ライフスタイル 2020/12/21

【2020年のうちに読んでほしい一冊】カリスマ編集長『VOGUE』アナ・ウィンターのドキュメント本『Front Row アナ・ウィンター ファッション界に君臨する女王の記録』

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Front Row アナ・ウィンター ファッション界に君臨する女王の記録は、ファッション雑誌『VOGUE(ヴォーグ)』のアメリカ版編集長を務めるAnna Wintour(アナ・ウィンター)のバイオグラフィー本です。

ファッション界で不動の地位を築き「氷の女王」と呼ばれる彼女の生い立ちや、現在のポジションへたどり着いた経緯にクローズアップした貴重なドキュメント本で、344ページと分厚い。今年の年末年始は外出を控えて、家でゆっくりと過ごす方には、読み応えたっぷりな一冊です。

著者は、アメリカのアイコン的な人物を追いかける伝記作家、ジェリー・オッペンハイマー氏。

アナに関わった人々の著者やインタビューを元に構成された本ですが、この本の出版にあたって、アナ・ウィンター本人からのコメントはもらえなかったそうです(でしょうねってぐらい悪口てんこもりなので)。ただ、それはアナへの敬意と愛があってこそ。

逆境をはねのけるポジティブ思考

内容は、主に雑誌『VOGUE』編集長就任以前の事が詳しく語られていて、友人や同僚、親族、恋人たちに徹底したインタビューを取り、アナの少女時代から2004年まで、彼女の仕事ぶりやプライベートなことまでかなり細かく紹介しています。

今やVOGUE史上最高のエディーターであり、たった一人で1600億ドルの産業を動かすアナは、世界各国のデザイナーたちに多大なる影響を与え、世界のファッションの流行は、彼女が作っているといっても過言ではないほどのカリスマ編集長まで上り詰めました。

「ファッション界の女帝」とまでいわれる彼女を通して、アメリカの雑誌業界の変遷をも知ることができ、またファッション界の裏の部分も詳しく書かれていて、時代の流れとともに流行を先読みして生きるアナの生き様はただただ圧巻です。

憎まれ、疎まれ、拒否され、それでもめげずに這い上がる凄さは、本当に精神的に強いというかポジティブというか……。ありのままの野心、行動力、競争心、貪欲さがあったからこそ、現在のアナがあるのだろうと感じました。ただ、書かれている内容があまりにもえげつないというか……アナがモデルとなった映画『プラダを着た悪魔』よりも、さらに上をいく恐ろしさも(笑)。

ただ、インタビューを受けているほとんどの方が悪く言いながらも、アナの魅力にいつの間にか取り付かれていることは確かで、憎まれながらも魅力的な人物であり、またその仕事振りは尊敬に値しているからこそ、彼女の周りには人が集まるのだろうと感じます。

15歳の頃から伝説のディスコ『スタジオ54』で大人のナイトクラブを楽しみ、業界関係者たちと親交を深め、ファッションが好きだった頃から体型もキープ。10代の頃には、すでに目標を決めて『VOGUE』編集部に入ることを目指し、また夢はアメリカ版編集長になること。その目標、夢を叶えるべく『BIBA』『ハーパス・バザー』『VIVA』『サヴィー』など雑誌業界で浮き沈みを重ねながらも着実にキャリアを重ねていきます。

彼女の人生の転機となったのは週刊誌『ニューヨーク』のファッションエディターになったこと。雑誌業界に入ってから10年で、ようやく掴んだ輝かしいキャリアの一つです。しかし、彼女は10代の頃に決めていた目標と夢のために、その後も奮闘し続け、34歳の頃に目標であったアメリカ版『VOGUE』で働き始め、1988年、ついに夢であったアメリカ版編集長の座にまで上り詰めます。

時代を先読みして行動する力強さ

本誌を読み進めていくと、現在の輝かしい評価の陰には、地道にコツコツとキャリアを築き上げてきたプロセスがとてもか分かりやすく、思い通りにならないことが多い中、一つのことを着実に続けてきた末に成功を勝ち取ったということがよく分かります。

目先の仕事を着実にこなし、ステップアップしていくことによって、本来の夢に近づいていく貪欲さと努力と、したたかさ。自分のライバルたちが何をしているのか。将来のライバルになる人物は誰なのか。とにかく世間に目を光らせているあたりが、アナ・ウィンターらしい。

多くの若者が、自分の夢を追いかけながらも夢半ばで潰れて諦めていく、または夢もなくただ好きでもない仕事で働いている人が多いなか、自分の夢、目標を若いうちに持ち、他人には譲れないこだわりを貫き、批判こそを逆に誇りと感じて生きていく。

この一冊は、このような世界情勢の中でも様々なことで頑張っている方はもちろん、女性には特に読んでほしいです。

「自分が何者であるかを正確に覚えておかなくてはならない。そしてパニックにならないこと」「自分自身や自分の仕事について情熱的で他人に伝えることができなければ、誰もそれを評価しない」「私は成り上がるために女性であることを利用して登りつめた」「誰でも1回はつまずくべきよ。絶対に良い勉強になるから」

数々の名言を残している、現在もなお現役で活躍するアナ・ウィンターの生き様をぜひ堪能してもらいたいです。

 


徳田亮

徳田亮[株式会社ザメディアジョンプレス デザイン・企画編集]

広島県出身。ブライダル情報誌『Be Bridal』編集担当。その他冊子やパンフレットのデザイン・編集を手掛ける。1年中旅していたい。人生満喫!

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