エンタメ 2019/05/13

【インタビュー】映画『轢き逃げ』、中山麻聖「色んな角度で見てほしいなと思います」

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希代のアクターであり、映画監督を務めるなど唯一無二の表現者である水谷豊さんの監督二作目であり、今回は初めて脚本も担当した映画『轢き逃げー最高の最悪な日―』。誰もが巻き込まれてしまう可能性を孕んだ事件を題材に、日常的なスリルや悲哀が、スクリーンに炙りだされていく極限の人間ドラマに仕上がっています。

この作品で、450人を超す応募者の中からオーディションで選ばれて、主演を務めた俳優の中山麻聖さんに、5月10日の全国公開を前に、作品への想いや映画のみどころなどを伺ってきました。

色々な立場を考えたオーディション

映画のオーディションを受ける際、初めは水谷豊監督・脚本作品ということも全く知らず、作品内容自体も知らないままに、オーディションに臨みました。事前に渡されたのは、主役の秀一と輝の2人のかけ合いとなる場面が書かれた台本の一部で、「オーディションでは、両方を演じてもらいますので、どちらも覚えてきてください」それだけ伝えられました。

オーディション当日まで、秀一を演じるのか、輝を演じるのか、あるいは両方を演じるのか……。何も分からない状態で、頼りになるのは事前に渡された台詞とト書きの一部だけ。もしかしたら一度限りの演じる時間になるかもしれないけど、そこに書かれた台詞からト書きまでの言葉から、登場人物のバックボーンなどを自分なりに解釈し、いろんな物を創造して、自分なりに意識して演じることができるように取り組みました。秀一と輝の立場、どちらも非常に難しく、そこだけ忘れずにいるのと、全体を知るのとでは印象が変わってくるので、よく覚えてます。2人の関係性も全く見えず、どれぐらいこの2人は仲が良いんだろうか、どれぐらい仲が良いから、この気持ちを吐露する場面があるんだろう。あるいは、吐露できたのか……。いろんな事を、たくさん考えました。

オーディションを受けて、1ヵ月後ぐらいに、合格の連絡をもらいました。その後、台本の準備稿をいただいてページをめくったら、監督が水谷豊さんであり、作品の脚本も水谷さん自身が手掛けられていることを、そこで初めて知りました。さらにもう1ページめくったら、そこには自分の名前(中山麻聖)が書かれていて、そんな凄い作品で、自分が主演を務めるのか……、もう驚きしかありませんでしたね。

オーディションは、現場で水谷さんに直接演技を見てもらって選んでもらった訳ではなく、オーディション映像を見て選んでもらったんです。普段役者さんをされている水谷さんに映像を見て選んでいただいたのは、凄くうれしかったです。

水谷監督との初めての出会い。そして演じる上でのアドバイスとは

水谷監督とは、昨年(2018年3月)の撮影前の顔合わせで、初めてお会いしました。当日、僕の身の周りではいろんな事が起きて、それもあって緊張して、全てを忘れるくらいでした。ただひとつ覚えているのは、最初ご挨拶した時、監督の方から凄く素敵な笑顔で「よろしくね」と言われ握手をして、監督の表情を見るとそれまでは「これからどうなるんだろう」と抱いていた不安が、一気にすっと引いていくような優しい感じを覚えました。良かった、素敵な人だった、それだけはハッキリと覚えています。

自分の心の中にあった、これからどうやって行こうと言う思いや迷い、そんなネガティブな考えから一転して、どうやって作っていこうかと言うポジティブな、気持ちになりました。

また監督の方から「自分の価値観に固執するのでなく、フラットな気持ちで現場で臨んでほしい」と言われて、三回あった本読みで、自分の中で秀一はこんな人だから、こんなイメージで決めつけるのでなく、「こうかもしれない」でも「こういう感じもあるかもしれない」など、色んな選択肢を用意して、本読みをさせてもらいました。でも、実際は自分が用意してきたものとは全然違っていて(笑)。

撮影がスタートしてからは、監督が言葉よりも、監督自身が表情や呼吸などを含めて実際に秀一の役を演じて見せてくれるんです。それを参考にして僕が演じたものに対して、アドバイスをくださって。調整する時は、監督が隣に来て肩に手を置いて、もっとこれはこうで、こうして……とアドバイスをくださいました。「ゆっくり間をとってもいいから」と優しく言ってくださって、僕自身に肩に力が入っていたとしても、すっと抜けて、必要な緊張感は残っていても、監督が場の雰囲気から作ってくださって、それがうれしかったです。最初は、台詞ひとつとっても物まねでもいいし、それを何回も何回も繰り返し言うことで、自分の中に落ちていって、自然に言葉になって言えるようになるから。その状態になるまで続けていいから、と言われました。それは、監督自身が普段からお芝居をされる方だからこそ、そんな風に演出をしてくれるのではないかと思うし、それが、監督の手法なのかもしれないですね。

この作品を通して役者として成長した点

今回の作品を通して、俳優・中山麻聖として成長した点を僕自身は理解できていないけど、監督はよく分かってくれているのでは? と思っています。映画の完成披露試写会後に、演じてみてどうだったって聞かれて、思わず素直にうれしくて「ありがとうございます!」と答えたんです。すると監督は「グッドでしょう! 胸張っていいよって」そう言ってくださって。短い言葉だったけど、僕自身、自分の中で色んな葛藤を抱えながらの撮影だったので、監督のその言葉で救われたし、うれしかったですね。

今回の作品で、水谷監督と出会えたことで、僕自身、役者としてもう一段階、二段階、深い場所に連れていってもらったような気がします。それは自分の価値観に捉われないこともありますが、今回監督に教わったこと一つ一つが役者としても、人としも重要な事になっていると改めて気が付かせてくれました。

 

この映画見て欲しい、感じて欲しい場面

今回の作品はサスペンスだけど、一人一人の人の心の奥底が繊細に描かれていて、加害者や被害者、その遺族など、一人一人の視点によって、観方によって印象が大きく変わる点があります。どの視点で見るのか、複数の視点で見ることで、この作品の魅力がより多く伝わってくるのではないでしょうか。

例えば、僕ら世代で言えば主人公の秀一や輝にすぐに感情移入できると思うし、家族が居れば時山家の気持ちが分かるだろうし。一回目観る時は、自分に一番近い人に感情移入して見ることができるだろうし、それだけじゃない、違う視点で見ることで、また色々な印象になると思います。

僕は、自分が演じた秀一目線で考えたけど、色んな角度で見てほしいなと思います。それだけ中身も濃い作品になっています。

【Profile】
中山麻聖(なかやま・ませい)
1988年12月25日、東京都生まれ。2004年に映画『機関車先生』でデビュー。2012年に主演映画『アノソラノアオ』が公開され、2014年には『牙狼<GARO>-魔戒の花』(TX)でTVドラマでも主演を務める。

 

取材・文/新庄谷隆
撮影/中野章子

映画「轢き逃げ」

<STORY>
ある地方都市で起きた交通事故。一人の女性が命を落とし、轢き逃げ事件へと変わる。
車を運転していた青年・宗方秀一、助手席に乗っていた親友・森田輝。二人は秀一の結婚式の打合せに急いでいた。婚約者は大手ゼネコン副社長の娘・白河早苗。悲しみにくれる被害者の両親、時山光央と千鶴子。その事件を担当するベテラン刑事・柳公三郎と新米刑事・前田俊。平穏な日常から否応なく事件に巻き込まれ、それぞれの人生が複雑に絡み合い、抱える心情が浮き彫りになっていく。
彼らの心の奥底に何があったのか?何が生まれたのか?
その悲劇の先に、彼らは何を見つけられるのか?

<キャスト>
中山麻聖 石田法嗣 小林涼子 毎熊克哉
水谷 豊 檀 ふみ 岸部一徳

監督・脚本 水谷 豊  音楽 佐藤 準
配給 東映

映画「轢き逃げ」公式HPはこちら。

 

 


新庄谷 隆
カープ/グルメ

PROFILE
新庄谷 隆[エディター&ライター]

竹原市出身、広島市在住。大学在学中からタウン情報誌でアルバイト。そのまま就職し、2006年に独立。企業家から、旅行関係、スポーツ、音楽など幅広いジャンルの人々へのインタビューをこなす。音楽と広島カープ、そして広島をこよなく愛する自称「書き物家」。

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