ライフスタイル 2020/09/24

【ホリデイ書店/廿日市】本をつなげる仲介役に 町の小さな古本屋さん

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JRに乗って車窓から外を眺めていると、廿日市駅の辺りで青色のテントに書かれた「ホリデイ書店」の文字が目に飛び込んでくる。ずっと気になっていたそのお店に行ってきました。

お客様の顔を見て仕事がしたくて

「店の名前は、誰が見てもすぐ読めるようにカタカナにしようって決めていました。あとは本屋だと分かるように書店か書房の言葉を入れたくて」と話してくれるのは、ホリデイ書店店主の宮本ひろみさん。かつては鮮魚店だったというこの場所に店を構えて、もうすぐ4年になる。

JR廿日市駅から歩いて2〜3分の場所。青いテントは鮮魚店の名残だそう

それまでは会社勤めをし、ネット通販の部署でネット本屋を担当していたが、部署の規模が縮小されたタイミングで、思い切って以前からやってみたかった古本屋をオープンすることを決意したそうだ。

店主の宮本ひろみさん

「会社でも本を売っていましたが、ネットだとお客様の顔が見えないんですよね。年に数回出展していた一箱古本市で、直接お客様と話をしながら本を売ることが楽しいと思い始めて。そのまま趣味でやっていても良かったんですけど、楽しいだけじゃつまらないから、ちゃんとお店を構えてやってみたいと思うようになりました」。

廿日市駅から近いこの場所が早く決まったため、オープンしたのは退職からわずか一週間後。最初は自分の蔵書や知り合いに声を掛けてゆずってもらった本を並べて開店したところ、量の少なさにいろんな方に心配されたのだとか。SNSでの発信や宣伝なども行っていなかったため、なかなか気づいてもらえず「とても大変でした」と当時を思い出し、しみじみと話してくれた。

4年経った今、店内に約2000冊、別の場所にある倉庫には8000冊近くの本がある。

雑貨と古書、ときどき新刊

昔ながらの町の本屋さんといった雰囲気のお店に入ると、すぐ目に入るのが丁寧に並べられた雑貨たち。手作りマスクやマスクにつけるチャーム、ブックカバーやトートバックなど4~5人の作家さんの作品を販売している。


そして、所狭しと本棚に並ぶのが文庫本、暮らしにまつわる本、児童書から人文学、民俗学などの本。見る限りあまりマニアックな本はないかもしれない。でも、手に取りやすい、馴染みのあるタイトルや作家の本がそろっている印象だ。

宮本さんが好きな作家・村上春樹のコーナー

「暮らしの本は一番動く棚なんです。いろんな仕事、考え方のお客様がいらっしゃって、皆さんそれぞれに生活スタイルがあるけど、何かをして暮らしていくということは一緒だと思います。ものすごく珍しい本があるわけでもないし、いわゆる『古本屋』らしくはないかもしれないけど、古本を趣味としている人というよりは一般の人に本に親しんでもらいたい気持ちが大きいから、そこはブレないようにしたいですね」。

棚には古本だけでなく、宮本さんがセレクトしたおすすめの新刊も。
「お客様のニーズに合わせて揃えていった感じです。絵本の新刊は最初はなかったんですけど、お客様が求められていたので入れるようになりました」。

なかでもZINEやリトルプレスといった最近よく目にする小規模の出版物が目に留まる。熊本にある橙書店が出版した「アルテリ」を手にしていると「友達と一緒に橙書店さんに行ったんですよ」と弾んだ声で話してくれた。宮本さんの本当に本が好きな気持ちが伝わってくる。

また、「狭いのも一つの魅力。何百坪、何千坪という広いと場所だと、私は圧倒されて探すのに疲れてしまうから。10分あれば全体をざっと見ることができるのもうちの良さかな」と笑う。

店内にはカフェスペースもあり、コーヒーやルイボスティー、ゆず茶などを味わいながらゆっくり過ごすことができる。コーヒー豆は「地産地消にこだわっています」と、廿日市市内のお店から取り寄せたものを使用しているそうだ。

誰かの「いい本」を仲介する場所に

古本ならではの魅力ってなんでしょうか? と尋ねると「この本がいいって思って買った人が、本を読み終え、誰かに読んでもらいたいと思ってお店に持ってきてくださる。その本をまたほかの人が手に取って買われる。誰かがいいと思っている本なのが前提。その仲介役をするのってなんだか楽しいですよね」と笑顔で答えてくれた。
言葉にされると、古本屋さんってそれが魅力なんだなと改めて感じる。


最後に今後やりたいことを聞いてみた。
「ずっとこのお店を続けたいですね。いろんな人に来ていただきたい。そして、いつか自分でリトルプレスのような形で何かを残せたらって思っています」。

宮本さんのリトルプレスにいつか出合える日を楽しみにしたい。

 

■おすすめ本■
『雑居雑感』(著者:田中謙太郎 発刊:弐拾dB)

尾道市の古本屋「弐拾dB(にじゅうでしべる)」さんによって創刊されたリトルプレス。かつて尾道市にあった2つのマーケットについて、そこで生活していた人々に話を聞きながら当時の古い写真とともに綴ったもの。消えてゆく町並みとかつてあった人の営みが描かれている。「懐かしい感じが漂ってきます。昔は草津のあたりを市電で通ると、魚のにおいや魚の天ぷらの匂いなんかがしてたんですよね。そんなことを思い出しながら読みました」

(取材・文/衛藤潮理)

店名 ホリデイ書店
住所 広島県廿日市市城内1-7-6
営業時間 11:00~17:00
定休日 日・水曜
お問い合わせ先 0829-20-5284
HP http://holidaysyoten.com

 

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