コラム 2020/09/25

【温泉同好会Reborn】君がッ 泣くまで 語るのをやめないッ! 湯来温泉 湯元 誠の桧湯

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FLAG!切っての不定期不人気連載『温泉同好会』が帰ってきた! 女子ウケなんて気にしない、広島県内のとにかく素晴らしい温泉を旅するワガママ企画。

温泉ソムリエの資格を持つ温泉カメラマン通称『温カメ』が、温泉にはいつまでたっても大して興味を示さない変態的釣り編集者『釣り編』を連れまわしながら、取材という大義名分の下で自己欲求を叶え。。。ゴホンっ。。。あ~いや、とにかくですね、全国に数十人しかいない『二つ星温泉ソムリエ』の情熱的な視点から、読者にも釣り編にも温泉の素晴らしさを伝えたいという思いのみでですね。。。ゴニョゴニョ。。。

二人の今回の目的地は、広島の奥座敷とも名高い『湯来温泉』。いまさら?と言うなかれ。温カメ大興奮の湯が、そこにはあったのです!

めんどくさい男は嫌われるのが世の常

「ジムニーは別格。僕の中ではジムニーという、一つのカテゴライズがあるわけです」

「軽自動車なのに、軽のいいところを全部そぎ落としたような車ですよね」

「燃費、乗り心地、車内スペース。。。すべて時代に逆らっているのに、なお愛される車。ポルシェ、フェラーリ、ジムニー。。。同列に並ぶスーパーカーですよ」

広島市内から国道2号線を西へ向かう車内で、二人のジムニー愛に端を発したカートークが次第に熱を帯びてくる。温泉の話題になると温カメの一方的な講釈が始まり、毎回温泉に入る前にのぼせてしまう釣り編は、他の話題で盛り上げよう必死だ。

とはいえ、同年代のこの二人。高校野球、プロ野球、車、ラジコン、漫画と意外に共通の話題に事欠かない。互いに少年時代には次原隆二のカーレース漫画の草分け的存在『よろしくメカドック』を夢中で読み、『チューン』という言葉の響きだけでウズウズしてしまう。なんだかんだで仲はいい。

「だからね、僕はジムニーに乗っているだけで、その人に一目置いてしまうんですよ」

「無駄だね~と? でもその無駄がカッコいいんですよね。遊びはめんどくさい方がかっこよくて楽しいんです」

「温泉は遊びではないですから、どんな苦難も僕は乗り越えます。ほら、もう到着しましたよ」

自分たちの価値観をなんとか正当化しようとするめんどくさい会話をしながら、広島市内から約50分ほど走らせると、佐伯区湯来町にある湯来温泉の湯来体験交流センター(国民宿舎湯来ロッジの隣)に到着。

「湯来ロッジのお風呂も好きですが、今日の目的湯はまた違うんです」

古い温泉街に現れた新たな湯

湯来ロッジから歩いて5分ほど。少し寂しくなってしまったが、打尾谷川沿いにある湯来温泉街の情緒は、いまもなお残る。その温泉街の中ほどに、温カメが一度は入っておかねばと言う『湯来温泉 湯元 誠の桧湯』がある。打尾谷川にかかる小さな橋のたもとに建てられたこの温泉施設は、2019年12月にオープンしたばかりだ。

「いろいろな方の協力の下で、この温泉が再び陽の目を浴びることができるようになりました」

話してくれたのは、 湯来観光地域づくり公社の佐藤亮太さん。

「湯来温泉は今から1500年前くらいに開湯したと伝わっています。バブルのころ(1980年代)は、温泉街はとってもにぎわっていたみたいで、ちょうどそのころこの場所に『湯元』という無料の共同浴場ができました(1989年)。でも、利用客の減少やマナーの悪化があって2000年に閉鎖されてしまったんです」

そんな湯来温泉湯元の悲しい過去を乗り越え、なんとかして湯元を復活させようと、佐藤さんをを含むプロジェクトチームが結成された。もちろんこのプロジェクトは湯元の復活だけでなく、それを足掛かりに湯来温泉街や湯来町を元気にしていく大きな目的がある。

「クラウドファンディングなども利用し、たくさんの方のお力添えもあって湯来らしい風呂ができました」

かつて林業で栄えた湯来町らしく、その復活した湯元の浴槽や脱衣所などは、すべて湯来町産の檜が使われるというとても贅沢な造りになっている。

施設の中に入って撮影をしている温カメの独り言が、外で話を聞いている釣り編の耳に届く。もはやこれは、独り言ではなく、感嘆の叫び声だ。

「うぉー、なんだこれ。どういうことになってんだ」

ドアを開けた瞬間に漂う湯来の香り

ドアをガチャリと開けて、誠の桧湯の中に入ると大きな檜の浴槽が目に飛び込んできた。満々とたたえられた無色透明な湯。檜のいい香りが鼻の奥に抜ける。これがまさに『湯来らしい温泉』というわけだ。

「撮影はバッチリ、早速入らせてもらいましょう!」

すでにカメラを片付けて浴槽の奥にある檜造りの脱衣所に向かっている温カメに続き、釣り編も佐藤さんも入浴の準備。ほどなくして全裸になった3人。かけ湯をして「さぁ入るぞ!」と釣り編が浴槽に足をかけた瞬間、温カメが佐藤さんに質問を投げかけ始めた。

「ここの源泉はどこから? 浴槽の下を流れている水は? 檜の浴槽管理は大変でしょう。。。」

そんな温泉トークの嵐を待ってましたとばかり、佐藤さんの目がキラリと光るのを釣り編は見逃さなかった。矢継ぎ早に質問を投げかける温カメに対し、丁寧に打ち返すように適格な位置へ最適な説明を始める佐藤さん。さらにそこへ質問をかぶせる温カメ。まるで5歳当時の愛ちゃん(福原愛)が毎日の練習でやっていたラリーのようだ。試合に負けて泣く顔は、その会話を隣で聞いている釣り編の表情と被る。

終わることのない温カメの質問に、笑顔で答える佐藤さん。なにかこの二人様子が変だ。。。温泉を前にして湯にも浸からず、全裸のおっさん二人が喜々とした表情で止むことのない温泉トークを続ける異様な時間。

結論から言うと、なにを隠そう実は佐藤さんも『温泉ソムリエ』の資格を持つ、温泉大好き人間なのだ!

「なにも真っ裸で、温泉に入る前に話さなくても。。。待ってらんねぇ」

釣り編は二人の熱気をよそに、ゆるゆると誠の桧湯を堪能しはじめた。前述したような、まさに無色透明という表現がぴったりのとてもきれいな湯。檜の香りと湯口から注がれる源泉かけ流しの湯が、チョロチョロをいい音を立てている。温泉にたいして興味がない釣り編でも、さすがにこれだけ連れ回されていると、この程度は温泉の良さを感じられるようになってきたようだ。

「源泉かけ流し温泉の良さは、耳で楽しむことも重要なのです」

温カメが以前言っていた言葉が、なんとなく腑に落ちた。湯や見た目はもちろん、鼻でも耳でも楽しめる温泉が、広島市内からこんなに近い場所にあるだなんて!

貸し切りだからこそ味わえる本物の良さ

3人のおっさんが肩を並べて湯に浸かり、話しをしながら流れるゆっくりとした夏の午後。仕方ない、これも仕事だもの。決してサボってるわけではないのだもの。

周りを気にしないで温泉を楽しめるのは、「誠の桧湯」が予約制の貸し切り湯だからこそ。それもここの温泉の特徴であり大きな魅力だ。予約をしたら、湯来ロッジの隣にある湯来体験交流センターで受け付けを済ませ、施設のカギを預かる。あと誠の桧湯を目指して温泉街を散策すれば、それだけでもなんだか楽しい。

熱くなったら浴槽に腰掛け、佐藤さんが話す温泉の魅力と、湯来や山里のすばらしさに耳を傾ける。都会と比べると、きっと不便なところも面倒なことも多い地域。それでも温泉を足掛かりに湯来ににぎわいを取り戻したいという情熱と行動は、周りから見るととっても楽しそうで、それでいてカッコいいのだ。

 

半分のぼせながら、浴槽から出たり入ったりを繰り返す釣り編をよそに、二人の温泉ソムリエは終わることのない温泉談義を続ける。数々の温泉に入ってきた達人たちを魅了する、貸し切りの源泉かけ流し温泉「湯来温泉 湯元 檜の湯」。紅葉のシーズンにでも、一度は入っておきたい広島が誇る名湯だ。

 

湯来温泉 元湯 誠の桧湯

電話 0829-40-6016(湯来体験交流センター)
住所 広島市佐伯区湯来町多田2563-1(湯来体験交流センター)

※誠の桧湯はここから徒歩5分ほど

営業時間 予約は10:00、11:30、13:00、14:30、16:00の1日計5回(1回60分)
料金 1回3000円(4名まで)

※6名まで同時利用可(追加料金は大人750円、子ども450円)

休み 月曜(休日の場合は翌平日)
HP https://yuki-yumoto.com/

 

 

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中野一行

中野一行[フリーランスフォトグラファー/温泉ソムリエ]

宮城県出身、広島市在住。札幌の写真学校卒業後、東京のスタジオで修行。広島のスタジオで勤務後に2001年からフリーランス。主に雑誌・書籍・広告・Web等の様々な撮影を担当する。飲食店や商業施設の撮影は現在で数千件を超える。また日本で数十人しかいない「2つ星 温泉ソムリエ」でもあり温泉撮影のスペシャリスト。HPは(https://onsen-photographer.amebaownd.com)

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