。

少し青みがかった透明なお湯を手のひらにすくうと、イオウにも似たほのかな温泉香がする。

ややヌルヌル感があるお湯で、湯船に浸かっていると、体の疲れがお湯に溶けて出ていくような感じがする。

ラドンには抗酸化作用があり、体を活性化させるらしい。

冷鉱泉を適温に温めた源泉かけ流しだから、湯口からどんどん出てくるのは天然温泉100%。

水で薄めたりは一切ない。

そして浴槽だけでなく、なんとカランから出てくるお湯も水もすべて温泉。

とても貴重な温泉だ。

浴槽がかけ流しでもカランが水道水の温泉だと、上がり湯をしない方がいいといわれるが、そうづきょう温泉は上がり湯も温泉だから大丈夫。

湯上り後の肌はすべすべだ。

温泉地で楽しむ非日常の癒やし

温泉から上がると、すっかり疲れが取れて元気が出た。

入浴の場合の適応症は、美肌や冷え性、疲労回復など。

入浴後はぐっすり眠れるといわれている。

入ってみて、実にそのとおりだと感じた。

吉本さんによると、そうした温泉の泉質による物理的な効果より、温泉地を訪れるということそのものが心身にプラスになっているのでは、と。

「医学の発達していない昔は、湯治というと何週間も長逗留するものでした。ですが今の時代には、一泊二日程度で定期的に訪れてリフレッシュする……というスタイルがふさわしいのではないでしょうか」。

なるほど。

ただ“温泉に入る”というだけでなく、日常から離れて、自然豊かな温泉地でリラックスして入浴することで、体も心も、芯から癒やされるのだろう。

 

昼食は憩の家のレストランで頂いた。

なんと鹿野高原豚を温泉水でしゃぶしゃぶにするという。

贅沢〜!!

「温泉ポークしゃぶしゃぶ定食」は、税込みで1350円。

ヤマメ、刺身こんにゃく、コーヒーをつけたセットにもできる。

温泉水自体にほのかな塩分やミネラルが含まれているので、肉の表面に被膜ができて、肉のうま味が流れ出さずに閉じ込められる。

昆布を敷いた温泉水を沸騰させ、お肉をしゃぶしゃぶにして、ポン酢しょうゆでいただく。

柔らかくてジューシーな風味がぎゅっと詰まっている。

これが温泉しゃぶしゃぶか!

感動の味。

名物の刺身こんにゃくも、酢味噌に香りのよい蓼が練り込まれていて、山あいの風情を味わえた。

売店にはこんにゃくやお煎餅などの土産もあるが、ここならではのお土産といえるのが「温泉水」そのものだ。

150円のペットボトルを購入し、その場で新鮮な温泉水を汲んで持ち帰ることができる。

持ち帰って自宅で温泉コーヒーを楽しむのもよし、湯豆腐など料理に使うのもよし。

冷蔵庫で冷やして飲むとクセがなく飲みやすくなる。

焼酎やウイスキーの水割りにしたり、氷にして使うのも良い。

ちなみにこの温泉水でご飯を炊いてみたが、粒が立って驚きの美味しさだ。一度このペットボトルを購入しておけば、次回以降の訪問で何度でも無料でこのペットボトルに温泉水を汲めるそう。

ローカル線から新幹線に乗換えられる駅って?!

帰りは錦町駅まで、憩の家の吉本和正会長に送って頂いた。

吉本会長は錦パレスの吉本支配人のお父上だ。

そうづきょう温泉の開湯は今から50年前の1972年。

鉱物資源が豊富な土地柄で、そうづきょうも鉱山の試掘の際に発見されたそうだ。

地域の方々の協力と献身で発展し、この数年でリピーターが増えているという。

確かに、我々が宿泊しているときも、そうづきょう温泉ファンらしき方々が何人も泊りがけで来ていた。

私自身、そうづきょうを発つときからもう、次はいつ来よう……と考えていた。

錦町駅14:19発岩国行きの列車に乗った。

この便も観光徐行対応で、ゆっくり景色を眺めながら列車に揺られた。

広島までのきっぷは、山陽本線経由なら錦町駅のきっぷ自動販売機で買える。

だが今日は行きとは違うルートで帰ることにした。

錦川清流線「清流新岩国駅」から歩いて5分のところに山陽新幹線の新岩国駅があるのだ。

「ローカル線から新幹線に乗換えてみよう!」

だが、清流新岩国駅と新幹線新岩国駅はすぐ近くにあるにも関わらず別々の駅とされていて、通しできっぷを買うことができない。

そこで我々はまず清流新岩国までのきっぷを買って乗車、清流新岩国駅できっぷを運賃箱に入れて下車した。

 

ここが清流新岩国駅である。

静かな無人駅で、春は桜の名所だ。

昔は「御庄駅」という駅名だったが、2013年に現在の駅名に改称した。

ホーム上の待合室は……こ、コンテナ??

実際に使われていたコンテナ車の車掌室部分を改造したものだそうだ。

写真映えしそうだな〜。

ホームから降りて案内板の通りに連絡通路へ。

通路の先まで歩くと、新岩国駅、ありました。

普通に新幹線の駅だよ!

いや〜、のどかなローカル線からいきなり都会にワープした感じ。

新岩国から広島までは新幹線だと1駅、たったの14分。

速い。

行きの岩国までの山陽本線経由1時間はなんだったんだ。

逆に、新幹線を使えばたったの14分で錦川清流線に乗れるんですよね。

「あ、今から錦川清流線に乗ってそうづきょう温泉に行こうかな」と思い立ったらすぐ行ける。

広島から小さな旅でちょうどいい距離。

そして最高の車窓、最高の温泉。

これはリピーターになりますよね!

さあ、次はいつ行こうかな。

 

第一回 そうづきょう温泉&錦川清流線(山口県)< 完 >

 

取材・文/やまもとのりこ
写真/中野一行

 

■温泉と鉄旅を楽しめる関連本■

『ローカル線の旅ガイドブック~愛しの三江線~』(写真右)
著者:やまもとのりこ
発売:2016年12月/ザメディアジョン

中国地方のローカル線の乗り鉄旅に便利なハンディサイズのガイドブックです。

山陰・山陽エリアのローカル鉄道のうち、平成30(2018)年4月に廃線した三江線の情報は貴重。

現在でも重宝したい芸備線・木次線・山陰本線・錦川清流線・一畑電車の6路線の情報を掲載。

持ち運びやすいハンディサイズです。

著者はローカル線鉄旅ライターのやまもとのりこ。

彼女が実際に体験した沿線の見どころ、グルメ、温泉、宿泊を徒歩圏内を中心に紹介。

ただ乗るだけじゃない、“もっと楽しむ” 乗り鉄旅のプランが広がります。

他の路線やバス・タクシーへの乗り継ぎを紹介する乗り継ぎマップ&インフォメーションページも便利。

緑の山々、清らかな川、青い海……三江線をはじめとする中国地方のローカル鉄道を撮り続ける山岡亮治氏ほか、写真愛好家による四季折々の美しいローカル鉄道写真も多数掲載しています。

『温泉ソムリエ・中野一行 厳選 中国・四国かけ流し温泉ガイド&メモ』(写真左)
著者:中野一行
発売:2018年12月/ザメディアジョン

数々の雑誌やメディアの制作にたずさわり、広島を拠点に活躍するフォトグラファー・中野一行。

彼のもう一つの顔は、全国400箇所以上の温泉に入り、中四国の温泉の魅力を知り尽くす温泉ファン。

「温泉ソムリエアンバサダー」をはじめ「温泉入浴指導員」の資格を保持し、「湯原温泉指南役」「別府八湯温泉道・名人」に認定されている。

その中野一行が【厳選】した、『中国・四国地方のかけ流し温泉』のみを紹介するガイドブック。

全62箇所の温泉は、どれも筆舌しがたい最高の温泉ばかり!

中野自身が入って撮って書いた、まさに温泉好きによる温泉好きのための一冊となっています。


やまもとのりこ

やまもとのりこ[ローカル線鉄旅ライター]

ローカル線に乗って旅をするのが大好きなライター。そんな仲間を増やすべく、ローカル線沿線の観光ガイド本を手がけている。著書「中国地方ローカル線の旅ガイドブック」「ローカル線で行こう!鉄旅ガイド」HPは https://writer-norikoyamamoto.jimdofree.com

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中野一行

中野一行[フリーランスフォトグラファー/温泉ソムリエ]

宮城県出身、広島市在住。札幌の写真学校卒業後、東京のスタジオで修行。広島のスタジオで勤務後に2001年からフリーランス。主に雑誌・書籍・広告・Web等の様々な撮影を担当する。飲食店や商業施設の撮影は現在で数千件を超える。また日本で数十人しかいない「2つ星 温泉ソムリエ」でもあり温泉撮影のスペシャリスト。HPは(https://onsen-photographer.amebaownd.com)

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