映画『Fukushima50(フクシマフィフティ)』 佐藤浩市「この国で生きている以上は、見ていただくことは大事なことの一つ」
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先日、3月6日公開の映画『Fukushima50(フクシマフィフティ)』の記者会見が広島市内(広島県)で行われ、佐藤浩市、萩原聖人、若松節朗監督が登壇した。同作品は、ジャーナリストの門田隆将のノンフィクション『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』(角川文庫刊)が原作となっている。9年前の東日本大震災発生時の福島第一原発事故では、いったい何が起こっていたのかを忠実に当時の様子を完全再現した。
記憶して継承していくことが大事
リアリズムを求めたという若松監督は「現実にあった事故を再現するという点で、ドキュメンタリー性が強いのではと思われるかもしれませんが、その中で、やはり映画で伝えなくてはならないことを付け加えて、作りました。観ていただくお客様たちの身近な感じを作るために、家族の話などの作り物を入れています。風化させずに継承していくきっかけになるような映画を目指しました」と胸の内を明かした。
そのリアリズムゆえに、東日本大震災を認知している方や、被災された方の中には、観るに堪えない場面もあるだろう。しかし、観ていただくことで記憶を継承していくことが、何よりも大事なことだという。佐藤は「(この映画が)DVDになったときにでも、ゆっくりと観ればよいと思っています。今でなくてもいいって僕が言うのもおかしいですけど」と映画配会社に気を遣いながらも「何かの形で必ず、この国で生きている以上は、見ていただくことは大事なことの一つだと思います」と強調した。続けて監督も「長いスタンスで、この記憶を引き継いでいくことが大事かなと思います。そして、原子力発電所とはどういうもので、震災時にどうなったのか。これからの未来を担う世代に知っていただくことも大事だと思っています」と思いを語った。
題名は原発事故後も最後まで現場に残り、過酷な作業を続けた約50人を、海外メディアが「Fukushima50(フクフィマフィフティ)」と称えたのが由来だ。佐藤は「(震災発生時から)五日間、現実に中央制御室にいたメンバーの人たちは、1分1秒後に何が起こるか分からない中で、どういう思いを背負いながらいたんだろうか。それをどうやって観る人たちに伝えられるか。伝えなくてはいけないのか。そういう緊張の中で演じました」と重圧の中で演技に挑んでいたことを明かした。いっぽう、若松監督は「死の淵に立ちながらも、自ら志願して線量の多い場所へ入っていく。死を覚悟して入っていく。その日本人の生き方、あり方は一体何だろうか。もう一度、再認識していただきたいです」とコメントした。
公開まで残り10日ほど。福島第一原発の事故から9年の月日が経ち、当時の心境と、演じてみて心境の変化はあったのだろうか。佐藤は「僕らの知らないことが多すぎました。そして、あれだけのことがあったにもかかわらず、これは日本人の美徳かもしれないけど、なんとなく〝まあよかった、とりあえず終息したんだからいいじゃない″で、終わってしまったような気がするんです。知ろうとすること、そしてみんなで考えるという行動自体が、大事なんじゃないかなと思うようになりました」と呼びかけた。また、萩原も「9年が経って、(震災を)知らない子どもたちが小学生になっていたりするので、いろんな人、たくさんの方に見ていただきたいです」とアピールした。
震災や天災は必ず起きうるものだという認識を改めて再認識することにより、埋もれていた、もしくはやみくもにされた問題が再度浮き彫りになることがある。「知っているから」ということがいかに大事で、そして次への最善の行動につながるのだとすれば、今作品を観る価値は十分にある。
<STORY>
マグニチュード9.0、最大震度7という巨大地震が起こした想定外の大津波が、福島第一原子力発電所(イチエフ)を襲う。浸水により全電源を喪失したイチエフは、原子炉を冷やせない状況に陥った。このままではメルトダウンにより想像を絶する被害をもたらす。1・2号機当直長の伊崎ら現場作業員は、原発内に残り原子炉の制御に奔走する。全体指揮を執る吉田所長は部下たちを鼓舞しながらも、状況を把握しきれていない本店や官邸からの指示に怒りをあらわにする。しかし、現場の奮闘もむなしく事態は悪化の一途をたどり、近隣の人々は避難を余儀なくされてしまう。
官邸は、最悪の場合、被害範囲は東京を含む半径250㎞、その対象人口は約5,000万人にのぼると試算。それは東日本の壊滅を意味していた。
残された方法は“ベント”。いまだ世界で実施されたことのないこの手段は、作業員たちが体一つで原子炉内に突入し行う手作業。外部と遮断され何の情報もない中、ついに作戦は始まった。皆、避難所に残した家族を心配しながら―
<CAST>
出演:佐藤浩市、渡辺謙、萩原聖人 ほか
監督:若松節朗
脚本:前川洋一
音楽:岩代太郎
原作:「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」門田隆将(角川文庫刊)
配給:松竹、KADOKAWA
© 2020『Fukushima 50』製作委員会
2020年3月6日(金) 全国公開
<『Fukushima50(フクシマフィフティ)』公式HP>
堀友良平[株式会社ザメディアジョンプレス 企画出版編集・FLAG!web編集長]
東京都出身。学研⇒ザメディアジョンプレス。企画出版、SNS、冊子などの編集担当。書籍「古民家カフェ&レストラン広島」などのグルメ観光系や、「川栄李奈、酒都・西条へ」などのエンタメ系なども制作。学研BOMB編集部時にグラビアの深さを知りカメラに夢中
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