ライフスタイル 2021/01/09

店名は小説のタイトルをオマージュ! 自分だけの一枚が見つかるヴィンテージワンピース500着のクローゼット【古着屋 ミミズク/尾道市三軒家町】

タグ:
  • ワンピース
  • 三軒家アパートメント
  • 古着屋ミミズク
  • 尾道
  • 広島
  • 本と出合う
  • 本と暮らす

ワンピースは、いつだって女性にとって特別な一枚だ。
初めてのデートの日、大切な人のお祝いの席、ちょっと背伸びしたレストランに行くとき。
「きちんとした人だな」
「きれいな人だな」
そんなふうに映るといいなと願いながら、つい手を伸ばす。

今と昔が混在する尾道市三軒家町に、ヴィンテージのワンピース専門店があると聞き、ワクワクする気持ちを抱え訪れてみた。

その名も『古着屋 ミミズク』。
店名の由来は、店主が好きな小説のタイトルが由来だとか。
その話は、後半で。

写真を撮りたくなる小路に佇むアパートメント

向かったのは、JR尾道駅北口から徒歩3分の場所にある『古着屋 ミミズク』。

マッサージ店や古道具屋、ギャラリースペースが入った複合ショップ『三軒家アパートメント』をさらに奥に入った、レンタル着物店『乙女屋』の一角にある。

三軒家アパートメントも乙女屋も、古いアパートを改装した空き家再生施設。
人の手で長く慈しんできた建物だけに宿る、独特の温かさが漂う。

狭い路地裏を探検気分で進むと、建物と一緒に目に飛び込んでくるのは、古びた空き瓶や懐かしいデザインの家具。

レトロさを演出するためにあえて置かれたものだろうけど、その雑多な感じと、遊び心の詰まった空間が奇妙に心をくすぐる。

昔ながらの番地札やすりガラスなど、古い建物の様式も見どころのひとつ

古着屋 ミミズクのオーナー佐古田美咲さんも、このエリアに心奪われたうちの一人だ。
佐古田さんは、もともと学生時代から古着が大好きで、お小遣いを貯めては東京や大阪の古着ショップへ足を運んでいたそう。

「古着って、今では見かけないような斬新な柄や珍しいボタンがついてたりするんです。見えないところにギャザーが入っていたり、裏地まで凝っているような丁寧な作りも素敵だなと思います」。

いつか古着屋ができたらいいなと漠然と考えていたそうだが、高校卒業後は学校のすすめもあり地元のスイーツ店に就職。
ところが就職先が急な業務拡張で別業態にも乗り出すことになり、その仕事にまったく興味が持てなくなったため退職を決めたという。

黒髪が印象的な佐古田さん。少女のように儚げなたたずまいに目を奪われる

「そんなときに思い出したのが、三軒家アパートメントのことでした。実は学生時代このエリアが好きで、よく通っていたんです。しだいに店舗のオーナーさんたちと仲良くなり、いつか古着屋をやりたいという夢を語るようになりました。それなら、アパートメントの店舗が空いてるよ、ここでやればいいよと言ってくださって。あぁ、仕事を辞めた今が、あのとき本当にやりたかったことを始めるチャンスかもしれないなと思って」

はじめは三軒家アパートメントの一室で、そののち乙女屋の隣接スペースで店舗を運営するように。
お客の中には乙女屋のシックな着物、そして古着屋 ミミズクのヴィンテージワンピースを求め、ハシゴする人もいるのだそう。

個性豊かなワンピースが500着

店内の様子。ワンピースは1960年代~1970年代のものを中心にセレクト

迷いながら探す時間も楽しい

店に入ると、ずらりと並ぶワンピースの数々。
花柄、幾何学模様、ドット、ボーダー、ペイズリー。
クラクラするような色の洪水は、強く視線を引きつけ、捉えた心を離さない。

「古着の中でワンピースだけ集めたのは、単純にいちばん好きだったから。生き物なのか植物なのか、よくわからないような模様もあるでしょう。それから、一枚一枚雰囲気がガラリと変わるし。そんなところが魅力なんです」。

チョイスに迷ったら佐古田さんに相談を。似合う一枚を見立ててくれる

そういえば若かりし日の私の母もまた、こんな一枚を纏っていたな……。
ツルリとした生地の手触りを楽しみながら、ふと懐かしいような気持ちが沸き起こる。
家族で遊園地に出かけた時、地元で人気のデパートへ行ったとき、母はいつも色鮮やかなワンピースを着ていた。
服に負けないような、とびきり華やかで美しい笑顔を浮かべて。

思いを巡らせながら店内を見渡していると、街中や公園でさまざまなワンピースを身につけた女性の写真が目に留まる。

「これは?」と佐古田さんに尋ねると、知り合いや常連客にモデルを頼んで、店おすすめの一枚を着てもらいSNSにアップしているのだという。

「店の広告が目的で始めたことなんですけど、そのうち街の景色も良いねって言ってもらえるようになって。尾道の観光案内ではないけれど、似たような役割も果たせたらなって思ってます」。

写真の女性たちは皆個性的で、それぞれのタイプにぴたりとはまった装いを見せている。
眼差しに強い光のある女性は原色の凛とした一枚を、ガーリーな女性は羽のように柔らかな素材の一枚を。
なかなかどうして、それらの写真は街のストーリーとともに、そこで生きる女性たちのリアルな息づかいをも感じさせる。

いろいろなバリエーションのポートレートはワンピースコーデの参考にもなる

尾道の街に溶け込むようなワンピースの女性が想像力をかきたてる

カバンは販売している商品

「これっていう決まりがあるわけじゃないから、その人らしく着てもらえたら嬉しいです。一枚で着てワンピースの特徴を際立たせてもいいし、カーディガンやタートルネックと合わせてカジュアルにしてもいいし。小物も色々そろえているので、自分らしい着方を見つけてくださいね」。

地元の作家によるアクセサリーや服と同年代のバッグも

今の自分よりもワンランクツーランク上に見せてくれる勝負服がワンピースだと思っていたけれど、もしかすると、いちばん等身大の自分を映す服なのかも。
見方が変わると、少し敷居が高く感じていたワンピースがぐっと身近に思えてくる。

私だけのリアルクローズを、ここで探してみようかな。

そしてその一枚を纏ったとき、あの日の母と同じくらい、幸せで満ち足りた表情を浮かべているようにと切に願いながら。

■店主おすすめの本■

『ミミズクと夜の王』(作:紅玉いづき/発刊:メディアワークス)

自分のことを「ミミズク」と名乗る死にたがりやの女の子と、人間嫌いの夜の王のファンタジー。

中学生の頃初めて手に取り涙した、思い出の一冊です。

全体的に童話のようなテイストでピュアな感情に溢れています。

大人になった今でも再読するたび涙が込み上げます。

絶望の中にあっても希望の光が見えるような、悲しくて、せつなくて、優しいお話。

ミミズクが歩みを進めるごとに自分を知り、他者の思いに気付けるようになるところに心をつかまれます。

私もまた、そんなミミズクのように成長していければと、店名に同じ名前をつけました。

人生の節目節目で読み返していきたいし、そのたびに新たな気付きがあるだろうと思える、大切にしたい物語です。

 

店名 古着屋 ミミズク
住所 広島県尾道市三軒家町2-5
電話番号 080-6339-3339
営業時間 12:00~18:00
休み 不定
SNS TwitterInstagramFacebook

<古着屋ミミズク YOUTUBE>

 

取材・文/浅井ゆかり
写真/福角智江

 

紹介したお店はこちら


関連記事

  • 関連記事はありません
  • トップに戻る