いま、最も聴いてほしいアルバム CRAZY VODKA TONIC『書を灯す』
- インタビュー
- クレイジーウォッカトニック
- 音楽

初めてCRAZY VODKA TONICのステージを見たときの衝撃が忘れられない。
結成時から拠点にしてきた「福山Cable」でのライブ。
会場を埋め尽くす超満員の観客を前にして見せた圧倒的なパフォーマンスは、揺るぎない自信に溢れていた。
ファンとのつながりを何よりも大切にし、地元・広島県福山市での活動にこだわり続けてきた4人が2018年3月14日、初の全国流通盤ミニアルバム『書を灯す』をリリースした。
1年をかけて書き下ろした新曲4曲に、ライブ会場限定盤からの代表曲『盲目のピアニスト』や再アレンジ・レコーディングした2曲を加えた全7曲を収録。
1曲目の『涙の走馬灯』からラストの『羨望の春を解く』まで、どこを切り取っても、いまのCRAZY VODKA TONICの“最高”が詰まった1枚だ。
ここから彼らがどこまで駆け上がっていくのか、楽しみで仕方がない。
新作の『書を灯す』、CRAZY VODKA TONICの集大成ともいえるアルバムですね。
池上:ずっと初の全国流通に向けて動いてきましたし、スタート地点のはずなのですが、僕たちにとっては1つの節目としてのゴールのような感覚もあります。少し不安もあったけど、しっかり準備した状態で発売を迎えることができました。このアルバムを出すにあたって大事にしたのは、今までの経験や培ってきた思いを出し切ること。試行錯誤を重ねて、集大成と自信を持って言える作品になったと思います。
ーー初めてライブを見たときにMCで話していた「ただ好きで音楽をやるなら家でやっていればいい。見に来てくれた人の背中を押せるような、自分たちのすべてを懸けた音楽がやりたい」という言葉が印象に残っています。
池上:目指すんだったら、世界クラスのバンドになりたいです。誰も辿り着いたことがない、前人未踏を成し遂げたい。でかすぎる夢かもしれないけど、バンドとしてやっていく以上はナンバーワンになりたいという思いでやっています。
バンドの根底にあるテーマ、曲作りで大事にしている世界観は?
池上:イントロが始まった瞬間に、自分たちが思い描いているイメージと、聴いている人たちの経験が重なって、その人なりの情景が浮かぶような曲を作りたいと思っています。
奥本:これまで、バンドとして曲の解説をしたことがないんです。解説してしまうと、固定したイメージができて、それぞれの情景を思い浮かべられなくなってしまう気がして。その人が聴いて感じたことがすべてだと思っているので、1曲ずつセルフライナーを書くということもしていません。
ーー曲を作り上げていく過程で思い描くイメージは、メンバーそれぞれにあると思います。それをまとめて、バンドとして、どうやって完成に近づけていくのですか。
奥本:曲を作った本人が思い描いているものに、メンバーの個性をどれだけプラスしていけるかがバンドの良さだと思っています。優人の中から出なかったものを一緒に考えて作り上げていくのが、このバンドのやり方に合っているというか。徹夜で試行錯誤してやっと曲が完成したと思ったら、次の日に優人が「変えたよ」と言って全部リセットされていることもよくあって、ガクッときますけどね。「あれ、昨日夜中までやったやつが全部なくなってる」みたいな。
池上:確かにある(笑)。メンバーの優しさに甘えている部分はあるかもしれないですね。僕自身は、奥本のギターと進のベース、坂本のドラム、それぞれのメンバーが出す音や聴いてきた音楽にすごく影響されています。言い訳じゃなく……、メンバー全員の音楽性がミックスされて新しいものができるのが、このバンドの良さだと最近は特に感じています。
メンバー同士、それぞれのことをどう思っている?
奥本:基本、みんなアホですね。アホだっていう、それだけでいい。特にベースの進。それは、出会ったときからずっとそう思っています。
池上:1個先輩なんですけどね。
ーーちゃんと先輩として扱われてます?(笑)
進:まったく。高校のときから自分が先輩だっていう感覚は全然ないですね。優人は、年下だけどお母さんみたいな存在。厳しく言うことは言うけど、面倒見が半端なくいい。後輩のバンドの面倒もよく見ているし。
奥本:面倒見が良いのと、あまり感情を表に出さないタイプですね。決して全部は出さない。酒も飲まないので、飲んだ勢いで話すとかもないし。言わずとも分かるだろうみたいな。
ーードラムの坂本さんは唯一、途中加入ですよね。新メンバーとして入ってきて、すぐにバンドに馴染めましたか?
坂本:3人とは同じ高校で、私は別のバンドをやっていて、お互いのことはよく知っているつもりでした。ライブもよく見に行っていたし、かっこいいなと思っていたので。でも、実際にバンドに入ってみたら、音楽のスタイルも全然違っていて、やっぱり戸惑いはありました。
奥本:入って2ヵ月くらいで、やめたいって言ってたよな。
ーーそれはなぜ?
坂本:練習のやり方とか、曲の作り方とか、自分がそれまでやってきたことと全然違う部分が多くて。それについていけなかったというのが大きかったのかもしれないです。
ーーどういう部分が違っていたんですか?
坂本:厳しさですね。いろいろな音楽をやってきて、自分なりに自信もあって。それをそのまま出せばいいわけではないと納得するまで、結構時間がかかりました。このバンドに合った音を作っていくことが大事なんだって。入った当時から、いろんな面で変わったと思います。
進:岩のように頑固だったからね。全然できてないのに、「私できてます!」みたいな。
池上:まず、その岩をたたき崩すところから。でも、ちょっと言ったら「もうやめたい」って。やばい、もうちょっと慎重に扱わなきゃみたいな(笑)。
ーーそういうことをメンバー間でちゃんと話して、お互いに納得してきたから続いてこられたんでしょうね。
坂本:それまで周りにそんなふうに言ってくれる人はいなかったから。今はすごく恵まれた環境にいるなと思っています。
池上:メンバー同士、お互いのことを尊敬している部分があるから、バンドとしてやれているのだと思います。無謀なことだと思うんです、普通に考えたら。広島の福山という街で出会って、音楽に命を懸けてやれているっていうのがすごいことだなって。その上で、同じ方向に進んでいけるメンバーがいるということが、何よりもありがたいと思っています。
ーーこういう出会いってありえないことですよね。奇跡という言葉がいいのか分からないけど、バラバラの個性が集まって、バンドを組んでひとつの音楽をやっている。初の全国流通盤アルバムを経て、これからさらに進化していくCRAZY VODKA TONICを見られるのが楽しみです。最後に、ファンに向けてメッセージを。
奥本:そのまま、信じて聴いてもらえたら。突然どこかに行ってしまうこともないし、一気に2段3段と飛び越えていくようなバンドでもないと自覚しているので。
池上:そうですね。まず目の前にいる人を大切にしたい、という根底にあるものは何も変わらないです。みんなの応援と支えがあっての全国流通盤だと思っているので。ぜひ手にとって聴いてほしいです。そしてこれからも、一歩ずつ進んでいきたいと思っています。
インタビュー&テキスト=山根崇史
撮影=橋本高伸
『書を灯す』収録曲 最新MUSIC VIDEO
『涙の走馬灯』
2018.3.14 Release
初の全国流通盤mini ALBUM『書を灯す』
CRAZY VODKA TONIC
▼LIVE情報
『書を灯す』リリースツアー
4月1日(日)
福山 Cable ※ワンマン公演
http://cable.a.la9.jp/
4月15日(日)
渋谷 TSUTAYA O-Crest
http://shibuya-o.com/crest/
[act with]/ the quiet room / アンテナ
4月18日(水)
横浜 BAYSIS
http://www.yokohamabaysis.com/
[act with]/ PINCH COX / 256 / UN CHICK SHOW / and more…
4月19日(木)
仙台 enn 2nd
http://livehouseenn.com/
[act with]/ アンテナ / HOWL BE QUIET
5月13日(日)
岡山 CRAZY MAMA 2nd Room
http://banquetunion.com/mama2nd/
[act with]/ WOMCADOLE
5月18日(金)
福岡 Queblick
http://www.queblick.com/
[act with]/ and more…
5月19日(土)
米子 AZTiC laughs
http://aztic.net/laughs/
[act with]/ドラマストア / and more…
6月10日(日)
高松 DIME
http://www.dime-dime.com/index-pc.html
[act with]/ドラマストア / and more…
6月15日(金)
名古屋 APOLLO BASE
http://apollo.sflag.co.jp/
[act with]/ユアネス / and more…
6月17日(日)
大阪 LIVE SQUARE 2nd LINE
http://www.arm-live.com/2nd/
[act with]/ and more…
6月29日(金)
新潟 RIVERST
http://clubriverst.org/PC/
[act with]/ドラマストア / 神はサイコロを降らない /and more…
6月30日(土)
郡山 PEAK ACTION
https://peakaction.jimdo.com/
[act with]/ドラマストア / 神はサイコロを降らない / and more…
7月1日(日)
宇都宮 HELLO DOLLY
http://www.hellodolly1999.com/
[act with]/ドラマストア / 神はサイコロを降らない / and more…
7月8日(日)
広島 セカンドクラッチ
http://secondscene.com/sc/
[act with]/ドラマストア / and more…

FLAG! vol.11 Next Generations 広島東洋カープ
2018年プロ野球シーズン開幕! FLAG! は、広島東洋カープの次世代を担うU25 若手選手に着目! 不動のレギュラー陣の牙城を、虎視眈々と狙う若い力を紹介。巻頭グラビアでは、2018年注目の若手選手を、新進気鋭の女性カメラマンが撮り下ろした中村奨成・高橋昂也・坂倉将吾・藤井皓哉・桒原 樹・美間優槻を掲載。ほか今回FLAG! だけのために作成した、広島東洋カープU25選手のトレーディングカードが付きのレアな一冊が完成!
amazonで購入する

山根崇史[ロック好き]
広告制作会社や玩具メーカーで販促企画、コピーライターを経験後、編集者に。商品宣伝、企業PR、人物取材などのジャンルを問わず、書籍、WEB、パンフレット制作を手掛ける。
山根崇史の記事一覧関連記事
-
エンタメ
【1月15日から広島で再上映】映画『おかあさんの被爆ピアノ』が「戦争を知らない世代」に伝えたいこと
1945年8月6日8時15分、広島に投下された原爆から、奇跡的に焼け残った被爆ピアノと、被爆2世であるピアノの調律師・矢川光則(やがわ・みつのり)さんをモデルに……
2021.01.12
-
エンタメ
【1月2日~横川シネマで再上映決定!】ドラマ『鯉のはなシアター』 広島カープの昔のユニークなエピソードと現代劇が織りなす感動の小説を再び映像で!
華々しい選手たちの活躍の陰に、先人たちが築き上げてきた「広島東洋カープ」の秘話を『鯉のはなシアター』(広島ホームテレビ)では毎週、深夜に紹介している。(現在、『……
2020.12.31
-
エンタメ
【年末年始に改めて読みたい!】不均衡で不確実な世の中を乗り越えるために ウルグアイ元大統領のホセ・ムヒカの言葉
めまぐるしく変わる現代。 さらに、2020年は誰しもが予想しえなかったパンデミックも。 先の見えない世の中で、わたしたちって一体何を信じればいいのだろう。 ……
2020.12.26
-
エンタメ
ドラマ『鯉のはなシアター』再上映 広島カープの昔のユニークなエピソードと現代劇が織りなす感動の小説を再び映像で!
華々しい選手たちの活躍の陰にある先人たちが築き上げてきた「広島東洋カープ」の秘話を、『鯉のはなシアター』(広島ホームテレビ)では毎週、深夜に紹介している。 ……
2020.12.24