新しい観光のカタチを模索する「未来を旅する編集会議」
- 広島観光
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、異例の緊急事態宣言が発令されてから約1か月。
日本全体で外出自粛となり、経済が急に止まった。飲食店や娯楽施設などが経済的な大打撃を受ける中、観光産業もまれに見ない危機に陥っている。
そんな中でも人々は知恵を絞り、飲食店はテイクアウトやデリバリーを開始し、観光はオンラインでの町のPRに力を入れている。
世界中が危機に陥ったコロナ禍。これを機会に、働き方や価値観というものが大きく変わっていくと指摘する学者や評論家は多い。
それはおそらく、観光という概念も変わってくるのではないだろうか。
観光の新しい概念
2019年4月に発刊した書籍「未来を旅するHIROSHIMA」の著者・未来を旅する編集会議。未来を旅する編集会議は、「地域と関わる新しい旅のカタチ」というコンセプトを掲げ、人と地域の関わり方を提唱するFRASCO代表取締役の尾崎香苗さんを中心に、広島の中山間地域で活躍する若者たちと一緒に、その地域の魅力を発信し続けている。
その活動の序章となる1冊が「未来を旅するHIROSHIMA」だ。旅といえば観光も含まれるが、本誌では、地域と人と密接に関わることも「観光」の一つだと提案している。
尾崎さんは「里山では地域と混じり合い、自分がエンパワーされる経験ができました。余白がある旅といった感じでしょうか。(中略)そんな旅のカタチを伝えたい」(本書より抜粋)という思いのもと、ツーリズムの企画なども考えていた。
しかし、今こうした状況下で、里山へ行くことはできず、人に会うことすら難しい。そして、この見えない不安は、たとえ段階的に日常に戻ろうとしても、なかなかぬぐえない気がする。彼女は今、どうしているのか。
マイクロツーリズムと地域の関わり方
そんなある日、尾崎さんがYOUTUBEを使って、何やら楽しそうにアクションを起こしていた。
「今は里山に行けないので、行けないなら里山から魅力を発信してしまおう! ってことです(笑)」と、笑顔で話してくれた尾崎さんはウェブ会議サービスの画面先にいる。
「メンバーとは真夜中の編集会議というのを行っていて、こうした状況でも地域の魅力を伝えていきたいと話し合ったときに、食べ物の話題になったんです。それで、里山の食材を使った料理を紹介しようってことになり、実際にレシピを紹介して調理するところも配信することにしました」と、動画配信を始めたようだ。
その名も「未来を旅するキッチン」。第1回目は「江田島市のみかんとオリーブ特集」と題して、ジャムやオリーブを使ったレシピを紹介していくのだが、レシピを考案し紹介する先生がマイペースでおもしろい。動画もコミカル。例えば、今後は地元から編集メンバーが配信するといったように、それぞれの地域で毎回レシピを変えながら紹介したいという。
尾崎さんは「こうしたオンラインやSNSを駆使したとき、旅のカタチは変わっていくような気がします」というように、実際、和歌山・熊野のゲストハウスが「熊野旅行のきっかけになれば」と、「オンライン宿泊」を始めた例もある。ウェブ会議サービスを使い、スタッフによる施設案内や観光スポット紹介、参加者との交流など、旅先での出会いを疑似体験するサービスだ。
尾崎さんも「いつか里山に来てもらうきっかけになれば」という思いで配信。静止画ではなかなか伝わりづらい「人と人のつながり感」を上手に動画で表現している気がした。そして、段階的に規制緩和されていく中で「マイクロツーリズムがしばらくは主流になる気がしますし、プライベート化も進むかと思います」と、今後の観光のカタチも変化していくとふんでいる。
マイクロツーリズムとは、身近な地域を旅先として選び出かけること。県をまたがずに、広島市内在住であれば尾道や福山、または大崎上島といった島々などに出かけるイメージだという。また、プライベート化については「リモートの概念が、よりプライベート化を進める気がする」という。どこにいても仕事ができることがわかれば、例えばリゾート先でもできるだろうという考え方だ。
実際、志摩では都市圏の企業に向けて、海が見えて自然に囲まれたオフィスを貸し出している不動産もある。そうした動きの中で「私たちは里山の魅力を発信したいので、世の中の流れを敏感に感じ取ってをサポートできるようにしたいです」と、いろいろと模索しているようだ。
「現地に赴いて名所をめぐるだけが観光ではない」と思えば、観光の概念は大きく変わる。「未来を旅するHIROSHIMA」では、観光は「人」と出合うこと、「人」に会いに行くカタチをサポートしている。
さて、あなたにとっての観光とは、どんなカタチですか?
未来を旅するHIROSHIMA
書名 | 未来を旅するHIROSHIMA |
著者 | 未来を旅する編集会議 |
内容 | 観光であって、観光でない。地域にディープに関わると、来た人も地域もエンパワーされる。そんな旅のカタチを地域のチャレンジャーな若者や地域に関わる仕事人から紹介します。 自然やアート、景観の美しさと時間の余白、そしておしゃべり好きな若者達が揃えば、素直な気持ちに気づき、自然と自分と地域の未来に出会えます。 |
発刊 | FRASCO |
HP | https://frasco-co.jp/ |
購入先 | Amazon |
尾崎香苗さん
未来を旅する編集会議 編集長。テレビリポーター時代に取材の中で地域のおもしろさに触れ、まちづくり出版会社に入社。地域活性化プロデューサーとして事業に関わり、2019年に起業。人と地域の幸せの化学反応を起こす、株式会社FRASCO代表取締役。
堀友良平[株式会社ザメディアジョンプレス 企画出版編集・FLAG!web編集長]
東京都出身。学研⇒ザメディアジョンプレス。企画出版、SNS、冊子などの編集担当。書籍「古民家カフェ&レストラン広島」などのグルメ観光系や、「川栄李奈、酒都・西条へ」などのエンタメ系なども制作。学研BOMB編集部時にグラビアの深さを知りカメラに夢中
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